日本全国の獅子舞
宮崎の猪生ける山奥で、非常に貴重な神楽が伝承されているという。宮崎県で最も早く国指定の重要無形民俗文化財に指定された「銀鏡(しろみ)神楽」である。この神楽に登場する獅子舞の写真をネットで見かけて、ハッとした。これは縄文につながるほどの歴史…
静岡県島田市川根町抜里。大井川中流域に位置しており、抜里駅周辺に広がる密集地だ。国道473号線がこの地域を縫うように貫き、東に大井川、西に山並みが広がる。その土地の大部分は田畑から茶畑へと転換しており、お茶に霜がかかることを防ぐための「防霜(…
2023年9月29日(金)~10月2日(月)まで、沖縄の獅子舞を取材した。沖縄では旧暦8月15日に十五夜祭というお祭りが行われる。本来であれば十五夜は29日なのだが、今年は金曜日なので土日でずらして開催する地域も多く、これは3日連続で滞在するしかないという…
日本全国に獅子舞を伝え、その伝播の中心を担った伊勢大神楽。この芸能が各地の獅子舞の起源として語られることは非常に多く、その影響は計り知れない。2022年12月24日、三重県桑名市の増田神社で行われた伊勢太神楽の総舞を拝見してきた。それとともに、桑…
新型コロナウイルス、人口減少、高齢化、担い手不足、娯楽の多様化、、様々な問題が、民俗芸能の衰退を促している。その中で、東京ドキュメンタリー映画祭で上演された伊勢大神楽の記録「それでも獅子は旅を続ける」は、400年変わらず受け継がれている芸能の…
日本全国を見渡せば、獅子舞が盛んな都道府県として、石川、富山、香川の3県が挙げられることが多い。ただ、そのなかで唯一取材が手薄だったのが香川県だ。関東圏からアクセスしようとすると、土日の飛行機代、あるいは新幹線代が高く、バスでも1万円かかる…
岐阜県岐南町で行われた「岐南地芝居公演」に伺ってきた。岐阜県といえば、地芝居や獅子芝居といったいわゆる魅せる演劇的な芝居ものが発達した地域である。その歴史や背景、現状の伝統継承の姿など多角的に迫っていきたい。 2022年9月「岐南地芝居公演」に…
北陸地方の加賀獅子や岐阜県の金蔵獅子などに見られる獅子殺しの起源はいつであろうか?加賀獅子の起源は前田利家公が江戸時代に金沢城に入城した時に始まるという。これが軍事費を莫大にかけると反乱と勘違いされがちな外様大名ならではの文化面での武芸鍛…
獅子頭も胴体もない獅子舞が存在するという。そんなことを聞きつけて、長野県松本市から車で1時間、上高地にも程近い秘境・奈川寄合渡に行ってきた。この地域には「奈川獅子舞」と言って、通常の獅子頭と胴体を身にまとう獅子がある一方で、それらを持たず扇…
8月27日、石川県加賀市動橋町のぐず焼きまつりを訪れた。巨大な怪物のような姿をした「化けグズ」を焼き払うお祭りであり、その迫力は圧巻だった。このモチーフはワニなのか?蛇なのか?様々に想像を掻き立てるこのユニークなまつりの実態に迫る。 ぐず焼き…
愛媛県今治市には「継ぎ獅子」という珍しい獅子舞がある。肩の上に人が上り、上へ上へと伸びていき、ものすごく背の高い獅子が生まれるのだ。 てっぺんにいる子どもは獅子であるにも関わらず、獅子頭を被っていない。新潟県の角兵衛獅子のような子供の曲芸と…
2022年7月24日18時から茨城県龍ケ崎市でつく舞を見てきた。つく舞とは何か?を参考文献を参照して述べたのち、当日の様子を振り返る。 つく舞の由来 柳田國男によれば、つく舞の「ツク」とは柱のことで、澪標(みおつくし)の「ツク」と同義であるとする。澪…
2022年7月15日~17日の日程で石川県加賀市に滞在し、獅子舞のヒアリングを実施した。 7月15日 16:15~17:00 中代町 区長の東出ひであきさんに主にお話を伺った。以前、区長の西出さんにお話を伺った時のことを絡めながら記録を残しておく。 由来 獅子舞がどこ…
2022年7月10日13時に訪れたのが、厳正寺(ごんしょうじ)の水止舞だ。水止と書いてシシと読む。とても珍しい獅子舞だ。形態としては明らかに三匹獅子舞なのだが、これが龍と一対なのがまた面白い。なぜ龍と獅子舞が対になるかというと、多摩川デルタ沿いの水…
2022年7月10日、11時より上野駅の岩手産直市で鹿踊を見てきた。なかなか東京で鹿踊を見ることはないので、この新鮮な感覚を書き残しておくことにする。今回、上野駅でお披露目された鹿踊は、「春日流八幡鹿踊」という名前らしい。岩手県花巻市から来たそうだ…
2022年7月3日、埼玉県三郷市戸ヶ崎の香取神社(例大祭)で三匹獅子舞を見てきた。戸ヶ崎といえば獅子舞が盛んな地域で、一日中ぶっ通しで朝から晩まで3日間、獅子舞をする。なぜこんなに盛んなの?という疑問とともに、最終日の様子を振り返っていきたい。 …
新潟県月潟の「角兵衛獅子」の歴史は非常に興味深い。貧困や恨みといった辛さをバネにして、最強の芸能集団を作り上げ天下を取った。しかし、時代の趨勢により芸能の技術指導が体罰と認識されるようになり完全に衰退してしまった。今では「保存会」によって…
2022年6月25日、新潟県の佐渡島に行ってきた。なぜ日本海の孤島に民俗芸能は次々と集積され、芸能における日本の縮図とまでに言われるようになったのか?その理由について調べるとともに、鬼と獅子舞が融合した佐渡の民俗芸能の顔・鬼太鼓の真相に迫る。 佐…
酒田市は獅子舞の街だ。酒田まつりでは大獅子が練り歩き、神輿には行道の獅子がつき、ステージパフォーマンスでも獅子舞が登場する。何かと獅子舞が出現しがちなこの街において、獅子舞は街の特質とどのように結びついているのだろうか?そのようなことをふ…
東京・東中野ポレポレで、2022年4月30日より、「チロンヌプカムイ イオマンテ」という映画の放映が始まり拝見してきた。北海道の大地で受け継がれてきた、イオマンテという幻の儀礼の映像が35年の時を経て公開されたのだ。これよりネタバレを含むので、興味…
5月3日に長野駅前から善光寺参道にかけて開催された、ながの獅子舞フェスティバル。長野市を中心に34の獅子舞団体が一堂に会した。スタッフの方にこのイベントの狙いについてお話を伺うことができた。今年で第6回目。 ー開催の目的はなんでしょうか? 伝統芸…
獅子舞の蚊帳を作る職人は祭りをどのように捉えているのだろうか?石川県は能登キリコ、金沢の百万石祭りなど、祭り文化が盛んな土地である。これを下支えしてきたのは、江戸時代に加賀前田藩が奨励してきた工芸品文化と経済的な豊かさだ。 今回は工芸品の文…
箱根仙石原に伝わる湯立獅子舞は、日本全国でも珍しい湯立の形式を持つ獅子舞だ。先日、国選択無形民俗文化財にも指定された。この神事の珍しさに着目しながら、先日取材させていただいたときの様子を振り返りたい。 湯立獅子舞の由来 箱根仙石原諏訪神社境…
7年に1度というのは諏訪大社の例大祭との関わりがある。その希少性から祭りの盛り上がりは半端なく、コロナ禍であるにも関わらず、大勢の来客が見られた。基本的には目玉となるのが、獅子舞の練り歩きと門付けである。 実際に現地で獅子舞を見てきた。その様…
飯田周辺にはなぜか「獅子塚」と名のつく古墳が多い。今回は伊那八幡駅から下車して、水佐代獅子塚古墳、羽場獅子塚古墳、御射山獅子塚古墳の3箇所を巡ってみた。これらは典型的な豪族のお墓のような気もするのだが、なぜ、「獅子塚」なのだろうか。日本全国…
福島県会津若松市で行われる春を祝う獅子舞である「彼岸獅子」なるものを拝見してきた。 春のお彼岸と言えば先祖供養の意味があり、雪解けと生命の息吹、喜びを感じる季節であることは確かだ。 ただ、なぜこのお彼岸の七日間を中心として、この地域に獅子舞…
氷見市はカンブリに代表される漁業、美味しいお米が食べられる場所などとして発展してきた。なぜこの地が日本全国でも有数の獅子舞の数を誇るようになったのか?その地域的な背景に迫って行きたい。そのような思いもあって、ひみ獅子舞ミュージアムに行って…
富山県射水市の三ヶ獅子舞では、獅子舞の講座を開催されているという。なぜ獅子舞の練習に加えて獅子舞講座なるものが必要だったのか?開催することで地域にとってどのような良い事があるのか?三ヶ獅子舞保存会の宮川さんと宮司の宮城さんにお話を伺った。 …
◎日本における行道獅子の始まり 612年に百済の味摩之が伝えた伎楽が、無言で滑稽味を帯びた仮面劇として持ち込まれ、その一部に師子児が先導する形で、行道の獅子というものが存在していた。東大寺大仏殿の開眼式などで披露され、地方の大寺院にも伝えられた…
2022年2月25~26日の日程で北海道の浦幌町と帯広市に滞在した。開拓民がどのような新しい文化をこれらの土地にもたらし、その土地に古くから根付いていたアイヌ文化とはどのような摩擦がおこったのかについて知りたくなった。これらについて考えることは、北…