職人から見た祭りの姿とは?工芸品が盛んな石川県金沢市に行ってきた

獅子舞の蚊帳を作る職人は祭りをどのように捉えているのだろうか?石川県は能登キリコ、金沢の百万石祭りなど、祭り文化が盛んな土地である。これを下支えしてきたのは、江戸時代に加賀前田藩が奨励してきた工芸品文化と経済的な豊かさだ。

今回は工芸品の文化の中でも、獅子舞の蚊帳に着目して、2022年4月7日に取材を行った記録をお届けする。今回訪問させていただいたのは、奥田染物さんだ。基本的には奥田染物の万行さんに車での送迎や奥田染物の活動紹介、工場見学など多岐にわたってお世話になった。

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実は前日の4月6日に石川県加賀市大聖寺で西野呉服店さんにお会いして、蚊帳の話を少し伺っていた。興味深かったのが、武家文化の金沢は公家文化の京都に比べてより簡素なデザインが流行しており、虫食い跡を描くこともあるという話を伺っており驚いた。その一方で金沢といえば金箔の産地だし、派手な祭礼行事も多い。そこら辺のバランスのようなものが気になっていた。あとは、西野呉服店さんは問屋さんとして注文を受けたら京都や金沢などに発注し、自分のところで物作りはしないが、それが祭りの担い手や職人にとってどのような恩恵をもたらしているのかは気になるところだ。大聖寺であれば染物職人がいないので、そういう意味では注文相談できる気軽な問屋さんは必要だし、仕事が職人にもどんどん回っていくことにも繋がっている。一方で、蚊帳作りのオリジナリティをどこまで引き出せるのかという話でもある。さあ、こだわりの蚊帳職人の世界を覗いてみよう。

金沢の祭りが豪華な理由とは?工芸文化が支える祭り

奥田染物は金沢市の郊外にあり、中心部の商業地帯に比べると田園風景が広がっているような場所に位置する。まずは、奥田染物が考える祭り文化について、その大枠を社長の奥田さんにお話を伺った。

奥田さん:世の中は進歩していく中で、人間の精神活動の根源をなすものが伝統文化だと思います。伝統芸能、お茶など様々な文化がありますが、その中の一つとして加賀友禅があります。加賀友禅の友禅作家であり、染物の加賀染めを合わせて伝承してきました。加賀友禅は着物に集中した方は多いですが、色付けに着目してものづくりをしてきました。お祭りだと衣装などを見てみると、型染め、手染め色々ありますが、どちらが来ても対応できます。石川県で一番の一級技能賞をいただき、現代の名工としても表彰いただきました。伝統という言葉は、当事者はそのようなことなど意識していません。生活の一部としてただそこにあるからです。だから、その時代に便利なものを工夫して作り出さねばならないのです。

稲村:加賀友禅の最近のトレンドはどのようでしょうか?

奥田さん:ものづくりはまず人間性です。加賀友禅の場合はそれに加えて、色と技法が大事になります。色やデザインは時代に応じて変わっていきます。最近はインクジェットも普及していますね。

稲村:京都は公家文化なので、きらびやかな着物を着ることが多いです。一方で、金沢は武家文化なので自然のありのままを表現しますので、花に虫食い模様を描くこともあるそうです。そういう違いも加賀友禅の個性として現れてきそうですね。

奥田さん:加賀前田藩以降に、加賀友禅は盛んになりました。加賀藩外様大名ですから、幕府からはいつ反逆するか睨まれるのを避けるために、文化工芸に対して力を入れるようになりました。この文化工芸は質素なデザインのものでした。それで全国から名工を呼んできましたし、地元の職人との刺激し合う中で、文化の土壌ができました。その伝統を歴代の藩主が受け継いできたのです。一方で、自然に恵まれ、雨が多く、家の中でのコツコツとものを作るような仕事が多くなりました。つまり、歴史と気候の両方があって金沢には工芸文化が根付いたのです。ただ、今では家にいるとテレビなどたくさんの娯楽や、やることがあります。一方で昔はご飯を食べて、寝て、仕事をしてという生活が普通でした。手間暇かけて作ったものが良いものとして残っています。

稲村:そういえば、加賀獅子の始まりについて、加賀藩外様大名ゆえに軍事費にお金をつけると幕府に睨まれるために、文化奨励政策にお金を使うようになった流れで、武芸鍛錬の獅子舞を始めたという話もあります。つまり、表立って軍事訓練をするのではなく、民衆のコミュニティの中で武芸鍛錬をするという形に変わったということかもしれません。

稲村:着物は日常的に着る人は少なくなってきましたが、お祝い事の時に着る人も多くなっていますよね。

奥田さん:普段着、式服、余所行きなど、着る服が変わります。余所行きは相手を尊敬するために良いものを着ていくとか、感謝の気持ちとか、そういう発想です。神様にお願いしにいくので、神社に少し良い服を着ていきますよね。最近は馴れ合いで服を気にしなくなっていますが。

稲村:最近は個性を重視した服装にするとか、制服を撤廃したりする動きもありますね。自衛隊は制服を着ると悪いことはできないとか、リラックスしたいから私服にするとか..。

蚊帳の貸し出しをするという発想はどこから?

コカコーラ社の綾鷹では、伝統工芸の柄を使ったペットボトルカバーにして売上金の一部を若者の職人支援に活用している。これに応募して見事助成を獲得して、コロナ禍でも密にならない小さい蚊帳を製作するようだ。万行さんとプロジェクトリーダーの奥田雅子さんにお話を伺った。

万行さん:コロナ禍で祭りの担い手さん達と話していた時に、「中止になりました」という声をよく聴きました。お祭りが中止になると、担い手が育ちません。小学生から中学生の世代で祭りに携わったことがない人も増えていくでしょう。新興住宅街であればなおさらで、人口が増えても祭りの認知度が上がらないということもあります。(ご祝儀の)「花をうつ」という言葉を知らない人も多いです。

町の祭りはできていませんが、金沢市文化財保護課が窓口になっている獅子舞保存協会が窓口となり、イベントを開催するために各団体に声がけが来ることもあります(※後ほど追記)。お披露目できることが嬉しいという思いもありますが、コロナ禍においてイベントで獅子舞を披露するとなると獅子舞に10人ほど必要なことも多く、ホテルなどで人数が原因で中止になったイベントもありました。過去には「芳斎」という民泊で獅子舞を演じて普及していこうという活動をされている団体では、蚊帳を横に掛けておいて、獅子頭だけ動かしていることもあったようです。

蚊帳ありで考えていくと、蚊帳が小さければダイナミックさは欠けますが、担い手との対話の中で人数が削減できて実現できるイベントもあるのではと気づいたのです。小さい蚊帳でもたくさんの方に見ていただきたいし、実際に小さい蚊帳でやっている地域も県内にありますので、加賀獅子の蚊帳の大きさをひとまず置いといて、獅子舞をたくさんの方に見ていただき応援していただきたいという思いで小さい蚊帳を作りました。

稲村:蚊帳のデザインはどのように決めたのですか?加賀獅子のオーソドックスな蚊帳のデザインみたいなものがあるんでしょうか?多くの団体に貸し出すとなると、その分、デザインにも配慮する必要がありそうですよね。

奥田さん:(私は綾鷹のプロジェクトのリーダーをしている染物職人です。綾鷹のプロジェクトは5人でやっており、若手50歳以下でチームを組んでいます。)今までやってきた中から、牡丹の花などある程度デザインは決まってきます。蚊帳は1年に1回新調があるかないかなのですが、近年は7~8つの時もあります。コロナ禍で作り変えの時期なのかもしれません。加賀友禅の花では迫力が欠けるので、通常は迫力のある花を意識して描きます。ただ、今回は少し小さいサイズの蚊帳なので、色のぼかしも入れながら少し加賀友禅の特徴も混ぜて作っています。

加賀友禅のデザイン

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▼今回制作中の蚊帳のデザイン

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稲村加賀友禅は控えめなデザインが特徴的ですが、なぜ加賀獅子の蚊帳は派手で力強い装飾になったのでしょう?

万行さん:加賀前田藩のお殿様向けに、ハレの場として派手に作ったのが始まりですよね。

稲村:蚊帳の中に入れる人は何人くらいの想定ですか?

万行さん:今は2人~3人を想定して作っています。

稲村:10人の獅子が2人になったとして、舞い方は変化しないのでしょうか?

万行さん:加賀や能登など、2人立ちのところもありますよね。獅子舞を広めるためのものという認識なので、金沢市だけではなく様々な地域の方に使っていただけたらと考えています。

稲村:蚊帳職人さんにとってお祭りはどういう印象ですか?

奥田さん:お祭りは身近ですね。あ、うちが染めたやつだなと思うこともあります。自分がこうした方が良いと思っていても、実際に舞うところを見た時に「あ、そういうことだったのか」と納得することもあります。全て手作業で祭り道具が作られていますし、何十年も受け継がれるものとして向き合い作っています。機能性も考えながら、その絵柄の意味を考えることもあります。

万行さん:見せ場に牡丹を配置するとか、各町内の要望を聞きながら作っています。

蚊帳にもオスメスがあるんです。渦巻きの違いを見てください。町内でオスメスがある場合もありますし、隣の町内と一対でオスメスの場合もあります。

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万行さん:蚊帳に自分の孫の名前を入れて、街に寄付するという場合もあります。これが会社名の時もあります。こういうのは作った人の名前ではなく、贈る人の名前を入れる場合が多いですね。

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万行さん:花の位置は尋ねることにしています。花は見える場所に持っていかねばなりません。花はパーンと開いているものもあれば、今から開こうとしているような花もあります。親子獅子の場合、子供の蚊帳はぼかさずに黄緑や緑を使って、大人の蚊帳は熟練した雰囲気で作りました。問屋さん経由だとなかなかお客さんとの対話ができませんが、直接お客さんと対話することで、生まれるデザインもあります。

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万行さん:なぜ獅子に牡丹かはご存知ですか?もともと百獣の王のライオンが獅子ですよね。百獣の王でも苦手なものがあって、それは寄生虫なんです。体内に入ってきて肉を蝕みます。流石に百獣の王でも勝てません。その寄生虫が苦手なものが牡丹の朝露でして。獅子が牡丹の里にいて牡丹に守られているというわけなのです。

加賀獅子の蚊帳はおめでたいものなので加賀友禅の特徴である虫食いを入れることは稀ですが、せっかくなので加賀友禅の特徴を入れて欲しいと言われて蚊帳にも虫食いの跡を入れたことがあります。

稲村:加賀獅子の中には花棒というのが登場して獅子を誘導して最後に獅子殺しをするという演目もありますが、この花はもしかしたら牡丹のことかもしれないですよね。

祭りの担い手とともに、職人も育成する

稲村:石川には何軒くらい獅子の蚊帳を作っている職人がいらっしゃるのですか?

万行さん:いま、私たちの他に3軒くらいですね。能登に引越しされた玉作さんと、金沢の平木屋さんが2軒です。伝統的な素材を扱う染物屋さんはもう少ないです。

稲村:そう考えると獅子舞が盛んな石川県ですが、職人は少なく、祭り道具を一手に担っていくような存在になりつつあるのですね。

万行さん:京都や北海道などに発注する場合もあるようですが、それは絵柄を真似して作ってもらうという形になってしまいます。そういう意味で、石川県の染物をしている人は加賀獅子と地域に対する思い入れがあります。祭りの担い手とともに、染物職人の担い手も育成するという意味で、今回、綾鷹の若手支援に応募させていただきました。100件の応募があった中で、22件の採択があり、50万円の助成をいただきました。4月末までに蚊帳を1つ完成させ、5月以降に祭り団体に使っていただきます(綾鷹は、The Coca-Cola Companyの登録商標です)。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000620.000001735.html

万行さん:作った蚊帳は今まで使ったことのない色も使用しました。葉が紅葉した加賀友禅的な表現もこのように取り入れています。これからさらに製作を進めて4月中に仕上げます。

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蚊帳はどのように貸し出すのか?

万行さん:1団体に使っていただいたら、その次の団体とかし出すという風に順々に貸し出す予定です。小学校4年生が社会科の授業で地域のことを学ぶという回で地域の獅子舞の紹介があるようで、小さい蚊帳があると見せやすいからということで、今回貸出を予定している団体さんもあります。地元のまつりでは本物のものを使いますが、小さい蚊帳を貸し出す場合はイベントごとや子供達への紹介など、その他の催しで身軽に持って行ってもらうために、今回貸出を行います。また、獅子頭の工房をされている方が、獅子頭と一緒に見本として色々な方に見ていただくときに小さな蚊帳があると持ち運びも便利で持っていけるとも言っていただきました。

まだ蚊帳は完成していませんが、現在、すでに2団体への貸出が決まっている状況です。友人の結婚式のためなど、これから様々なアイデアが生まれてくれば良いと思っています。綾鷹からご支援いただいたものですので、お金はいただかずに使っていただけたらと考えています。

稲村:貸出期間とかはあるのですか?

万行さん:期間は特にはなくて、個別で連絡を取り合い、空いている時に貸し出すようなイメージです。今のところはお問い合わせが数多くあるわけではないので、そこまでスケジュールをきっかり決める必要はなさそうです。まず、コロナ禍でもイベントを開催するという条件があって初めて蚊帳を貸し出すということになりますよね。

奥田染物で聞いた!ものづくりのこだわりと祭りへの思い

染物職人の現場を知るべく、今度は万行さんに工場を案内していただいた。

万行さん加賀友禅の技法で、獅子の蚊帳を製作しています。加賀友禅の餅糊を使って、蚊帳を製作しているので、技法をそのまま使っていることになります。餅の粉を練って作ったものが餅糊で。水につけると柔らかくなって、ほっておいて乾くと固くなるのです。そういう性質を利用して作っています。

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万行さん:水は白山の地下水、つまり伏流水を使っています。金沢には染物屋さんがたくさんあるのですが、環境汚染や土壌の問題が50年前に出てきました。それで、昭和47年に協同組合を立ち上げて、みんなで作ったものを洗ったり干したりということを始めました。白山から川に交わらない地下を流れてくる水が年中あって豊富なのです。前は30軒ほどでしたが、今では5軒ほどになりました。

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万行さん:染め物工場の周りには、お豆腐屋さん、化粧品工場、カット野菜のお店などもあり、皆、白山の伏流水の恩恵を受けています。

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金沢市役所が窓口に!獅子舞を普及

万行さんに「加賀獅子保存協会」をご紹介いただき、電話インタビューを実施した。金沢市文化財保護課の中にあり、金沢市内の各地域で活動されている加賀獅子をより地域の外に広めていくとともに連携していくような動きも見られる。これは富山県の小矢部や高岡などでも開催される獅子舞共演会的な動きとも重なるもので、コロナ禍になる前には獅子舞の共演会を開催したり、百万石祭りに登場する獅子舞を抽選で選んだりということをしていたようだ。コロナ禍では獅子頭の展示会を金沢駅構内で開催するなど、展示にも力を入れているという。

基本的には金沢市内の獅子舞団体はほぼ入会するのが当たり前になっていて、1年で1万円の年会費を払うこととなっている。このような行政が窓口となって獅子舞の魅力を発信していこうという動きは、岩手県釜石市の虎舞連合会と同じような動きにも思える。ただ、こちらの場合は窓口が観光課になっているのが異なる。虎舞が地域イベントなどに呼ばれ、地元の祭り以外でも活躍していく場面が作られるという意味で、普及に大きな役割を担う組織と言えるだろう。

厄を祓ったがゆえに祓われる、創作獅子舞の革新的ストーリー

奥田染物で働く方が獅子舞の担い手もされていた。「今日の20時から練習をしますよ」と教えていただき、津幡町川尻の井上公民館に伺い、偶然にも獅子舞練習を拝見する機会を得た。会場にたどり着くと、蚊帳1人、獅子1人、太鼓1人、棒振り1人、笛1人の合計5人で練習をされていた。20~40代まで年齢層も様々だ。出番の有無に関わらず、一年中、毎週練習をしているという。

町内の同期でお揃いの法被をオリジナルで作るようで、世代ごとに法被の柄が違うらしい。また、町内のリーダーを取れる人は厄年の人で、その人の名前が獅子舞の青年団の名前になる。町名ではなく、人名で団体ができるというのは興味深い。般若、龍虎、鯉、芸妓、狐など図案は本当に様々だ。デザインはバージョンアップしている。ただ、近年は担い手不足で、何年かまとめて作っているようだ。

今回練習をされていたのは、町内の祭りで披露する獅子舞ではなく、地域のお正月のイベントなどで披露する創作の獅子舞だ。ああ、なるほど。こういう機会があるから、小さい蚊帳を作ろうという発想も生まれてくるのだと思った。

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創作の獅子舞は、醫師神社(くすし神社)に伝わる伝説と、獅子舞を組み合わせたようだ。お面も何もかも全部手作りという。簡単なあらすじとしては獅子が村のために疫病などの厄を払ってくれたが、厄を祓い過ぎた獅子が暴れ獅子になってしまい、最後に剣士によって聖なる刃で退治されるという流れだ。元の話は疫病が村で流行った際に、村人が田んぼを耕していたらキコロ像という人形が出てきて、それに鍬が当たって血が出て、それを奉納して祭りをしたら疫病が払われたという言い伝えがあった。これを獅子舞の邪気払いと合わせて話を作ることで、「僕らの中でもすんなりいったんです」とのこと。

加賀獅子の伝統的なデザインで獅子舞が始まるが、獅子が暴れ獅子になった途端、蚊帳は反転する。そして、食欲(青)、色欲(赤)、金欲(黄)の3体が描かれた蚊帳が現れるのだ。これは蚊帳が小さいからこそできる技であり、蚊帳を反転させるという発想とそれを体現できる技術が素晴らしい。

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これには加賀特有の獅子殺しと、頭を噛むなどの仕草に見られる獅子が厄払いをする性質を同じストーリーの中で表現した点でかなり革新的である。獅子は厄払いをするのに、なぜ厄として払われる場合もあるのか?という矛盾を解決する試みでもあるわけだ。普通の祭礼行事ではどちらかの役割しか担わないか、もしくは分離独立した形で獅子殺しの舞いなのになぜか祭り終わりに頭を噛んでくれるという場合が多い。そういう意味では、より獅子舞に対する理解を促進するような獅子舞なのだ。

獅子舞の蚊帳にまつわる奥深い世界

考えてもみれば、蚊帳の世界は奥深い。普段獅子舞をしていると獅子頭や舞い方の方ばかりに注目しがちだ。蚊帳はどちらかというと裏方である。しかし、蚊帳が獅子頭を上回らんばかりに、デザインには様々な工夫が凝らされているし、使い手にとってより良い蚊帳とは何かが常に追及されている。金沢ならではのものづくりの技術が花開いたからこそ、金沢の祭り文化は発達したとも言える。奥田染物の蚊帳作りを始め、この業界の今後の展開に注目していきたい。