【2019年4月】石川県加賀市獅子舞取材 塩浜町・大聖寺桜まつり

 
2019年4月13日

獅子舞の祭り「大聖寺桜祭り」に向けたしめ縄づくり

加賀市大聖寺で行われる、桜祭り(獅子舞が披露されるお祭り)の準備のお手伝いをして来ました。まずは、しめ縄を道端の家と道路の間に張っていく作業をします。これは神輿が通る神の道を俗世界と分ける「結界」というものを作るためです。自分の家の前の結界は自分で作るのが基本です。藁と紙とを交互に取り付けて行く作業をする中で、近所の人との交流も自然に生まれます。 

激しい退治型の獅子舞!塩浜町

青年団の副団長を務める浅井さんのお話

次は獅子舞のお話を伺うのと、撮影をさせてもらうために塩浜町へ!青年団の副団長をしている浅井さんにお会いして来ました。塩浜町の獅子舞は暴れ獅子で、獅子舞を退治する型の獅子舞です。獅子を退治する役の棒振りは薙刀と、火に見立てた赤い布を巻きつける棒の2種類を用いて行うのだとか。海側の地域の特徴としては、やはり激しい獅子舞であるというのがポイントです。荒々しい海を鎮めるなどの意味合いがあるのでしょう。あまりの激しさから、耳は取れてしまうから最初からつけずに、軽めの獅子頭を持って踊るのだそうです(僕も下の写真のように、踊り方を教えてもらいました)。後継者不足で、団員数は9名ほど。本番の9/14.15に向けて練習を行うようです。もっともっとこの地域の獅子舞の魅力を伝え、後継者が増えるように頑張ろうと決意を新たにしました。


ps. 移住定住のサポートをしているぶなの森の山田さんもこのプロジェクトに興味を持って一緒について来て下さいました!獅子舞の各団体がどう工夫して、人員不足などの課題を乗り越えて来たのか、展示の時に見せられると良さそうということなど、様々な面白いアイデアまでいただき感謝です!今後巻き込んでいくメンバーも増えそうで、これからがさらに楽しみになりました。(こちらはデザイナーの鮒池さんのご紹介で取材が実現)

 

2019年4月14日

大聖寺桜祭り当日

失われゆく危機感の中に見える発信の重要性

石川県加賀市で行われた大聖寺桜祭りを観て来ました!午前中は、獅子舞、午後はお神輿と一日中楽しめるお祭りです。

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やっぱり、動いているものを撮影するのは、とても難しいです。それでもなんとか良い写真をいくつか撮ることができました。大聖寺錦町のらくやき体験工房を営まれている荒木さんに案内していただいたこともあり、合計で約8地区も獅子舞を見学することができました!本当に出会いに感謝です。
大聖寺錦町の獅子舞に関する情報はこちら。 >【2019年2月】石川県加賀市・獅子舞の写真撮影まとめ

親子孫3代で獅子舞の踊り手を務めるという地域愛

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らくやき工房の荒木さんは近年、親子3代で踊り手を務めたことがあるようで、その時のことを話してくださいました。なんと子供さんが上海から踊りのために駆けつけ、親子3代が実現したんだとか。会場は大いに盛り上がり、拍手喝采だったようです。本当に地域を愛する気持ちがないとなかなかできないことで、とてもすごいエピソードだと感じました。
だんだん年をとってくると、神様に近いようなものが山から降りてくるのを感じられるようになるともおっしゃっていました。土地に感謝する気持ちが年々芽生え、若い頃とは全然違う見方ができるようになったそうです。
今の時代、土地に対する愛着というものは年々薄れつつあります。そして、僕のように旅をしながら生活をしている人間もいて、複数の土地を拠点にしている人も多いです。インターネットの発達で情報が溢れすぎていて大事なものを見失いがちになることもあります。そのようなライフスタイルの中で、大事にしたいひと、もの、ことに対する愛を持っている人は素直にとても美しいです。荒木さんの目はとても生き生きしていて、僕もそういう気持ちを大事にしようと改めて実感しました。

 

失われゆく危機感の中から生まれた感情を、どう読み解くかが求められている

この地域愛の背景、逆説的に言えば、インターネット世代の台頭で個人間の結びつきが強くなり、失われゆく危機感の中から生まれた感情なのかもしれないとも思いました。僕は「古民家鑑定士」という資格を持っていますが、日本の伝統建築について見直されるようになったのは、西洋建築の台頭が契機となっています。それと同じ現象が、獅子舞の進退を巡るせめぎ合い(地域間コミュニティ優位と個人間コミュニティ優位の争い)にも生じているという可能性は高いでしょう。
実際、獅子舞は地域の結びつきを強くする役割をになってきたところがあるのは確かです(祭りの役割についてはこちら)。しかし、踊り手などの担い手が不足していて、近年獅子舞の実施が困難になっている自治会も多く、地域の結びつきが弱くなっているのも事実。そんな中で、僕らはなぜ獅子舞が衰退しているのかと、なぜ必要とされているのかをもう一度見つめる必要があるでしょう
衰退している理由は、「続ける意味というのがわかりにくいから」「楽しみが他にあるから」「実際踊ってみると疲れるから」など様々です。一方で、必要としている理由も「地域の繋がりが希薄だから」「上下関係を学べるから」「地域を大事にする心が育まれるから」など、様々に存在するといえるでしょう。
そう考えると、観察者であり発信者としての僕の役割は、失われゆく危機感に目を向けて、そこに複雑に絡み合う紐を解いて、考え抜いた先の選択肢を選びとっていただくことなのかもしれません。その先に情報過多社会において、迷いのない生き生きした目をもった愛を知る次世代がどれだけ増やせるか、という視点がとても重要なのかもしれません。獅子舞という文化に目を向けることは、実は誰にでも本質的に関わりうる命題に目を向けること。これからも、情報発信の質を高めていけるようにブログを更新していきます。

 

2019年4月15日

大聖寺桜祭り2日目

様々なところから担い手が集まる、中町の獅子舞

中町の獅子舞は午前8:00ごろに始まり、午前10:00ごろに終わりました。青年団全員が太鼓や踊り手などの全ての役職をこなせるようで、皆器用だな!!!と感動。団員約10名ほどで各家を回っていると、ご近所の方々も見学でぞろぞろ集まって来て、獅子舞に関心ある人が多い!という印象を持ちました。


この青年団は20歳前後の人で構成されており、若い人ばかり。他の地域に住んでいる人が踊り手になることに対しても寛容であるため、踊り手の数も比較的多いという印象を持ちました。(青年団の吉本さんに御誘いいただき、撮影が実現。僕にも以前、獅子舞の踊り手のバイトしてみる?と声をかけてくださっていたのですが、今回は練習に参加できないため撮影に集中することにしました。)


このように、中町をはじめ大聖寺では、獅子舞を地域として盛り上げていくことに積極的な人が多く、よその人に対しても寛容であることがわかりました。

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他の自治会の獅子舞にも、たくさん出会うことができました。

こちらは、荒町の獅子舞です。

ファミマ×獅子舞、新しい組み合わせ(笑)

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あとは、大行列のお神輿を追いかけたり、屋台に行ったりするのも、なかなか楽しかったです。

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大聖寺桜祭りに参加して考えたことまとめ

個人的な意見にはなりますが、大聖寺桜祭りの面白さは、

8町の獅子舞が同時にいろんな道端で暴れまわっている!!!

というところです。

獅子舞の気持ちはこんな感じでしょうか(笑)

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車はたくさん通っていますが、道路の半分くらいまで獅子舞の胴体がはみ出ていて歩行者天国的な寛容さがあります。そして獅子舞に加え、午後からはお神輿も登場して、カオスなところがまた面白いと感じました。


うろちょろ町を散策してみて、宝探しならぬ「獅子舞探し」に明け暮れるというのも一種の観光として面白いです。獅子舞を探す途中で、こんな良さげなお店あったんだ!などと町の魅力に気づけると感じました。


興味を持った方は、来年ぜひ来ましょう。

おしまい。