獅子舞講座を開催!2段構えでファンづくり、富山県・三ヶ錦町の獅子舞

富山県射水市の三ヶ獅子舞では、獅子舞の講座を開催されているという。なぜ獅子舞の練習に加えて獅子舞講座なるものが必要だったのか?開催することで地域にとってどのような良い事があるのか?三ヶ獅子舞保存会の宮川さんと宮司の宮城さんにお話を伺った。

三ヶ獅子舞の由来

獅子舞の始まりについてはよくわからない。殿村から伝わったという話もある。昭和2年には奉納の記録があり、昭和半ばに一度途絶えたものの、その後に昭和54年の小杉駅竣工に合わせて復活した。以前は大人獅子と子供獅子のみやっていたが、復活後は大人獅子のみとなった。将来的には子供獅子も復活させたいという思いがあり、実際に子供達に獅子舞を見てもらえるような場を作りたいという思いもある。獅子方若連中だったのを獅子舞保存会という形で行なっている。言葉で聞かされるよりも、舞っている姿を見るのが有効なのかもしれない。10から50代までの40人ほどのメンバーが揃っている。小学校の次が40代の人が多いというのが問題で、中間層の人がなかなかいないことが問題と感じている。これが獅子舞講座の開催に至った背景的な部分でもある。

獅子舞講座が始まった経緯

5月第三土曜日に三ヶ地区の獅子舞があり、その練習が4〜5月にある。ただし2年前からコロナが始まり、去年から獅子舞の練習とは別に獅子舞講座というものを作った。祭りがやらないからこそ、何かやらないといけないという気持ちから、2021年6月より獅子舞講座が始まった。第1回が座学で、第2回以降は獅子舞の練習という位置付けで、毎月日曜日に定期的に行うようにした。今回9回目で最後の練習であり、再来週の10回目が3月27日に最終発表会が行われるという流れである。定期的に獅子舞講座をやることで、地域の方に獅子舞に関する関心を持ってもらっている。三ヶの人以外の人も多数参加している。

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獅子舞講座の流れ

獅子舞講座の今回の流れは、10時から11時がパートごとの練習、11時から12時までが合わせの練習という形で2部構成で獅子舞講座が行われていた。太鼓、横笛、獅子という3つのパートに分かれていた。横笛のパートでは、日によって笛の音が変わるという話を聞いた。湿っている日の方が良いという話があって、時によっては日本酒を笛の中に注ぐとベタベタするけど音が良くなるという話もある。横笛の参加者は「13種類のメロディがあり似ているのもあるので、覚えるのが大変。見よう見まねで一人でも吹けるように練習をしている」とのこと。笛をする時はマスクができないので、マスクの上に布を被せて笛を吹いている時でも周囲に唾が飛ばないように工夫されているのも印象的だった。

三ヶ獅子舞サポート隊が講座を支える

現在、三ヶ獅子舞サポート隊のメンバーも募集されている。これはお祭りそのものが保存会のお金で運営されるのに対して、獅子舞講座は地域の人々が別の形で支えていく独立採算で行なっている。射水市からの補助金が入りつつもそれに頼り切らず、地域からの支援をもらうことで自立した収益軸を持っていることになる。サポーターは個人(1口3000円)と法人(1口5000円)で合わせて何十人単位で存在する。法人は商店街の商店にも協力をもらっている。このお金の使い道は獅子舞講座の参加者に対する備品の購入、衣装のクリーニング代、資料代、保険料など様々な経費に充てられているようだ。「皆で理解して皆で支え合うことで補助金に頼り切らず持続可能な仕組みを整えられる」とのこと。

2段構えで地域が獅子舞を支える

コロナ禍で獅子舞に触れられる場をということで始まった事業ではあるが、方針としてはお祭りが再開できるようになったとしても続けていきたいようだ。つまり、獅子舞で地域を回ることでご祝儀が上がるようになったとしても、それとは別の部分で財源を作っていくことで、さらに獅子舞を発展させたい思いがあるのだとか。これは「祭りの運営」ではなく「ファンづくりや担い手づくり」のためであるという方針を打ち出していきたいとのこと。お祭りの1ヶ月前の担い手のための練習ではなく、1年を通してお祭りの担い手じゃない人が参加できるようなゆるいコミュニティ・サークルのような感覚なのだとか。獅子舞保存会がなぜハードルが高いかというと保存会に所属することを求められるからであり、サークル感覚でこれに満足する人がいればそれはそれでいいし、もっと関わりたいという人がいれば保存会に入ってもらえばいい。そういう自由なスタンスで関わり代を作っていくことが重要なのではないかと。「気軽に参加しに来て」という感覚のようだ。なかなか聞かない事例であり、全国に先駆けた2段構えの組織づくりに取り組んでいるというわけだ。

地域外に拡張していく獅子舞

今後はお祭りの日に三ヶの人以外でも今後参加できるようにしていきたいという思いもある。三ヶには20以上の町内があり、各町内の公民館やお店などをマイクロバスで回るようにしている。つまり、門付けのイメージではなく、主要なところを回るイメージだ。また、錦町のみ三ヶの獅子舞の発祥地なので、夜に地域の方の理解を得ながら、30~40軒を全て回るようにしている。笛、太鼓、棒振り、花笠、獅子、御幣や刀、棒などの役割がある。御幣は毎年新調しており、このような道具を獅子舞で使う地域は珍しい。大人獅子の中には7人が入り、子供獅子の中には5人が入る。獅子の中に入る人数も多いし、祭りの日に回る地域も多い。つまり、三ヶ獅子舞は規模感が大きいこともあり、獅子舞講座のような様々なレイヤーのファン・担い手に対して関心を高めてもらうような場が必要になるのかもしれないとも感じた。