東京に鹿踊がやってきた

2022年7月10日、11時より上野駅の岩手産直市で鹿踊を見てきた。なかなか東京で鹿踊を見ることはないので、この新鮮な感覚を書き残しておくことにする。今回、上野駅でお披露目された鹿踊は、「春日流八幡鹿踊」という名前らしい。岩手県花巻市から来たそうだ。

鹿系のシシは福島以北というのが通例であり、東京はどちらかといえばイノシシの文化圏である。関東地方におけるイノシシの分布は三匹獅子舞の分布に重なるところがあると、小島さんの論文で読んだ。このような場で、土地の風土に適合しない鹿の踊りを披露するのはどのような意味があるのだろうか?「地域のことを知ってもらう」という文脈で、民俗芸能が登場しうるのは大いに意義があることだ。ただし、上野駅の雑踏の中で、鹿踊の担い手が歌う歌声は比較的薄れていたことは印象的だった。本来ならば、静かな山や田などを目の前に、踊るものなのだろう。そういう意味で民俗芸能は土地と土地との違いを可視化する存在でもあるのだ。一方で、観客が多かったことから、上野の人々は鹿踊に対して大いに関心を示していたことがわかる。