インドネシア 夜行バス物語 バリ島-スラバヤ、12時間立ちっぱなし、食べてばっかり、船にまで乗っちゃう!驚きの珍道中の一部始終をお届け

2023年10月8日(日)、僕はインドネシアのバリ島からスラバヤへと夜行バスで向かわねばならなかった。バリ島での民俗芸能調査を終えて、スラバヤでの東ジャワビエンナーレ参加のための2週間の作品制作に向かったのだ。東ジャワビエンナーレでは、3人組の獅子舞ユニット「獅子の歯ブラシ」の作品制作があり、他の2人のメンバーとの合流が控えていた。なんとしてでもスラバヤにつきたいという想いの一方で、やはりローカル感を体感したいという想いもあり安い交通手段としてのバスを選択した。しかし、その道中はヒヤヒヤすることばかりで、大冒険の移動となった。夜行バスの概念がガラガラと崩れ去る非常にかけがえのない冒険でもあった。その一夜の一部始終をここで振り返り、「夜行バス物語」として、皆様にお届けしたい。

バスがなぜか来なかった

まずはバリ島からスラバヤまでの夜行バスについて、インターネットで調べてみた。どうやら18時以降、夜行バスがいくつかは知っているようだ。そこで念のためかなりの余裕を持って、13時にウブンバスターミナルに行ってみた。警備員の方によれば、17時に来ればスラバヤまでの直行バスに乗れるとのこと。もうバスが来るとわかったので、ひとまずは安心である。

しかし、カフェなどで時間を潰したのちに17時に行ってみると、違う警備員の方がいて「今日は直行バスがない」という。「え!まさか、今日スラバヤ行けないの!?だまされた!?」などと思いながら、人づたいに確認しまくると、最終便があと1時間か2時間後に来ることが判明。ヒヤヒヤしたが、なんとかスラバヤには行けそうである。

そこで安全策を取るべく「ずっと座って待ってます」というと、30分くらいして違う人が来て、「おれのオフィスについてこい」という。これ「バイクタクシー代請求されるやつか?」怪しげに思っていると、バス会社のスタッフの実家の食堂か何かに連れていかれた。今にも壊れそうな木製ベンチに、紳士がどうぞと差し伸べるような感じでここに座ってくださいと促される。幸いなことに、お金は請求されず、ここにバスが到着するということらしい。

隣のおっちゃんのタバコが止まず、30受動喫煙に晒されながら座っていると、バスがやっと到着した。

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押し込まれる乗客、立ちっぱなしの12時間

間一髪でバスに乗れてよかった。しかし、ここからが危機の始まりだったのだ。まずはSIMカードが30日間のものを買ったはずなのに、6日で使えなくなっており、ネットが繋がらない不安をかかえながら、Wi-Fiのない夜行バスに乗り込んだ。もう逃げることもできない、情報が遮断された状態で僕は夜行バスの車内にパックされたのだ。

バスの中は赤い怪しげな光に包み込まれており、ナイトクラブのような雰囲気さえある。夜行バスには席と席の間にダンボールの四角い物を持ち込んで座る人や立ち客がいる。立ち客は絶対に眠れるわけがない!!と思ったら途中から席と席の隙間の床で寝始めた人もいた。汚いとかそういうことは全く気にしていない。一度も話したことがないのに、ぼくの肩によっかかりながら眠り始めた人もいる。疲れや安全性を全く気にしておらず、とにかくめちゃくちゃだ。当然のようにシートベルトはない。安全性は確保されていないのだ。

夜行バスには食事がついているらしい。途中で食事場所に辿り着き、そこで皆バスを降りた。食事は盛り放題でセルフでとっていく方式だったので、たくさんたらふく食べられた。飲み物はあまったるい紅茶しかない。食事場所のトイレに行くと、トイレはある種の風呂場だったのかもしれない。なぜかバシャバシャと音が聞こえる。あとでトイレの形状を見て判断するに、あれは尻を洗う音だったと思われる。トイレには当然のごとく紙がない。トイレに入るのにお金を払わないといけないらしく、2000ルピー取られるところをなぜかお釣りがないからと3000ルピーとられる。夜行バス客に対して、飲食店側はとことんお金儲けをしようとしてくるのだ。

船に乗り込む夜行バス

夜行バスは途中船に乗って海を渡った。大型船に大型バスが入っていく光景はなかなかにシュールだった。どうやらバスを降りて、船の座席に座っても良いらしい。座席に座り海を眺めながらゆっくりした航海を楽しんでいると、旅路はいろいろなことがあるとつくづく思う。これから僕はどう生きようか?などと将来のことに想いが向く。進んでいるのかそうでないのかよくわからないような船の速度が旅というそのものを形容しているような気がする。それにしても、船の進む速度があまりにも遅すぎる。進んでいるのか、水面を確認しないとわからないレベルである。

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超眠い中での朝食

午前4時ごろ、突然皆起き出し2軒目のレストランに入った。朝食が早すぎるだろと思ったが、皆朝から胃腸が元気らしい。そこで夜よりもさらに盛りだくさんな食べ放題が始まった。今回は野菜をモリモリ食べられたので満足である。トイレが有料か無料かよくわからなかった。飲み物もどちらなのかよくわからなかった。とりあえず、コーヒーを頼んだら超甘すぎるのが出てきた。そして最後に、朝食代とコーヒー代で、20000ルピア請求されることとなる。

おそらく夜ご飯代はバス代に含まれていたが、朝食代は含まれていないらしい。ややこしいシステムだ。もしかすると僕1人外国人だから、勝手に請求されたのかな?と思っていたがその支払いタイミングも特にないようで、実態がよくわからない。英語が全く喋れない現地人が、指でトゥーと示してきたから20000ルピアかと思ったが、実際にいくらだったのだろうか。日本円にして200円。まあしょうがないかと払っておく。

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ご飯をお皿に盛っていたときに、屋根に巨石がどかーんと乗ったかのような大きな音がした。「なんかの動物が来たんだ」と食堂のおばちゃんたちが騒いでいた。あれはなんの動物だったのだろうか、猫よりも絶対に体が大きい生き物だと思った。

謎な場所に降り立った

40分経ち食堂をあとにして、皆バスに乗り込んだ。バスが発車しようとしたら、縦横にガタガタ振れ出して危うく暴走するところだった。その恐怖体験ののち、その場をあとにした。朝5時前から夜行バスに爆音の音楽がかかり始めた。JPOP、伝統音楽、演歌のような幅広いジャンルの曲が流された。正直寝れるわけががなく、乗客は皆ぺちゃくちゃ話し出した。皆朝早いのが習慣化されているのだろうか。もしかすると、夜明けとともに朝が始まるイメージなのかもしれない。人間は原始より長い間、このようなリズムで暮らしてきたのだろうと思いを馳せる。

その後、朝6時ごろにバスはスラバヤに到着した。やっと念願のスラバヤに到着したのだ。しかし、案の定wifiがなく、SIMカードも機能しない。そこで、スラバヤのどこに到着したのが全くわからなかった。そこで、バスに乗っていた家族一家が話しかけてくれて、携帯でいろいろ調べてくれた上に、朝食までご馳走になった。また朝食を食べるのかとも思ったが、非常に親切な人でサービス精神が旺盛な方々だと思った。最後はgojeckを読んでくれて、僕を送り出してくれた。そして僕はスラバヤの滞在先へと向かうことができた。f:id:ina-tabi:20231009182630j:image
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ここまでの話をまとめると、インドネシアの夜行バスは、単なる寝るだけのバスではなかった。食事がついていたり、大合唱が始まったり、船に乗ったりという風に、移動も全部楽しんじゃおうという空気感が満載だった。夜行バスで移動するということは決して手軽ではなく、時間通りに到着する保証もない。しかし、それだけ気合を入れて臨めば、それだけ面白い体験ができる。旅らしい旅をしている。そういう実感を得られた一夜であった。