茨城県石岡市での獅子頭づくりは、今日で10日目。10日目にして分かったことがある。師匠である獅子頭職人は全体的な形をイメージしながら、そのバランスで部分的なパーツを彫っているという感覚がすごすぎる。自分は今までなんとなくでやっていたのだけど、その何倍も先をいっていることがやっと分かってきた。
「眉上の高さと目の高さは同じくらいの位置で彫るのだけど、目の方が少し低い方が良い」という話をされ、そこから突貫工事が始まった。目を彫ってそこを基点に全ての配置を考えるという。それで眉上の高さが決まったら、頭のテッペンまでのカーブをそこから描いていく。緩やかすぎても急すぎてもいけなくて、そこの感覚値は教科書的なものがあるわけではなく「見て覚えるしかない」という。
今日は手が空いている3人の師匠が入れ替わり立ち替わり指導をしてくださった。全く指導の仕方が違うので、誰の意見を聞くかは最終的には自分次第になる。「みんなの良いところを盗んだら良いよ」と言ってくださるのがとてもありがたい。溝ができてしまったら、おがくずで埋めることで解決するのか、それとも全体的な切り崩しをして帳尻を合わせるのか。そこらへんの感覚に特に個性が現れるように思った。
そして、興味深いのはいつも電動機械に乗って見回りに来る先生と呼ばれる人物だ。師匠の師匠に当たる人だろうが、直接指導してもらったことはなく、いつも数分見回りのように来てくれて、そして帰っていく。途中、Youtubeを観て時間を使っている様子も見られる。どこか穏やかで他者を必要以上に気にしなくても良い環境がどこか心地よい。
そして、いつも石岡駅まで車で乗せていってくれる人もいる。この人は家の方向が反対側なのに、いつも大荷物の僕のことを考えて、駅まで送ってくださっているのだ。とてもありがたく、いつもぐちゃっとなった車の中に招き入れてくれ、半纏姿なのが印象的なお方である。
今日は子ども連れのお母さんもみにきて賑やかだった。獅子頭職人周りの人は面白い人ばかりで、同時に学びある人々なわけで、それが獅子頭作りを面白くしている要因かもしれない。
ps.肝心の獅子頭を彫り進めるのがスムーズにいかなくて、師匠たちに彫ってもらっていた。あまりにも進まないので、「獅子は病院に入院させな」と師匠のひとりが持って帰って少し進めてくださることになった。ありがたいことだし、自分ももっとスキルを上げねばと思った。やはり削る速度と滑らかさが圧倒的に課題のようにも感じている。