千葉県・東葛に潜む祭囃子の系譜

千葉県の松戸市には3匹獅子舞が、和名ヶ谷、上本郷、大橋の3箇所で継承されている。これは緻密な報告書が作成されており、比較的広く知られている。しかし、お囃子の獅子舞がいくつか存在することを知る人は多くない。

今回訪問したのは、松戸市の六実お囃子会。見学会が六実市民センターで4月4日(木)14時から16時まで行われた。流山市のおおたかのもりお囃子会の講師の先生が来て、教えてくれた。お囃子会には太鼓や鉦がメインで、獅子舞をする機会は少ないという。実際に今回は獅子舞は見せてもらうことは叶わず、ただ動画を見せてもらうことにとどまったものの、お囃子の節をいくつか教えてくださった。本物の太鼓ではなく、簡易的なものを使って行われた。このような練習用の太鼓があるとは知らなかった。安価に備品を仕入れて、多くの人に教えることができそうだ。

演目は狂い、じゃれ、餌を食べる、みかんを食べて吐き出す、巻物を咥えるなどの動きがある。獅子頭は浅草の宮本卯之助商店で作ってもらった。松戸駅の西口や子安神社のお祭りで舞ったことがある。お正月ただ、舞う機会は特に決まっているわけではない。

なぜ流山の人が六実に来て、お囃子を教えられるのか。それはお囃子が地域固有性よりはむしろ師匠→弟子の関係にも近い伝播性を持つからだと思う。お囃子の師匠によれば「葛西神社の何代目の宮司さんから神田明神に伝わり、そこから本土寺の黒門屋(漬物屋さん)に伝わり、そこから六実や流山にも伝播したと言われます。葛西から東葛は近いので、伝播もしやすかったのでは?」とのこと。

そこから移動して、先ほど紹介してもらった黒門屋に獅子舞の話を聞きに行った。正月に本土寺で2回、黒門屋、赤門、石井工務店、農家何軒か、という順番で門付けをしていた。しかしコロナを機に、やらなくなり、高齢化も合わさって現在はやっていない状況。また、節分の時はお囃子をやっているが、その時は獅子舞は出ない。なるほど、獅子舞はお囃子の他の楽器を操るよりも高度なのかもしれないと推測するが、なかなか伝承は難しいようである。それにしてもこの地域のお囃子系の獅子舞の古層が少し見えた気がする。

ps. 葛西神社のお囃子は江戸時代の享保年間、能勢環(のせたまき)という人物が広めたもので、これが江戸の祭り囃子の元祖と言われる。これが神田で将軍家などに上覧され、人気を博して農業の余暇にお囃子を習うものが続出した。