頭の上に頭をかぶるシュールな行列!鎌倉 御霊神社 「面掛行列」を堪能

2023年9月18日、神奈川県鎌倉市の御霊神社にて、鎌倉神楽と面掛行列なるものを拝見してきた。とりわけ、面掛行列の獅子に関心があり訪れた。この獅子は舞うのではなく、ただ持って歩く形態であり、行道獅子の祖型とも考えられる。この知られざるマニアックな超古い行事の真相に迫ってきた。

お湯を撒き散らす迫力ある演舞「鎌倉神楽」

鎌倉神楽は約800年前に京都の岩清水八幡宮から鶴岡八幡宮に伝えられたとされる。全ての演目は12座だが、かつては20座ほどあったと考えられている。カラフルな山飾り(依り代)があることなどが特徴的である。

御霊神社拝殿脇にて、13時から14時過ぎまで実施された。観客が数多く詰めかける中で、炎天下の中、実施された。実施された演目は、初能(はのう)、御祓(おはらい)、御幣招(ごへいまねき)、湯上(ゆあげ)、中入れ(なかいれ)、掻湯(かきゆ)、大散供(だいさんく)、笹舞(ささまい)、射祓(いはらい)剣舞毛止畿(けんまいもどき)の10種だ。

とりわけ興味深かったのは笹舞だ。笹をお湯に浸して、それをブワさっと観客に向けてふりかけるという所作で、それを浴びたものは一年中無病息災になるという。箱根まで行くとこれが獅子神楽と結びつくのだが、ここではあくまでも面を被らない人が湯立をしていた。また、最終演目には余興芸を行う者と天狗が登場した。飴玉をばっと投げ回っていたが、これは「俗世に戻ってくる」などの意味があるらしい。なるほどと思った。総じて、見物客とのコミュニケーションが行われながらの舞いだと感じた。

宮司さんは1人での演舞ではなく2人セットで行うため、ピタリと呼吸が合った演舞にすることが難しいとのこと。「今日はうまくいっているので、動画を見返しても良いですよ」とお話しされていた。

獅子を被っても顔は隠さない「面掛行列」

県指定無形民俗文化財であるこの行列は非常に古い形を今に残している。元々は1187年、鶴岡八幡宮放生会流鏑馬のみだったので、これに加えて、京都の石清水八幡宮に倣って、面掛行列が始まった。この裏話の俗伝として、1180年、源頼朝の朱印状を得て、藤原弾左衛門が長吏頭となり、極楽寺周辺の非人仕事(芸能やお寺の雑用など)を管轄し始めた。しかし、頼朝がその長吏頭の娘を懐妊させてしまったため、そのお詫びとして年一回の無礼講を許したことが、面掛行列の始まりとする説もある。実際に、お腹の大きい女が面掛行列に加わっており、安産祈願などで見物人がお腹を触っていくが、これは先ほどの話に由来する配役であろう。また面をつける理由は、大衆に顔が見られてはいけない身分の低い非人たちが、無礼講の日に堂々と表を歩くためであっただろうと考えられる。

さて、この面掛行列に登場する獅子も注目すべきだ。2対の獅子は雄と雌という意味であろう。それが中年男性の頭上に位置して、木組みで固定されて持たれている。頭の上に頭があるというのもとても不思議な構造で驚いた。獅子を持っているのに、顔は隠れていないという事実がシュールすぎると思った。

だが実際に行道の獅子の古い形式というのは、このようであったと思われる。元々、飛鳥時代奈良時代と中国大陸から伝来してきた獅子は舞うだけではなく、持ち歩き道中を清める役割も大きかった。これが伎楽の中の獅子の役割でもあり、まず全国の大寺院を中心に伝播して、仏教行事として取り込まれたというわけだ。この伎楽の形態を引き継ぐようにして、この面掛行列はできた。だからおそらく、伎楽の行列の形態を今に伝える珍しい行事であり、獅子の祖型を今に残すといっても過言ではないだろう。それにしても、獅子頭を手に持って歩いたり、車に乗せて歩いたりする行道の獅子は拝見したことがあるが、このように頭の上に乗せる形態は初めて拝見した。