2022-01-01から1年間の記事一覧

日本全国の獅子舞のルーツの1つ、伊勢大神楽の起源とその集団の特異性を考える

日本全国に獅子舞を伝え、その伝播の中心を担った伊勢大神楽。この芸能が各地の獅子舞の起源として語られることは非常に多く、その影響は計り知れない。2022年12月24日、三重県桑名市の増田神社で行われた伊勢太神楽の総舞を拝見してきた。それとともに、桑…

【2022年12月】石川県加賀市 獅子舞取材 大聖寺下福田町犬澤(追加)

石川県加賀市にて、本作りのための獅子舞に関する追加ヒアリングを実施した。今回の対象地域は大聖寺下福田町犬澤(いんのさわ)である。 12月22日 16:30~ まずは宮地弘晃さん(71)に農作業途中、納屋にて時間をいただきお話を伺った。 獅子舞の歴史 獅子舞…

現代における獅子舞の住処

獅子舞をはじめ、麒麟や龍、鳳凰、亀など想像上の生き物の住処がなくなってきている。これはどのような事態として捉えるべきなのか。 これらの生き物は全て家畜化されていない動物をモチーフとしていることは重要なポイントだ。最も主要なモチーフを取り上げ…

獅子舞界のドン・キホーテ、伊勢大神楽の暮らしの実態、民俗芸能研究の可能性について。

新型コロナウイルス、人口減少、高齢化、担い手不足、娯楽の多様化、、様々な問題が、民俗芸能の衰退を促している。その中で、東京ドキュメンタリー映画祭で上演された伊勢大神楽の記録「それでも獅子は旅を続ける」は、400年変わらず受け継がれている芸能の…

雨が降らねば切腹する壮絶さ、なぜ獅子頭は苔で作られた?雨乞いの真相に迫る

獅子頭はなぜ、苔で作られたのか? その一風変わった獅子頭が最近、千葉県千葉市の聖宝寺で発見された。明治時代に雨乞いで使われた獅子頭とのこと。 レトロで美しい旧生浜町役場庁舎を管理するNPO法人ちば・生浜歴史調査会の15周年を記念して行われた「椎名…

モグラ女に樺太からきた部族...カオスで不気味な見世物小屋から考える旅芸人の生き方

これは久しぶりにすごいものを見た。いや、見てしまったという方が正しいだろう。 2022年11月16日、新宿の花園神社で行われている酉の市を訪れた。そこで鳥居の真横に設置された見世物小屋のプリミティブな雰囲気に惹かれた。入り口のお姉さんの調子の良い掛…

香川県の獅子舞が大集合!獅子舞王国さぬきを取材して考えたこと

日本全国を見渡せば、獅子舞が盛んな都道府県として、石川、富山、香川の3県が挙げられることが多い。ただ、そのなかで唯一取材が手薄だったのが香川県だ。関東圏からアクセスしようとすると、土日の飛行機代、あるいは新幹線代が高く、バスでも1万円かかる…

獅子芝居とは何か?岐阜県岐南町にて、女性になりきる歌舞伎の獅子の成立背景に迫る

岐阜県岐南町で行われた「岐南地芝居公演」に伺ってきた。岐阜県といえば、地芝居や獅子芝居といったいわゆる魅せる演劇的な芝居ものが発達した地域である。その歴史や背景、現状の伝統継承の姿など多角的に迫っていきたい。 2022年9月「岐南地芝居公演」に…

獅子殺しの起源はいつか?

北陸地方の加賀獅子や岐阜県の金蔵獅子などに見られる獅子殺しの起源はいつであろうか?加賀獅子の起源は前田利家公が江戸時代に金沢城に入城した時に始まるという。これが軍事費を莫大にかけると反乱と勘違いされがちな外様大名ならではの文化面での武芸鍛…

なぜ獅子頭を被らないのに獅子舞なのか?扇子の動きに注目! 長野県奈川獅子舞に行ってきた

獅子頭も胴体もない獅子舞が存在するという。そんなことを聞きつけて、長野県松本市から車で1時間、上高地にも程近い秘境・奈川寄合渡に行ってきた。この地域には「奈川獅子舞」と言って、通常の獅子頭と胴体を身にまとう獅子がある一方で、それらを持たず扇…

巨大な魚を燃やす!?ぐず焼きまつりの秘密に迫る

8月27日、石川県加賀市動橋町のぐず焼きまつりを訪れた。巨大な怪物のような姿をした「化けグズ」を焼き払うお祭りであり、その迫力は圧巻だった。このモチーフはワニなのか?蛇なのか?様々に想像を掻き立てるこのユニークなまつりの実態に迫る。 ぐず焼き…

まさに魅せる獅子舞!今治市にて、アクロバティックな「継ぎ獅子」を見てきた

愛媛県今治市には「継ぎ獅子」という珍しい獅子舞がある。肩の上に人が上り、上へ上へと伸びていき、ものすごく背の高い獅子が生まれるのだ。 てっぺんにいる子どもは獅子であるにも関わらず、獅子頭を被っていない。新潟県の角兵衛獅子のような子供の曲芸と…

舞わず、頭を噛まない獅子!?福岡市紅葉八幡宮で「祓い獅子」を見てきた

福岡県には、珍しい獅子舞があると聞いていた。獅子舞なのに舞わず、ただ持っているだけという。神輿渡御行列の獅子舞ならよく知っているが、門付け型の獅子舞なのに舞わないのはとても珍しい。いつも東日本の獅子舞ばかり見てきたので、九州の獅子舞も見て…

つく舞とは何か?カエルが柱をよじ登る意味とは?その秘密に迫る

2022年7月24日18時から茨城県龍ケ崎市でつく舞を見てきた。つく舞とは何か?を参考文献を参照して述べたのち、当日の様子を振り返る。 つく舞の由来 柳田國男によれば、つく舞の「ツク」とは柱のことで、澪標(みおつくし)の「ツク」と同義であるとする。澪…

【2022年7月】石川県加賀市 獅子舞取材 中代町・新保町(追加)

2022年7月15日~17日の日程で石川県加賀市に滞在し、獅子舞のヒアリングを実施した。 7月15日 16:15~17:00 中代町 区長の東出ひであきさんに主にお話を伺った。以前、区長の西出さんにお話を伺った時のことを絡めながら記録を残しておく。 由来 獅子舞がどこ…

天候をコントロールしたという欲望、その先に「水止舞」は生まれた

2022年7月10日13時に訪れたのが、厳正寺(ごんしょうじ)の水止舞だ。水止と書いてシシと読む。とても珍しい獅子舞だ。形態としては明らかに三匹獅子舞なのだが、これが龍と一対なのがまた面白い。なぜ龍と獅子舞が対になるかというと、多摩川デルタ沿いの水…

東京に鹿踊がやってきた

2022年7月10日、11時より上野駅の岩手産直市で鹿踊を見てきた。なかなか東京で鹿踊を見ることはないので、この新鮮な感覚を書き残しておくことにする。今回、上野駅でお披露目された鹿踊は、「春日流八幡鹿踊」という名前らしい。岩手県花巻市から来たそうだ…

水害リスクを減らした獅子とは!?埼玉県三郷市・戸ヶ崎香取神社の獅子舞を見てきた

2022年7月3日、埼玉県三郷市戸ヶ崎の香取神社(例大祭)で三匹獅子舞を見てきた。戸ヶ崎といえば獅子舞が盛んな地域で、一日中ぶっ通しで朝から晩まで3日間、獅子舞をする。なぜこんなに盛んなの?という疑問とともに、最終日の様子を振り返っていきたい。 …

角兵衛獅子はなぜ全国に流行したの?新潟県月潟という小さな村から始まった!涙と苦労の物語

新潟県月潟の「角兵衛獅子」の歴史は非常に興味深い。貧困や恨みといった辛さをバネにして、最強の芸能集団を作り上げ天下を取った。しかし、時代の趨勢により芸能の技術指導が体罰と認識されるようになり完全に衰退してしまった。今では「保存会」によって…

佐渡島はなぜ「日本の芸能の縮図」なのか?獅子舞と鬼が融合した鬼太鼓を見てきた

2022年6月25日、新潟県の佐渡島に行ってきた。なぜ日本海の孤島に民俗芸能は次々と集積され、芸能における日本の縮図とまでに言われるようになったのか?その理由について調べるとともに、鬼と獅子舞が融合した佐渡の民俗芸能の顔・鬼太鼓の真相に迫る。 佐…

野宿をしたくなる場所は存在すると思う

野宿なんてやりたくない!という人が大半だろう。しかし、人間を野宿へと誘引する場所がこの世には存在すると思う。そんなことを考えながら、このブログを書くことにした。 まずは自らを野宿へと向かわせる動機について。大学生のときは、節約したいという思…

凧がケンカする理由とは?世界凧博物館で考えた、獅子舞との共通点「村境でぶつかり合う」真意

先日、滋賀県東近江市の「世界凧博物館 東近江大凧会館」を訪れた。世界の凧、約600点が展示され、その様は圧巻であった。展示で特に気になったのが、ケンカ凧の存在である。これは村境で衝突する獅子舞の話と通じるものがあると直感し、意外な気づきをもた…

素朴な獅子の昔の姿とは?秋田県五城目町の獅子頭の謎について

先日、秋田県五城目町の神明社で、3つの獅子頭を見せていただいた。総じて、五城目の獅子舞にはなぜ耳がないのか?という疑問が湧いてきた。僕の推測としては、耳が取られたか、耳取り合戦を避けるために獅子の耳を取り付けなかったかの2択だと思う。さて、…

酒田市はなぜ獅子の町になったのか?疫病が発生しやすかった構造とは

酒田市は獅子舞の街だ。酒田まつりでは大獅子が練り歩き、神輿には行道の獅子がつき、ステージパフォーマンスでも獅子舞が登場する。何かと獅子舞が出現しがちなこの街において、獅子舞は街の特質とどのように結びついているのだろうか?そのようなことをふ…

獅子舞の爆発的ヒットの背景とは?富山県・新湊の春祭りを訪れ、歴史的展開から考える

富山県から獅子舞と地域の未来を考えたい。2022年5月14日、富山県射水市の新湊を訪れた。新湊の春季祭礼を見に行ったのと、高岡市を拠点に獅子舞文化を盛り上げるwebサイト「獅子魂」の発起人の方にお話を伺った。富山県は獅子舞が盛んなので、包括的に地域…

大事な飼いキツネを神の国に送る「イオマンテ」の真意とは? 35年前の貴重映像とともに考えた

東京・東中野ポレポレで、2022年4月30日より、「チロンヌプカムイ イオマンテ」という映画の放映が始まり拝見してきた。北海道の大地で受け継がれてきた、イオマンテという幻の儀礼の映像が35年の時を経て公開されたのだ。これよりネタバレを含むので、興味…

獅子舞が大集合!ながの獅子舞フェスティバルが持つ機能とは?

5月3日に長野駅前から善光寺参道にかけて開催された、ながの獅子舞フェスティバル。長野市を中心に34の獅子舞団体が一堂に会した。スタッフの方にこのイベントの狙いについてお話を伺うことができた。今年で第6回目。 ー開催の目的はなんでしょうか? 伝統芸…

7年目ごとに開催!御柱祭の様子は?コロナ後の祭りについて考える

7年目ごとに行われる長野県諏訪地方の御柱祭に行ってきた。1200年以上の歴史の中で、史上初めて御柱が人力ではなくトレーラーで運搬されるなど、新型コロナウイルスの影響での異例の開催となった。この歴史的な年に、御柱祭について振り返っておきたい。 諏…

職人から見た祭りの姿とは?工芸品が盛んな石川県金沢市に行ってきた

獅子舞の蚊帳を作る職人は祭りをどのように捉えているのだろうか?石川県は能登キリコ、金沢の百万石祭りなど、祭り文化が盛んな土地である。これを下支えしてきたのは、江戸時代に加賀前田藩が奨励してきた工芸品文化と経済的な豊かさだ。 今回は工芸品の文…

【2022年4月】石川県加賀市 獅子舞取材 大聖寺錦町・塩屋町(追加)

2022年4月5~6日の日程で加賀市に滞在した。獅子舞取材を振り返る。 4月5日11:00~ 大聖寺錦町 荒木実さんにお話を伺った。錦町(にしきまち)の獅子舞は、昭和3年の御大典記念の時に即位の祝賀ムードの中、国、県、町などの予算が下りて始められた。これは明…