【2021年9~11月】石川県加賀市 獅子舞取材 南郷町・山代温泉20区(追加)

10月7日

14:00~ 南郷町

青年団の三村真輝さん(36)にお話を伺った。同行は山口美幸さん。南郷町には獅子頭が2つあり、古いものは昭和42年3月に南郷支部長の加端克さんが新調したと獅子頭の箱に書かれている。一方で、新しいものは、昭和61年8月に石川県鶴来の知田清雲さんが彫り、富山県井波の新敷晃仙さんが塗ったと獅子頭の裏に表記がある。どちらも似たようなデザインで、形や色が変わっていない。現在、新しい獅子頭の方の塗り直しを検討中だ。蚊帳は昔、水色のものを使っていたが、今では緑色のものを使っている。

現在、青年団は約10名が所属しており、最年少は21~2歳だ。2~3人は金沢市など市外に住んでいる。昔は25歳くらいに青年団を卒業していたが、(三村さんが青年団に入った)20年前ごろは40歳くらいの人も所属しており、獅子舞を教えてくれた。この時は人手不足だった。また、昔、獅子の蚊帳の真ん中に入る「腹わた」の役割は、青年団入りたての人に任され、中学生や高校生がやる時もあったが、一旦部活に専念するために青年団を離れるという場合もあった。舞い方は棒振りと南郷獅子の2種類。昔から、棒振りは小学5年生2人で、いない場合は小学校3年生くらいの人がやっていた時もある。しかし、10年くらい前に既に棒振りは無くなっており、夏の暑さや子供の少なさなどを背景として実施が困難になっていった。

獅子舞の祭りはいつも8月25日に行っていたが、現在はその前後の土日に行っている。春祭りの獅子舞は3月の2週目の土日にやる。春祭りはもともと棒振りがなく、夏には棒振りをしていたが、棒振りがなくなったので夏の祭りの方でも同じ舞い方をするようになった。棒振りをしていた時は夏の祭りの初日のみ行われ、「コンコラコン」という名前のものをやっていた。今では「南郷獅子」という舞い方しか行われていない。南郷獅子は太鼓でドンと鳴って獅子が起こされて、頭を上下に振ったり、「ガタイチガンガン」という太鼓の音ともに獅子頭を持っている人がジャンプをするという場面がある。「獅子の鼻の穴から太鼓を見ろ」とよく言われてきた。太鼓を常に見て、その音に操られているように舞う。獅子の歯の部分は壊れそうだったので口を開かないように修理をした。獅子を噛ませるようなパートが来たら大きく音を立てることはなく、獅子の持ち手を引くようにしてぐるりと回す。希望があれば特別に棒振りをするということはあるが、基本はこの南郷獅子のみを舞う。太鼓2人、獅子3人(昭和61年ごろは4人?)で実施する。

祭りは7時半に神社で奉納の舞いをしてから、区長、氏子を回る。その後、西組、東組、中組、六松組という4つの班を回るが、夏は西組から春は六松組から回るということが決まっている。空き家や喪中の家では舞わないが、喪中の家でも希望があれば回る。ご祝儀は2~3000円くらいのところもあるが様々で、ご祝儀によって舞い方を変えるということはしない。初日の祭りが終わるのは夕方17時前。次の日は朝8時くらいに始め、15時くらいに終わる。それから櫓を建てて少し休んでから輪踊りを実施する。祭り全体を通して、年代は違うけど、みんなで集まるのは楽しいと感じている。

昨年、下河崎町がコロナ禍でも獅子舞をしていて、「自分たちもやりたい」と思い、今年の春夏と獅子舞を実施した。新型コロナウイルス流行の期間に入ってから練習はできていないが、それ以前は2週間くらいの練習期間を経て本番に挑んでいた。コロナ禍で獅子舞を実施できたのは、対策をしっかりして、区長さんにも許可を取って、回覧板で獅子舞を舞っても良ければ○をつけるという紙を回して許可を取った上で舞ったから。どこかで一箇所で舞うことも考えたが、それでは密になるため最終的にこの形となった。蚊帳の中の人含め皆マスクをつけ、掛け声をしないというところまで徹底した。

ps. 南郷町の獅子は2013年にゆげ街道ができた時に、山中温泉でCMを撮るということで、5~6地域くらいで獅子舞をやっている人が集められた。その時に出会ったおじさんに本当かわからないが、「塩屋から南郷に伝えられたものだ」ということを聞いた。

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16:30~ 山代温泉20区

青年団を務めておられた北市文男さんとそのご家族にお話を伺った。獅子舞を運営しているのは「にぃまるかい」である。昔から獅子舞を始める年齢は様々でよくわからないが、40歳くらいで卒業する。昔は春と秋で獅子舞を実施した。3月16日の春祭りの日に獅子舞を舞っていたが、それは固定日だったので、人が集まらなくなって約30年前には既に実施しなくなっていた。9月15日くらいの平日にも獅子舞を行っていたが、かなり昔にお盆の方が人が集まるということで時期をずらした。現在、お盆の8月16日のみ行っている。

暑い時期であるが、蚊帳の中の人含め、全員が法被を着る。10年前までは160軒くらいの家を回っていたが、現在はもう少し家が増えたので回る軒数は増えたと思われる。

祭りの当日は市之瀬神社で6時から始まり、区長か役員かなどは関係なしに、そこから決められたルートを回る。お昼は公民館で食べる。途中、町内を回るのを中断して、15時に神社で奉納の獅子をやって、それからまた町内まわりを再開して、最終的には17時ごろに町内を回りきる。ご祝儀の金額はピンキリで、農家さんは高めに出してもらえる場合も多い。ご祝儀がもらえないところでも、獅子舞を舞う。舞いの種類は1種類で、ゆっくりとした舞いを行い、獅子と太鼓が登場する。獅子の中は4人、太鼓は2人で行う。結構練習はゆるくて、7月の終わりから2週間くらいが練習の期間だ。