【160日目】建築に向いている人とは?〜大阪の事務所「dot architects」でのインターンを振り返る〜

2018年9月21日から2週間、大阪の北加賀屋というところにある

dot-architects 」という事務所でインターンシップをしていた。

建築事務所でのインターンシップでは、今回がこれで2回目!

今回は、島根の時から比べるとまた全然違うインターンだったので、

その違いにも触れながら感じたことを書いていく。

 

前回のブログはこちら。

ina-tabi.hatenablog.com

 

 

「dot architects」とは?

一言で言えば、「建築の界隈感が垣間見れる、

とっても素敵な活動をされている建築事務所だ。

 家成俊勝さん、赤代武志さんによって共同設立されたのが2004年。

それから、建築の設計にとどまらず、現場施工、空間デザイン、アートプロジェクトなど様々なプロジェクトを展開されている。

僕がこの事務所に惹かれたのは、まず共同代表の家成さんが法学部出身でありながら、卒業後建築の世界に入ったのが今の自分と重なり、何か今後のヒントになるのではないかという単純な想いだった。

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体験させていただいた業務は、

①古道具販売のwebページの写真撮影

使われなくなった家具の意味を問い直し、買い手がそれを再び意味付けて購入するという手法だ。例えば、椅子が日本で普及していなかった時代に高いところのものを取るのに使われていた踏み台は、今では椅子などで代用できてしまう。だから、モノの機能を見直す必要があり、昔の踏み台としてではなく、椅子として使おう!とかそういう発想になるのである。無駄なものを排除して買い手が使うイメージを連想させられるようにwebページの写真を撮影するという作業はとても面白さがあった。

僕はこれを実際にやってみたときに、素材性の転換を発想せざるを得なかった。例えば、木材は「生き物を加工する」ということであり、木材それぞれに個性が存在する。一方で人工的なプラスチックには大量生産で無個性的な意味合いが強い。それぞれに対する素材性を交換すれば、家具作りの可能性が広がる。

このように意味づけを変えることによって、ものづくりの面白さというのは深みが出て、唯一無二のものを作りうるのだ。そういう脈々と流れる独自の血流を垣間見たことは、僕にとってインターン中で最も面白い事件と言えるだろう。

 

ちなみに、この古道具販売スペースにある雑誌は、サッカー選手のインタビューではなく、サッカーの審判へのインタビューが掲載されている。サッカーというものを角度を変えて審判の視点から見るとどうなるかを追求しているのだ。こういう視点の転換を大事にしていくことで新しいものや考え方が生まれていくのだ。

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他にも様々な業務を経験した。

 

②模型作り

よくありがちな住宅模型から、舞台の装飾系の模型まで、さまざまな模型を作成した。

やはり、手がける物件の種類が多ければ多いほど、多様な模型作りをさせてもらえるので、とても面白かった。ミリ単位の世界なので、相変わらず手元にシビアな世界だと感じた。

 

③家具作り

木材でベンチ作りを行った。お祭りに使うものだったり、古民家の軒先に使うものだったり、目的は様々だった。「座りたくなるベンチ」が作れたかどうかを確認するために、試しに近くのバス停の横に置いてみるか!(笑)などという会話は、平安貴族が夜這いで相手を垣間見るかのごとく、脇の裏がくすぐったくなるような観察者の視点を呼び起こした。

 

④設計図面作り

飲食店の空間の家具の配置などをメインに図面を描いた。椅子の形、机の形、それぞれの配置を、色々な雑誌を参考にジタバタと図面上でこねくり回す作業は、感覚がピタッとあった瞬間の痛快さを誘導した。

 

⑤実測

使われていない空き家部分の図面作成のため実測を行なった。お化け屋敷のような建物だったので寒気がしてヤバかったが、探検をしているような面白さがあった。

 

⑥アートの展示づくり

 使っていない倉庫を巨大なアート作品の保管場所として活用していて、一年に一回のギャラリーとしての公開も行なっている。今回は、アート作品の照明の付け替えなどを行なった。スイッチを押すと、証明がチカチカ光って、爆音が鳴らされ、家が踊り出すみたいな作品だった。めちゃくちゃなあり得ない出来事に出くわしたような錯覚に陥ったが、アートはぶっ飛んでた方が面白いし元気がもらえるものだ。

 

仕事内容を見ればわかるように、

建築事務所としては革新的なことをされていて、

なおかつ網羅的に建築の仕事に取り組んでいる感じがする。

印象に残っているのは2:8という比率。

2割は独自の観点、8割は一般的な観点を仕事に組み込むことで、

革新的なことをやっていても絶妙なバランス感を保っている。

それが、お客さんに受け入れてもらいやすい仕事作りにつながっているようだ。

 

 文系から見た建築の世界!「モノへのこだわり」が肝。

 インターン生の送別会で、飲み会をした時の話。映画の話で盛り上がった。dot architectsの事務所の皆さんは映画を見る時、プロポーション(画面の構成要素)に着目するようだ。例えば、映画に使われている小物、立ち位置、動きといった画面の一つ一つの要素に着目して、あの場面は美しかったとか、美しくなかったとかそういうことを議論して楽しむのである。必ずといっていいほど、文系学生はストーリーに着目するのでそこが全く対照的である。自分は今まで映画を見る時に、ここで想像した展開になったとか、ここで予想を裏切って来たとかそういう楽しみ方をしていたので、ものすごくびっくりした。

 

この違いはとても重要なことで、

建築という世界の「最も根底にある考え方」を顕著に表していると思う。

それは端的に表すとすれば、

手元や身の回りに対するこだわり感

モノに対する強烈な執着

であると感じた。

 

カッターの持ち方、切り方に感覚を研ぎ澄ませ、1ミリも妥協許さない正確さがあった。100分の1の図面を30分の1の図面にするとか設計図面の縮尺変換も早いし、どう計算したら効率が良いかも追求している。そして、このデザインは良いけど、このデザインは良くない!とか、そういうはっきりとした意見を持っている。だから、共同作業をする時は必ずといっていいほどそのこだわりがぶつかり合うのでヒヤヒヤする時もあるのだが、それが建築をやる上では寝食忘れるほど熱中できる情熱にもつながるのだと思った。

 

この事実に気付いた時、

自分は建築をストレートにやる人間ではないと思った。

数字の計算をしていると頭がこんがらがるし、正確に模型を切り取ろうとしてもすぐにずれてしまってやり直しになる。そして、最も欠陥的なのが

モノに対する執着がない

ということである。建築の世界に入ってみてわかったことだが、建築の世界の人に比べればモノに対する執着が少ないと感じた。知らない自分に気づくことができた。自分が古民家鑑定士を取って、古民家活用をして、その先にある建築との関わり方としての可能性を半年間探って来た中で、これはかなり衝撃的だった。モノを作っていると、その作り手が考えていることとか、生き方とか、概念の方に意識がいってしまい、手元のモノに対する意識が飛んでしまうのである。やはり、僕はどちらかといえば、建築の人を巻き込んで建築という箱の中で何かを仕掛けていったり、建築という世界を客観的に見て伝えていったりする立場の人間であることに気づくことができた。同時に、ブログで経験を積んで来た文章、たまに描いている絵、空き家活用の中で取り組んで来たコミュニティデザインなどをフルに活かせる環境を模索していきたい。

 

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 建築界隈って広く見ればいろんな仕事ある。

 

実質と物質の世界。

目の前のモノに対して、2つの捉え方をする人がいる。

目の前のモノに対して抽象概念やイメージを想起する実質的な捉え方をする人、モノを見たままのモノとして捉える物質的な捉え方をする人の2パターンだ。

前者は頭で完結するのが好きな人、後者は手を動かすのが好きな人とも似ている。

文系学生で多いのは前者、建築学生で多いのは後者とも言えるかもしれない。

自分はどちらかというと前者に近くて、後者は極力少なくしたい人間だ。

ただ前者の特徴として、現場視点が足りないと視野狭窄になるので、 手を動かす後者のようなことも必要になる。または、パートナーで補い合う必要がある。

自分には相互をどう両立するのかが考えられたことが今回の最大の収穫でもあった。

 

まとめ・演繹と帰納から見るキャリア

建築生は高専出身者も多く、早くからその世界に飛び込んだ人も多い。

目の前のことに対して取り組み、技術を身につけ、 仕事をつくる。

一方で、文系学生は、政治、法律、経済など制度とか概念的な広い視野を学んでから具体的な仕事におとしこんでいく場合が多い。

僕は、文系学生として法律や政治を大学で学んで、今具体的な仕事におとしこんでいく段階である。

文系と建築との接点としてコミュニティデザインや空間のデザインという領域、包括的に伝えて発信するメディア関連の領域が自分にとって近いのかもしれない。

このような気づきを与えてくださったdot architectsの皆さん本当にありがとうございました。これからも旅を続けて、建築との関わり方や進路について考えていこうと思います。