知られざる獅子舞文化の再発見!獅子舞講演会・獅子頭展示、第2回 加賀獅子舞春祭り(4月)

4月14日(日)、僕が所属する加賀市獅子舞を応援する会は石川県加賀市にて「第2回加賀市獅子舞春祭り」を開催。獅子舞講演会&獅子頭展示を行った。獅子舞講演会は石川県加賀市大聖寺地区会館にて、14時から15時半の日程で開催。現在、石川県唯一の獅子頭専業工房である「知田工房」(白山市鶴来)の知田清雲さんと大芽さんに1時間半、たっぷりとお話を伺うことができた。獅子頭づくりを始めたきっかけから、2代目、3代目と受け継いで来れた理由、そして獅子頭づくりの過程などをお話いただいた。加賀市、そして大聖寺にも知田さんが彫った獅子頭がたくさんある。この獅子舞文化を下支えしてきた職人のとても貴重なお話を伺うことができた。その時の様子を振り返る。

知田工房は1950年前後に創業。最初は仕事場が大きいところを探していて、少しでも「しらやまさん(白山比咩神社)」の近くに行きたいということで、鶴来に知田工房を設けた。それ以来、石川県白山市鶴来で獅子頭専門の工房として働いてきたそうだ。2代目・3代目のきっかけは先代の影響が大きい。やはり獅子頭を彫るきっかけとしては間近に獅子頭を彫っている先代がいるから、自分もいずれはそれを彫るようになるのでは?という自覚から来るのだろう。

獅子頭専業工房、仕事の流れ

まずは2代目清雲さんに獅子頭づくりの基本的な話などを伺った。清雲さんが彫り始めた時に石川県内に獅子頭専門工房はハヤシコウドウさん(金沢)、サンガイセンゲさん(うのけ)、フルセケイリュウさん(金沢)と知田工房のみだった。大聖寺鷹匠町の獅子頭加賀市大聖寺の方が彫ったと伝わるが、大聖寺獅子頭専業の工房があったのかは定かではない。ちなみのこの町の獅子頭は木彫りに白い粉がかかっているが、手垢がつかないように砥の粉をつけて獅子頭を触っていた可能性があるとのこと。なぜ知田工房は獅子頭専業の工房として続けてこられたのか。獅子頭工房を続けてこられた理由としては「玄関に飾るものからお祭りの獅子まで、小さいものから大きいものまで作ってきたから生き残ってこれたのだと思います」とのこと。

それから獅子頭工房の仕事の内容についてお話を伺った。新規は現在6頭、修理は20頭ほど溜まっており、最近は修理がメインになっている。新規の注文は宝くじの補助金を申請して、それが決まってから注文という流れが多い。そこから半年から一年間、丸太を探す期間があり、大きくて綺麗で軽い木を探す。材木を探すのが大変で、そこから獅子頭づくりは始まる。獅子頭を作る工程に関わっている職人としては、桐の木を専門に扱う材木屋さんに材木を探してもらい、そして彫り師である知田工房がその木を彫り、キセルなどを作る飾り職人が目と歯に金属を入れ、彫りを仕上げてから漆塗り職人(仏壇屋さんの場合が多い)に漆を塗ってもらい、鉄鋼所に金属のジャラジャラ鳴る部品をつけてもらい、鹿の皮を貼る職人に本来的には頼むことがあるが知田さんが貼ることもある。また、日本髪を結う職人さんに獅子頭の髪の毛を頼む。獅子頭の形を決めるときは、古いものを復元という形が一番多いが、本当の新規の場合はオリジナルの獅子を彫る場合もある。仕上がった時の睨みが大事で「怖いと泣かれるのが嬉しい」とのこと。

獅子舞文化のこれから、ジュエリーからメタバースまで

大芽さんは知田工房での仕事は3年目。小さい頃から祖父や父の仕事を見てきたので、ゆくゆくはこの仕事をするんだろうなと思って仕事をしてきた。獅子頭づくりを学び始めたのが高校で工業科に進んでから。芸術系の大学を出て、仏像を作る工房に弟子入り。今では獅子頭のみ彫る仕事を知田工房で行っている。週5.6日獅子頭を彫る生活を送っている。清雲さんから学ぶことが基本で、自分の色を出していくことはまだ考えていない。獅子頭づくりを学ぶため最初にするのが、道具の使い方、研ぎ方とのこと。そこから一人前の獅子頭職人になる。

大芽さんは現在28歳で、若い立場から獅子舞文化を見ている。鶴来のほうらい祭りで獅子舞の担い手もしていて、獅子舞が好きな祭りの人は情熱を持っているという。獅子舞を舞う人でありながら、獅子頭を作る人でもある。そのことで、「持っていてしんどい」などの体感があるため、舞手の気持ちで作れるという。

獅子頭のジュエリー(ピアス)をクラファンで販売した話を伺った。コロナ禍では過去にいただいていた注文をこなすだけで、後はご飯食べてみたいな生活をしていた。コロナ禍で仕事がない時に、面白い取り組みをしたかった」という。清雲さんも「獅子舞は男の文化だから、女性にも楽しんでもらいたいという想いがあった」と話す。実際に支援者数が47名、総額約60万円と大好評で、女性がやはり多かったが年齢は様々だったとのこと。まずはお正月に付けられるようにというイメージで開発を進めたが、とりわけ和服に合っていて、いつでも使えるようなデザインになったとのこと。今では工房でも販売している。獅子舞文化の市場を大きく広げるような活動であった。

また、メタバース(仮想空間)にも取り組まれている。知田工房の内部空間を360度3Dでデータ化して、世界中どこからでも工房見学ができるという体験を作っている。そして獅子頭の構造も3Dでデータ化して、それを可視化してネット上で見られるような取り組みも進めておられる。獅子舞文化の新しい可能性として、新しいテクノロジーによって、獅子舞文化をより現代的に受け継ぐことにもなるのかもしれない。

眠っている獅子頭を展示

獅子頭展示は10時から16時までの開催した。こちらは大聖寺地区の20町にご協力いただき、22頭の獅子頭を展示させていただくことができた。その多くは普段、祭りに登場しない眠っている獅子頭たちだ。改めて協力してくださった町の皆様に感謝申し上げる。

Special thanks
大聖寺神明町
大聖寺五軒町
大聖寺大新道
大聖寺菅生町
大聖寺鷹匠
大聖寺相生町
大聖寺中新道
大聖寺山田鍛冶町
大聖寺鷹匠
大聖寺関栄
大聖寺本町
大聖寺法華坊町
大聖寺錦町
大聖寺一本橋
大聖寺畑町
大聖寺番場町
大聖寺八間道
大聖寺田原町
大聖寺新町
大聖寺弓町

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