オリラジのあっちゃんの本を読んだ。
天才とは、自分を生かせるフィールドを見つけてそこに集中した人間だという。
友達と、新代田の元祖日の丸軒という店に行ってきた。目的は「ユーラシア料理」という謎の料理を食べに行くためだ。店を予約しないと怒られるという前評判があったので、友達に店を予約してもらっておいた。
こちらが、店の外観。
妙に薄暗い。
ぐちゃっと雨に濡れてシワが寄った看板が、どこかディープな雰囲気をそそり、同時に、只者ではない料理が出てくる予感をさせた。
店の中をガチャっとあけるとそこは、誰かの家のようだった。
書斎に散乱する書類。なんでもありなカオスな空間かと思いきや、どうやら好きなものをとにかく集めた結果、自分好みの空間ができていったとのこと。
オーナーはペペアンドレさん。
年齢は不明。髪を振り乱し、太い唇に、大きな顔。圧倒的にインパクトがある雰囲気を醸し出す。他の人の話によると、出身は兵庫らしい。しかし、僕が改めて質問してみたら、出身は岐阜と答えた。一体、何者なのか。
ペペアンドレさんの写真を撮りたいとおもったがその勇気もなく、席に案内される。そこは、薄暗い芸術的な空間だった。安土桃山時代に到来した南蛮文化を表現した模写の絵などが飾られている。
これは、どこかの民族の服だろうか。
飲食店に行くと、必ずトイレに入る。
すごい店は、トイレにその世界観が現れているとつくづく感じるからだ。
トイレで魚を飼っている店、DIYでものすごくおしゃれに改装している店、などなど色々な面白いトイレに遭遇してきた。その度に、飲食店はトイレに世界観が現れるとつくづく感じた。
そして、今回はどうか。。。
「トイレに行きたいんですけど」
とペペアンドレさんに言うと、
「はい、そこで待っててください」
と言われる。
待つこと、3分。トイレが目の前にあるにもかかわらず、なぜかトイレに入れない。中に人が入っている様子もない。
待つこと、5分。もういいか、とトイレに入る。ドアが壊れていて、頑張ってしめる。そこにあったのはちっちゃな便器。面白いトイレだなと思う。
結局、トイレに入っちゃったのに特に怒られず、なんで引き止めたのかなどと不思議に思う。
さて、メニューの注文をする。
一番安いセットメニューで、1人1000円くらいのものを頼む。すると、「そんな安いものは頼まないでください。」と言われる。あれ、メニュー表に書いてあるのに、、と不思議に思う。
それではと、1人2000円のセットメニューを頼む。そしたら、
「はいわかりました。では飲み物はどれにしますか?」と言われたので、
「水をください。」と言うと、
「水なんてものを頼むところではありません。」と言われ、
飲み物を頼まされた。
相当プライドをもって飲食店を経営しているように思える。最初の1000円のセットメニューはもはやダミーなのではないかとさえ思えてきた。1000円のセットメニューを頼む人を断って、店の価値を上げているのではないかという錯覚に陥る。
最初に出てきたのは白ワイン。
どこのどんなワインとも知らないが、鋭い後味に美味さを感じる。
次に出てきたのがターメイヤ。
エジプトの料理で、草のコロッケみたいな感じ。「ユーラシア料理」のはずなのに、いきなり、かつてユーラシア大陸ではなかったエジプトの料理が出てきた。ユーラシア料理とは果たしてなんなのか、謎は深まるばかりだ。
緑色の草はこんな感じ。見た目ではよくわからないが、普通にうまかった。
それから、出てきたのは、ラム肉。
デカデカとした肉が3つ。お2人様用のセットメニューを頼んだのに、肉は3つ。謎すぎるが、肉はとてつもなくうまかった。この赤いタレをつけるとものすごくうまい。
それから、出てきたのがこちらの草がたくさん入ったカレー。食べたこともないカレーに謎は深まるばかり。
それからすぐにナンが出てきた。
これはナンというか、パンのような感じでもあったが、ナンと言われればそうか、とひとまず納得した。
これで全メニューが終わった。
ガツガツ食べた感じでもないが、料理を味わって美味しく食べられた。
食後に、ペペアンドレさんに話しかけてみた。32年もこのお店をやっているという。歳をとるごとに自分好みの空間がわかってきて、自分の好きなものを集めて、この空間を作ったらしい。教授と名乗るお客さんがたくさん出入りするそうで、そういう分野の人にひょうばんのよいお店のようだ(本当に教授かは謎)。
そして、本質をつく質問を1つ投げかけてみた。
「ユーラシア料理ってなんですか?」
すると、ペペアンドレさんは、首を傾げて答えた。
「それが自分でもよくわからないんだ。」と言う。
この非合理的なカオスでよくわからない謎めいた空間がとてつもなく異彩を放っていて、興味をそそる。店を予約してから、店を出るまでが全てエンターテイメントなのかもしれない。ペペアンドレさんにしかできないこと、それがこのお店に現れていると感じた。
さて、ぼくも好きなことを追求して、自分の得意なことを生かせるフィールドで、自分にしかできないことをこれからも追求し続けていこうと決意を新たにして、店を出た。暗い道をトボトボ歩きながら、これからの自分について物思いにふけった。