獅子舞が大集合!ながの獅子舞フェスティバルが持つ機能とは?

5月3日に長野駅前から善光寺参道にかけて開催された、ながの獅子舞フェスティバル。長野市を中心に34の獅子舞団体が一堂に会した。スタッフの方にこのイベントの狙いについてお話を伺うことができた。今年で第6回目。

ー開催の目的はなんでしょうか?

伝統芸能の継承と、地域の宝を次の世代に残すという目的があります。長野市では平成30年に伝統芸能推進室という部署ができました。それ以前にも伝統芸能を推進していこうという機運があり、後継者不足で活動ができない団体が出てきているので、このままでは大切な地域の資源が失われてしまいます。これをなんとか食い止めたいと考えています。回復はできなくても、ずっと持続させていきたくて、なんとか子供に伝える機会を作りたいんです。

 

ー獅子舞の演舞だけではなくて、獅子頭づくりのワークショップもされていましたね。子供さんたちがたくさんきていました。それで赤色だけでなくて黄色やピンク色などの獅子頭を作っているのも印象的でした。

子供に楽しんでもらうには色々な色や形があっていいのだと思います。市の職員が獅子頭の作り方を教えています。作り方を考案したのはちょっと誰かわかりません。

 

ーコロナ禍での開催となりましたが、大変だったことはありましたか?

やはり出られない団体がありましたよね。直接団体の方で、コロナに感染した方がいるとか、子供の感染が怖いと判断された方などがいれば、なかなか出演は難しいです。お囃子をやるにもただ人数が揃えばいいだけでなく、太鼓、笛、鉦など役割があって誰かが欠けたらできなくなってしまいます。今回は34団体の出演となりましたが、2022年2月に申し込みを受け付けた段階では49団体のエントリーがありました。過去には81団体が出演された時もありました。

 

ーとても出演団体が多いのですね!長野市以外からも参加されているのでしょうか?

81団体が出演した時は長野市以外にも6団体ほど市外からの参加がありました。今回は松本市三才山からの参加団体が出演できなくなってしまいましたが、須坂市や高山村から参加してくれている団体があります。

 

ーなかなか市が主導して大規模な獅子舞イベントを開くというのはないことですよね。

ないかもしれないですね。このようなイベントを行うことによって我々と獅子舞団体とが繋がることができます。他の市区町村は各獅子舞団体と繋がっていないので、問い合わせがあった時に、団体を紹介するのが難しい場合も多いでしょう。僕らは少なくとも260団体とつながっています。イベントをする時には、「ながの獅子舞フェスティバルをやりますよ」という風に声をかけて回って、出演団体を募ることもできます。

 

ーながの獅子舞フェスティバル以外に獅子舞団体同士が繋がる機会はあるのですか?

長野市内で五分一流(こぶいちりゅう)という神楽囃子を継承している団体が18団体あります。今回のフェスティバルのトリを飾った善光寺平神楽囃子保存会はこの1つですが、それぞれの村や町で受け継がれてきた一方で、皆が一堂に会せば、「あれ、どれも演じることができるじゃん」という舞い方があります。そういう繋がりもあるので、出演のオファーがある時に声かけもしやすいです。あと善光寺平神楽囃子保存会は善光寺との繋がりがあり、何度か御開帳の期間中に境内で一斉演舞をしています。5月22日には善光寺平神楽囃子保存会の道中行列の予定もありますね。

ーそうなのですね!どんどん繋がっていきますね。今回はお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

 

今回、ながの獅子舞フェスティバルを訪れてみて、行政側のものすごい熱量が、地域の民俗芸能の継承の大きな原動力になっていることを実感した。

 

ps. 長野県長野市の獅子舞の歴史

長野県の獅子舞は長野県教育委員会『長野県の民俗芸能』(1995年)によれば、県内に550件もの分布が確認されている。このデータは消滅、復活の有無なしに伝承数を調べたものである。

また、小林幹男『信濃の獅子舞と神楽』(2006年8月10日, 信濃毎日新聞社)によれば、北信地方にはおよそ260件の獅子舞が伝わっており、獅子舞、獅子神楽、神楽獅子、神楽、大神楽、太神楽、大々神楽、五分一太神楽、イタコ獅子など呼び方は様々である。

冨建千引神社神楽保存会『-大神楽考-獅子舞の歴史を訪ねて-』(1983年9月15日, 信毎書籍印刷株式会社)によれば、信濃における獅子舞は概して、伊勢系の大神楽を基にした2人立ちの獅子神楽が多い。元々、太神楽は伊勢や江戸を起点として、関東甲信越や東北方面に各藩の庇護のもとで、武家屋敷やのちに領内全てをお祓いするようになったと考えられる。これは明治時代になって各藩の庇護がなくなっても、娯楽の少ない時代ゆえに積極的にこれらを受容し、また自ら身につけようとするものも少なくなかった。日本の民俗芸能の3分の1が獅子舞であると言われているが、この多くが大神楽系の影響を受けていることは言うまでもない。

長野県に取り込まれた大神楽系は3つの伝来パターンがあったと考えられる。1つ目が獅子宿に集まって装束を整え、各家々に出向いて悪魔祓いの神事舞をして回るものである。これは南佐久郡道祖神行事と結びついた獅子舞などで典型的に見られる。2つ目が秋祭りを中心に神社へのお練りを基本形として演じられる獅子舞だ。これは飯山市野沢温泉村などを中心として見られる。3つ目が獅子狂言や獅子芝居と言われるような余興芸が独立して行われるものだ。これは上松町須坂市、あるいは山梨県、愛知県などに分布している。