雌獅子を探して乱闘! 高木の獅子舞 東京都東村山市

関東一帯に広がる、素朴な三匹獅子舞の一端を拝見することができた。2023年9月16日(土)、東京都東村山市の高木の獅子舞を見に行ったのだ。17時半の道行に始まり、鳥居を潜って拝殿前で、約30分の演舞「雌獅子隠しの舞い」。関東全域で見られるこの三匹獅子舞の雌獅子隠しだが、この高木の獅子舞では狐が出てくる。少し娯楽要素の強い獅子舞だ。

青竹が4本たち、それを結ぶように注連縄の結界が張られている。4人のささらがそれぞれの青竹の前に立っていることからして、東西南北の四方位の祓えをしていることは明白である。また、この地域の特色として、カンナガラのような木の削り節のようなものを頭に用いている点が興味深い。どこか東北地方のしし踊りを見ているような気分になる舞だった。

神社の境内には獅子舞の銅像があり、そこに歴史的なこととかの解説が書かれていた。江戸時代に始まり、毎年9月19日に高木神社の祭礼と共に奉納されてきた。昔悪疫が流行してそれを防ぐためと五穀豊穣のために始まったと言うが、その年代は定かではない。

雌獅子を探すために狐や雄獅子2頭が乱れ舞う姿はなかなかに見応えがあった。舞の中でも「思いもよらぬ朝霧が降りて そこで雌獅子が隠(かく)されさよな」という辺りで、雄獅子2頭による雌獅子の奪い合いを開始。その最中、狐が隠された雌獅子に言い寄るというシーンがあり、結果的に狐は追い払われ、最後は和解して三頭の獅子が舞納めをするという流れだ。

特に観光化されるでもなく、地元住民に愛されながら繋がれてきた舞いのように思え、カメラマンがどっと押し寄せることもなく、ただその土地で細く長く生きながらえてきた獅子舞とも言えるだろう。