【147日目】島根県出雲市にて!文系出身者が建築に飛び込んで見えたもの

 

僕は今24歳で昨年の3月に法律系の大学を卒業した。

しかし、建築が学びたくなった。

しかも、建築の大学をすっ飛ばして無謀にも、

島根県出雲市一級建築士事務所「江角アトリエ」

インターンに3週間来てしまったのだ。

 

なぜ僕はこんなことをしたのか?

遡ること、4年前。

僕は大学2年生だった。

自然が好きで田舎ばかり旅行していた僕は、

ある時岐阜県の村人がおじさん2人しかいないという集落を訪れた。

そして、そのうち1人のおじさんの家に泊まった。

それが僕の「古民家」との最初の出会いだった。

 

囲炉裏を囲み、村の人々などと一晩中語り明かした僕は思った。

古民家は人と人とを繋ぐ最高の空間だ!!!

楽しいひと時を過ごした僕は、日本中の古民家を泊まり歩くようになった。

そして、「古民家鑑定士」という資格をとったり、

法学部なのになぜか「古民家」に関する卒業論文を書いたりした後、

大学を卒業した。

 

大学卒業後は、縁あって東京都日野市の古民家を借りて住み始め、

1年間ゲストハウスやシェアハウス、イベントスペースの運営を行なった。

その中で古民家の魅力を再確認するとともに、

自然に近くて有機的で、人が集まる空間に対して関心を持ち、

建築を学びたくなった。

そのほかにも多くのことが重なった。

①直島の建築にめちゃくちゃ感動した。

②自分の家は自分で建てたいというよくわからない鬼気迫る想いがある。

③建築家の方とお話ししていると話が弾む。

などの経緯から建築を学びたくなり、まず現場をみたい!と考えて、

古民家や木造建築で有名な1級建築士事務所「江角アトリエ」

でお世話になることになった。

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実際のインターンの内容はどんなことをしたのか?

同じインターン生たちと一緒に、

おもに4つの業務を担当した。

 

①たたき

「たたき」とはコンクリートで作った土間のことである。門の前後の土を掘り返し、掘り返した土をふるいにかけ石を取り除く。サラサラになった土に石灰を1対2の割合で加え、にがりを少々加えて混ぜる。水を加えて、団子ができるまで硬くなったら、あらかじめ掘っておいたところに少しずつ生成物を撒いていく。その上から、タコという木製の道具、またはたたき板とハンマーを用いて、固めていく。最後に小さな石を飾りとして撒いて、1ヶ月ほど待てば完成だ。

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僕にとって、たたきとは「未知の作業」だった。

どこか小さい頃の泥んこ遊びを想わせ、心躍らせるものがある。

しかし、それは単なる遊びにとどまらず、

何十年もの歳月を蓄積するであろう「責任」と「機能性」を問うものであった。

配合する原材料の分量を正確に適度に投下して固め、塗り込むのだ。

単純に思えて実は、現実の宇宙の法則を理解するかのごとく緻密な作業なのである。

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②障子張り

障子張りは、古い障子を水を含ませた雑巾で柔らかくしながら、障子の骨の部分(桟や組子)に残りカスがつかないように剥ぎ取る。水がついて湿気っているので、半日乾かす。そのあと完全に乾いたのが確認できてから、障子の骨の部分(桟や組子)に障子用ののりをつけて、まだ切っていない障子紙をその上からかぶせる。完全に乾いてから、ハサミやカッターではみ出し部分を切り取って微調整し、完成する。

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繊細さの意味を噛み締めた。

障子紙を糊付けすると今にも破れそうなか弱い存在になる。

時にカッターを入れれば紙はたちまち敗れ去る。

時に紙の色はのりの色を透過してしまう。

そんな繊細な素材を見ていると建築という領域の

手元に対する解像度の高さを思い知らされる。

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③設計

設計図面を作るには、まず現地の現状を確認する。周りの土地利用で隣に家があるとか、田んぼがあるとか、崖があるとか、近くの民家のペットの鳴き声が聞こえるとか、肌感をまず掴んでおく。それから、住み手の希望条件を確認してコンセプトを決めて、土地に対して適応する形と面積の家を考える。それを図面におこしていく作業だ。上から建物を見たときの内部を表す平面図、建物の外観のデザインを表す立面図、見やすい部分で切断したときの内部状況を表す断面図といった主に3種類の図面を作る。イラストや色鉛筆などを用いてわかりやすくする時もある。

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ゼロからイチを生み出すというのは面白い。

土地に命を吹き込むようで、心踊る。

1人1人が自分なりに違うことを考え、図面を創造する。

それぞれのプランの集合を見ていると、

百花繚乱のごとく個性を放ち、

全てが輝いて見えた。

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④模型作り

模型作りは、図面を見てそれを工作して立体的に作り、展示会やお客さんの前で見てもらうための作業である。家の構造などはスチレンボードや木の板を用い、中に配置する家具や人などは画用紙を用いてまず部品を作る。設計図を見てもわからない家具の扉の有無などは実際の写真などを確認して作る。作ったものは、ノリや木工用ボンドで貼り合わせて完成だ。

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定規とカッターとカクカクカクと格闘。

アリよりも小さいのりをちょこっとちょこんと乗せる。

より美しく、より正確に全神経は手元へと集中する。

その集中力と丁寧さは想像を絶するほどの快感があり、

一方で突き詰めればミリ単位の難しさがあった。

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また、土日には周辺の観光地や建築見学に出かけた。

石見銀山

温泉津温泉

出雲大社

・出西窯

荒神谷遺跡

松江城

島根県立美術館

建築を学びながらこれらの建物や街を巡ると新鮮な視点が得られるのでぜひオススメしたい。

 

 

文系の視点から見て建築の世界はどう見えたか?

 

一言で言えば、

目の前のことに対処する感覚が敏感ですごい!!!

と感じた。

 

例えばこのようなエピソードがある。

 建築学生は模型作りで、カッターを定規に当ててからきちんと合わせて板を切り出していたり、のりがはみ出さないようにのりの種類や出し方とか加減をきちんと考えたりしていた。また、椅子とか家具とかも正確な値を測って正確なサイズを模索していた。このことから、しっかりと丁寧に器用に目の前の物事をこなしている印象を持った。

 日常生活でもそんな感じだった。まず料理を作り始める時、コロッケを揚げるにはどのような入れ物で揚げれば一番適切かを考える。そして、コロッケを揚げるにはこの油が一番良いとか、スープはこの順番で野菜を入れると一番火の通りが均等で良いとか小さな細かいことをきちんと考えている。焚き火の時には、このくらいに木を切ってこのように並べると一番良いということを考えている。そして、考えているだけではなく、きちんと意見を言って判断して物事を決めているように思われた。その感覚に圧倒されっぱなしだった。文系的視点でいくと曖昧にしていても成り立ちそうなところを、芸術家っぽく自分のこだわりを持ちながらも、正確に物事をこなそうと模索しているところは最も新鮮に映った。

 

かたやこんなエピソードもあった。

 窓からハチが入ってくるとみんな揃って逃げたり、逃がそうとした。それはゴキブリやその他の虫でも例外ではなかった。その反応の仕方がとても敏感で、なかなかここまで危険察知能力持てるもんかなあと思うこともあった。

 また、食事中ハエが入ってくると、こぞってビニールで捕獲し始めた。ハエにそろーりと近づいてゆっくり袋をかぶせて捕獲して行く姿が、なんとなく模型作りで糊付けしたパーツをくっつける動作に重なって、あの手元が揺らがない感じ一緒じゃん!などと妙に自分の中で納得してしまった。感覚が鋭敏というのがふさわしいのか。

 

世の中いろんな人がいるから建築の人はこうだ!ということは言うことはできないけれど、純粋に僕が建築事務所に来て新鮮だなと感じたことを素直に書いてみた。

 

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まとめ

建築の世界に一歩踏み出して思うこと。

やっぱり家を1から作るってすごく面白い。

だから、もっともっと学んでみたい。

将来どんな形で建築に関わるかなんてわからない。

でも、文系を出て大半の人とは違う道を通って建築と出会ったのだから、

建築を身につけて自分にしかできないことをやりたい。

そう感じた3週間でした。

江角アトリエの社員の皆様、インターンの皆様、

建築の世界から見たら0歳児の僕を暖かく受け入れていただき、

本当にありがとうございました。

またどこかで皆様とお会いできる日を楽しみにしております。

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※今回のブログの内容は、江角アトリエ内HPのインターン生ブログの僕が記事を書いたものと内容が重複します。

 

*筆者プロフィール*

稲村行真(いなむらゆきまさ)

1994年島根県生まれの千葉県育ち。

中央大学法学部卒業後、1年間古民家の管理人を勤めた後、

江角アトリエのインターンに参加。

 

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一級建築士事務所

江角アトリエのHPはこちら。

http://www.esumi-atelier.com/

 

他のインターン生のブログもあります。

http://eatelier.jugem.jp/