日本全国の獅子舞

20年に1度の歴史的大祭「御神木祭」長野県上松町

長野県上松町。木曽の山々に囲まれたこの地で、20年に1度のお祭り「御神木祭」を拝見した。2025年6月4日、ついに訪れることができた。長い年月に想いを馳せた。どうしようもないくらいに深い檜の森、ここから御神木が運ばれる。森から市街地へ、そして伊勢神…

神奈川県「蛇も蚊も祭り」から考える、邪を祓う手作り龍のこと

2025年6月1日、神奈川県横浜市鶴見区生麦の「蛇も蚊も祭り」を訪れた。そこに妙な名前と、藁蛇が練り歩くというから、どこか東京都大田区の水止祭や埼玉県鶴ヶ島の脚折雨乞などと似たような発想を感じる。何となくそのビジュアルと名前に惹かれて現地を訪れ…

鳥海山の神を降臨させる「チョウクライロ舞」秋田県にかほ市にて

2025年5月31日、秋田県にかほ市象潟町小滝の金峰神社土舞台で行われたチョウクライロ舞を訪れた。「長久生容」と書いてと書いてチョウクライロ舞だそうである。ぼくはこの舞いをインターネットで調べた時、どうしようもなく訪れたい気持ちでいっぱいになった…

富山県 六渡寺の獅子舞 「獅子舞王国」で最も有名な獅子舞とも言われる舞い

松明の炎が夜空を照らし、幻想的な景色が作り出されたかと思うと、激しくやり合う天狗と獅子。炎に魅入る人々は大きな一体感に包まれていた。2025年5月14日、富山県射水市で受け継がれる六渡寺の獅子舞を1日中追いかけた。富山県の獅子舞でまだ見られてない…

どこまでも素朴な猪退治の行事!福井県鹿俣町「したんじょう」

福井駅からバスに乗ると、どんどん車窓は田園風景へと変わっていく。鉄道の一乗谷駅を越え、朝倉氏の城跡などの遺構を抜けるとバスに乗っている人は僕1人になる。観光ガイド気分で「ここは朝倉氏の遺構ですよ、博物館がありますよ」などと陽気にお話ししなが…

チイキ、セカイ、ウチュウ、壮大な世界観を体現する、福井県若狭地域の王の舞。彌美神社にて

古代へと遡る奥深い信仰に誘われた気がした。僕は美しい浜のまち、福井県美浜に降り立った。もともと、氷見獅子の起源、もっと言えば北陸一帯に広がる天狗と棒振りが登場する獅子舞の起源を解き明かすことになるかもしれないという思いでこの地を訪れた。王…

富山県高岡市の地名「師子頭」の謎、富山県の獅子舞の古層

2025年5月3日、富山県井波から高岡行きのバスに乗って駅前に到着したのは12時前。ブラックラーメンを食べてから、久宗獅子舞工房さんのつてもあり、高岡獅子舞共演会に出店した。高岡の獅子舞はなぜこれほどまでに賑わいを見せるのか。駅前のウィングウィン…

伝統の重みを軽やかに継承、泥つき草履で玄関に突入。富山県井波「井波よいやさ祭り」の獅子舞

井波といえば国内有数の獅子頭作りが盛んな街だ。もともと瑞泉寺の再建で京都から優秀な宮大工が派遣されたり、欄間彫刻が流行したりといった背景が木彫りの土壌を生んだ。福井県境にある石川県加賀市によく獅子舞の取材にいくが、ここでは県内と同じくらい…

シルクロード舞楽の地方的展開、獅子舞の日本全国伝播の謎に迫る!静岡県森町小國神社十二段舞楽

東海道がシルクロードの延長だとするならば、それは小國神社の十二段舞楽によって唯一証明されるだろう。2025年4月19日、静岡県森町の一宮である小國神社の十二段舞楽を拝見した。この十二段舞楽は、小國神社の左舞(荒々しい舞い)と天宮神社の右舞(ゆっくり…

能登半島 獅子舞、中心周辺伝播論

昨年正月から絶対に訪れないといけないと思い続けていた土地がある。能登半島だ。まだ地震の災害の爪痕の大きいこの土地で、そろそろ祭りのことも考え始めても大丈夫なのではないかと思えるくらいのところまできた気がする。知人から少しずつ祭りが回復しつ…

豆腐をくわえる獅子舞、その意味とは?宮城県の獅子舞、春祈祷を拝見

2025年3月23日、宮城県南三陸町の波伝谷春祈祷を訪れた。この獅子舞は豆腐を噛むという。なぜ豆腐なのか?これを深掘ることで、非常に興味深い獅子舞の本質が見えてきた。 豆腐を噛む獅子舞に出会う 前泊は仙台だった。そこから途中電車を間違えて、佳景山か…

青森県・下北半島の能舞と獅子舞を訪問、500年の歴史によって洗練された知られざる舞いとは?

2025年1月3日から4日の日程で、下北半島に滞在。日本最初の原子力船が生まれた地にして、日本最古の原始を残す地とも言われる下北半島の能舞と獅子舞を訪れた。今まで八戸の鮫神楽などは訪れていたが、それより北にはなかなか行けていなかった。しかし、以前…

震災を経て獅子舞の役割を再考する〜宮城県女川町の獅子振りを取材

宮城県女川町の獅子振りを訪れた。東日本大震災から復活を遂げて10年以上経った今、女川はどのように変化したのだろうか。震災は地域のつながりや祈りを再考させ、現代の地域社会において、獅子舞が最も必要とされた場面のひとつだったようにも思える。なに…

なぜ延喜・天暦の時代に、獅子舞は増加したのか

獅子舞の起源を深く掘っていくと、不思議な事実にぶち当たる。それが、900年代に獅子舞が増加しているという事実である。延喜天暦の時代は「延喜・天暦の治」と呼ばれ、理想的な時代として考えられてきた。延喜年間は901年から923年までであり、醍醐天皇の治…

千年以上の歴史を誇る獅子舞、新しいヒーロー(担い手)を募集!東京都国立市・谷保天満宮の獅子舞

長い年月を受け継がれてきた獅子舞にはそれなりに理由がある。しかし、ここ数千年を見ても類を見ないほどに、現在、日本の地域コミュニティは変革を遂げている。しがらみからの開放という大きな自由を手に入れようとする若者たちがその最たる例である。その…

顔が平たい獅子舞の謎に迫る、佐賀県獅子舞巡り。唐津くんち、丹生神社、琴路神社を1日で。

2024年11月3日、佐賀県唐津市の唐津くんち、嬉野市塩田町宮ノ元地区 丹生神社の塩田獅子舞、鹿島市琴路神社の獅子舞を訪問した。一日中レンタカーを乗り回して、実際に解き明かされた獅子舞の物語を振り返ろう。 夜行バスはハプニングの宝庫 前日は民俗芸能…

日本の大動脈、隠された農民芸術「箕」の秘密を解き明かす旅、新潟県佐渡島 たかみ獅子に訪問

2024年10月16日、新潟県佐渡島の新町(しんまち)まつりで登場する「たかみ獅子」を訪問した。この獅子舞は農機具の箕を3枚かさねてつくる独特なもので昔は日本全国に広がっていたが今では数例しかないとも言われる貴重なものだ。その獅子舞を拝見したいと思い…

毛むくじゃらの獅子舞 大塩天満宮 兵庫県

全身が毛むくじゃらの獅子舞が本州にも存在する。沖縄以外にもこんな動物的で原始的な獅子舞がいるのか、とYoutubeを見ながら驚いた。兵庫県の毛獅子はここ数年、訪れたいけど訪れられなかった獅子舞のひとつだ。兵庫県一帯で受け継がれるこの舞いの迫力を現…

日本最大級!3年に1度現れる!静岡県掛川市 仁藤の大獅子

2024年10月14日、静岡県掛川市で行われた掛川大祭(かけがわおおまつり)を訪れた。この祭りには非常に思い入れがあり、絶対に訪れたいと思っていた。なぜなら、「日本で最も大きな獅子舞」とも言われる獅子舞が演舞されるからである。 ここで中日新聞の2024年…

天に近づき大豊作へと祈る、愛知県豊明市「大脇梯子獅子」

2024年10月13日、念願の梯子(はしご)獅子を見ることができた。梯子獅子とは、祭礼の際に大型の櫓を組み、そこに向かう梯子をかけて、梯子を登って天に届かんとする獅子舞の形態のひとつであり、愛知県、千葉県、和歌山県など太平洋沿岸部で数多く受け継が…

雨乞いの呪術、全国の芸能とのつながり。愛知県東浦町「藤江のだんつく獅子舞」

西日本にいる一人立ちの獅子舞。それだけでも珍しいが、何か獅子舞の真相を抉り出すような原始的な獣のような獅子舞のビジュアルに直感的に惹かれた。そこで2024年10月13日、僕は愛知県東浦町藤江神社のだんつく獅子舞(八ツ頭舞楽)を訪れた。以前拝見したTwi…

歴史ある格式高い夫婦舞い、福岡・大分八幡宮の獅子舞から探る、獅子舞のルーツとは?

2024年9月29日、福岡県飯塚市の大分(だいぶ)八幡宮で毎年行われる仲秋の大祭を訪れた。この地には、非常に歴史ある獅子舞が伝わるという。福岡の獅子舞といえば7月の祓い獅子の印象があったが、福岡市の周辺にも貴重な獅子舞が伝わっているようだ。今回は…

三匹獅子舞の主役はササラ、死と聖の境界に立つ穢れなき者。そのルーツとは何か?

三匹獅子舞には雌獅子隠しの演目が多くの団体の共通演目として存在する。雌1頭を雄2頭が取り合うという構図で、雌1頭は花笠4つによって囲まれておりそれを探し出すことを競うような演目である。これは関東の三匹獅子舞はもちろん、東北地方のしし踊りにも数…

獅子舞と聖武天皇、そして八幡信仰。獅子舞大伝播の謎を解く。

獅子舞がなぜ全国に広がっていったのか。今では47都道府県に伝えられているわけだが、その最初の起爆剤のひとつが、八幡信仰だった可能性がある。これはどういうことなのか。東大寺大仏殿開眼供養が行われた752年。この年に、日本全国から参列に駆けつけた人…

棒術と獅子舞の関係性とは?全国に通じる新しい気づき、福島県いわき市の獅子舞を訪問

福島県いわき市。獅子舞の保存や継承に力を入れている自治体のひとつだ。最近まではこの地が獅子舞が盛んな地であることを全然知らなかったものの、2024年9月7日から8日の日程で、東京音楽大学のプログラムに同行させていただき、その実態を知ることになった…

農山村を未来につなぐには?獅子舞と生業との関わりを考える。石川県津幡町河合谷の獅子舞

小矢部から471号線をぐんぐん山の中に入っていく。ところどころ台風で崩れている箇所がある。ここで本当に合っているのか。不安になるくらい山深い。一部通り抜けできない道路もある。たどり着いたのは、ひとつの神社。場所間違ってるのでは?なんて思いなが…

震災復興へ!羽咋獅子舞フェスティバル出展、能登獅子の特徴を掴む

2024年8月31日、石川県羽咋市に新設の「LAKUNA羽咋」で開催された羽咋獅子舞フェスティバルに獅子舞グッズを出店。それとともに出演した12団体の獅子舞を撮影した。初見の印象は総じて高い鉦の音と、テンポ感の良い足のリズムだった。これが能登獅子の特徴の…

なぜ伝統は途絶えるのか?埼玉県秩父市 三峯神社の獅子舞 ラスト演舞から考えた

池袋から西武線に乗り換えて進んでいく。徐々に山を縫うような風景の中。電車は秩父盆地へとたどり着く。ここには独自の文化圏があると思った。西武秩父駅から降りて大雨の中、バスを待つ。売店で買ったお酒の香りのする饅頭を頬張る。餅、饅頭、味噌。どれ…

【2024年8月】石川県加賀市 獅子舞取材 お盆明けの獅子舞ラッシュ、小さく細かく広く根付く獅子舞文化

静岡から移動して、次の朝に石川県加賀市にたどり着いた。旅する延長上で加賀市を訪れて感じるのは、特に獅子舞文化が小さく細かく広く根付いており、それが地域性であり面白さのように思う。この地域では3日間、2024年8月16〜18日の日程で滞在した。加賀市…

鹿ん舞は地域のアイドルか、素朴な原始信仰か。山に囲まれた静岡の町で、唯一無二の演舞を拝見した

静岡の山深きところ、川根本町にて受け継がれる舞いに関心があった。それは一目見てキュートで原始的、ともいうべきか。現代に適合するようなアイドル感がありながら、原始舞踏の本質さえも突きつけてくるような素晴らしい舞いと想像する。このような舞いは…