インドの少数民族「花の民」の3年に1度の祭り「ボノナー」の取材に成功!

こんちには、世界の少数民族の独自の地域コミュニティや、その個性的な文化に興味のあるイナムラです。今回は、2019年10月4~5日にかけて行われていたインドの少数民族「花の民」の3年に1度のお祭り「ボノナー」を取材してきたので、そのことについて書きます。

 

▼「花の民」の方と撮っていただいた

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●なぜ、花の民なのか

どうして、今回僕が花の民を取材しようと思ったかというと、いくつか理由があります。半年前くらいから、旅人数人の数少ないブログを読んで、花の民という民族がインドの奥地に住んでいることを知りました。そのブログによると、花を育てている民族が、頭に花の飾りをつけて生活しており、その華やかさといったら類を見ないというようなことが写真などから読み取れました。現在、僕は「極彩色」や「独自の文化」というのが写真の作品づくりの大きなテーマとなっており、まだ日本人がほとんど訪れたことのない未開の民族のうえに、今年3年に1度の祭りを実施するということで、かなり興味をそそられました。ボノナーの祭りは周囲の村(ガルコン、フンザ)と持ち回りで、花の民がこの祭りを開催する番になるのが、3年に1回だけなのです。

 

花の民の祭りを訪れるのは難しい

花の民が住んでいるのは、インドの北部のヒマラヤの麓、だいたい4000mくらいの高さのところに集落を構えており、人口はおそらく1000人もいないのではないかと思います。日本からだと、インドのニューデリー経由で、ラダックのレーという地域まで飛行機でアクセスできますが、その後が大変です。現地の旅行代理店を通して、花の民のいる「ダー」という名前の村まで入る許可証を取る必要があるのです。しかも、2人以上でないと原則許可が下りず、僕のように1人で入ろうとする場合は、現地ガイドやドライバーを高額で雇う必要があります。そのうえ、最近ではパキスタンとの国境紛争地域で、軍の取り締まりも厳しいとあって本当に許可が下りるのかヒヤヒヤしていました。

そして、村人が1人でも亡くなったら祭りの日程は1~2週間後ろ倒しになり、また、赤ちゃん が村に誕生したら日程は1週間後ろ倒しになるようです。確実にこの祭りを見るためには最低でも2週 間以上の休みを確保せねばなりません。これらの過程が必要なため、日本を出発したのが10月1日で、実際にダーの村についたのが10月4日だったため、かなり時間もお金もかかるなかなか訪れることのできない場所に花の民は住んでいるのです。

 

では、早速どのような過程を辿って、この村を訪れたのか、どのような取材ができたのかをご紹介していきます。

 

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●乗り継ぎのバンコクで八十川さんに会う

バンコク乗り継ぎで、インドのニューデリーに入ったのが、10月2日。途中のバンコクで、50歳くらいの男性・八十川(やそがわ)さんという日本人に出会い、とても興味深いお話を聞いたので触れておく。この方、僕と同じように文章を書いたり、写真を撮ったりしていて、もとは新聞記者だ。手に傷を負っており、これは昔インドのレーをバイクに走っていた時に、盗賊のような人々に銃で狙われた時にできた傷だという。

「!!!!!!」

「僕、今からそこにいくんですけど.....」

というかなり恐怖感を感じる出来事であった。しかし、八十川さんは関西人で話し上手で陽気な方なので、その後は楽しく一緒に2時間ほどお酒を飲んでラオスに向かうというので別れた。

 

●レーの街にたどり着いたのが10月2日

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レーの街はインドの北部に位置する標高3500mくらいの街だ。すでに、富士山くらいの高さがあると思うと、恐ろしい。30分歩いただけで、高山病のような感じで頭がクラクラしてきて、休み休み歩きながら町歩きを楽しんだ。レーの街は一般的なインドのイメージとはまるで異なり、人々は穏やかでとても優しく微笑みかけてくれて、騙されるとか物を盗まれるとか、そういうことは一切なかった。芸術的にも優れており、とりわけ織物や仮面、仏具などがよく見かけられ、チベット仏教特有の僧院やマニ車なども見られた。

 

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路地を一本入ると、このような世にも恐ろしい形相の仏具を販売しているお店などが点在しており、想像を絶する底がない感覚もあり、マーケット巡りはとても楽しい。

 

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そして、ラッキーなことに、10月2日はレーの街でもお祭りがあり、レーの有名な歌手とかが集まって、歌ったり踊ったりしていた。日本のフェスみたいな感覚なのだろうが、結構ゆるくて、声出し練習とか舞台でやっていたり、最初はあまりうまくないけど、後半本領を発揮してくる歌手とかがいて、なかなかゆるさがあって面白いイベントだった。しかも、このフェス入場無料であった。どうやってお金が回っているのかは気になるところで、そういえばレーの外れにあったこじんまりとした遊園地も入場無料だった。(ミッキーをパクったようなキャラの滑り台とかあった)

 

●10月4日にいよいよ花の民の村へ!

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レーの街で許可証が取れたのが、10月3日だった。閑散期ということもあって、旅行者1人のために車を出して、許可証を発行してもらえるような旅行代理店などほぼ皆無で、10軒くらい回って、ようやく1軒だけ承諾してもらえた。それが、「Weatern Tibet Expedition」という会社だった。許可証発行に1550ルピーと、タクシー代で1泊2日換算(ドライバーもダーに宿泊)の8000ルピーで、合計9550ルピーをはらわなくてはならないとのこと。日本円にして約15000円くらい。あとは、ダーの村に到るまでの食費と宿泊費を自分の分とドライバーの分まで払わねばならないので、合計2万円以上を支払ってやっとこさタクシーを手配できたのである。それでも、タクシーでダーの村に向かう道中は圧巻の景色で、こんな壮大な風景が地球にはあるのか!と驚きを隠せなかった。

 

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途中、カルツェという街で車を止められ、

「なぜここに日本人が1人で来ているんだ!」

と軍に問い詰められた。

 

基本的に、外国人は2人以上でないと許可証が下りない。

ドライバーの人を指差して、

「この人がガイドなのです!この人も人数に含めてください!」

と頭を下げて、通してもらえた。

 

なかなか軍の人と対峙するというのは緊張したが、基本的にこの地域の人々は根は優しく穏やかな気質を持っているので、5分も経たずに通してもらえたのでよかった。

 

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レーの街を出発したのが、朝の6時ごろ。ダーの村についたのが午前11時ごろだったので、5時間ほどで快調なペースでたどり着くことができた。ダーの村は、乾いた茶色い大地が広がる周辺区域に比べて、一段と緑に溢れ、水が懇々と湧き出て道路を濡らし、小鳥がさえずり、生命の息吹を感じるような美しい村であった。

 

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ダー村の入り口には、意味ありげに小さな祠がたち、大きな棒が2つ立ち並び、木には色とりどりの旗が絡みついていた。ここから、何か聖域が始まるような雰囲気を醸し出している。道のあちこちでは湧き水が溢れ出し、道路をひたひたに濡らしている。木々は黄緑に光り輝き、高く高くそびえ立つという雰囲気であった。

 

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家は、木を土台にして、泥や石で固めていくという方法をとっている。庭には花を植えている家庭も多く、さすが「花の民」と呼ばれる民族である。家によっては、かなり大きな花畑も持っている。

 

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また、ヤギなどの家畜を買っている場合も多い。多くて5~10頭飼っている場合もある。メエ〜と元気の良いヤギたちが多かった。

 

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お祭りまで少し時間があったので、近くの丘の上にあるチョルテンのような仏塔のような祠を見に行った。花の民にとっては、村を見守る神様のような存在なのかもしれない。周囲は静寂に包まれ、誰も訪れるものは見かけなかったが、異様に強いエネルギーを放っていた。

 

●花の民の祭りは17時頃に開始した。

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伝統的な衣装に身を包み、花の民が姿を表したのは、夕方の17時頃だった。現地の英語のできる村人に祭りを解説してもらいながら、撮影を進めていった。もともと、この祭りは昔この土地を治めていたアレクサンダー大王を祀るために、今から400年前に始まったという。まず、男たちがラッパや太鼓をかき鳴らし、天から「ラー」という神を呼び寄せるらしい。そうすると、村のテッペンにある岩に鎮座して煙を炊いている僧侶(あまりに尊かったのでまじまじと写真で写せなかった)の元に神が舞い降りて、祭りが開始される。その後、僧侶が煙を持って、村の少しだけ低い位置に移動して、岩の上にそれを納め、それを囲みながら村人たちは踊り出す。男たちだけがその周りを回る。

 

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その後、なぜか全員の男の花の冠に紙が挟まれていき、盛り上がりはどんどん高まっていく。歌を歌い踊りながら、これらの動作がスムーズに行われていくのだ。

 

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全員の冠に紙が挟み終わったところで、僧侶を先頭にして村の男たちが総出で、村全体を練り歩き始める。山の斜面に作られている村なので、道はかなり険しく、すっ転んで少し転落して怪我をする者もいた。村の上部を全部歩き終えたところで、徐々に下の山の麓に向けて歩いていく。

 

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山の麓、目指すべき場所はこの2本の神木が鎮座する大きな広場であった。見た目的にはそこまで木の高さや太さはないものの、実際に木の幹の皮などに触れてみると、手が震えゾクゾクするほどエネルギーを感じる木である。

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この木の目の前で男たちをで迎えるのが、この目を見張るほど派手に飾り付けをした女の集団であった。女たちは、花を手に持っているほか、松の木のような形をした木に火をつけ、あたり一面に煙を立ち込めさせ、男たちが通る道の両サイドにたち、男たちを出迎えていた。

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男たちと女たちは入り混じり、広場に円を作り出す。祭りは絶頂の盛り上がりをみせ、文明の夜明けのようなイメージの太鼓とラッパの音が響き渡る。音楽のリズムは至ってシンプルで、「ター(高い)ラッ・ター(低い)」という音の繰り返しだ。踊りは、右向き、左向き、正面手合わせ、正面手広げという4パターンが基本であり、どことなく日本の盆踊りを連想させるような踊り方だった。15分くらい踊って休憩を繰り返しまくり、休憩の時は男女楽しく話すという光景も見られた。2本ある木のうち、一本の木の根元に大きな石を置いて、終始火を炊くようにしており、広場一帯が煙に包まれてものかなり神々しい雰囲気に包まれていた。

 

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広場での踊りは、18時頃に始まり、終わったのが21時前だった。踊りのアンコールの連続でなかなか終わりが見えなかった。男たちは円になってその都度何かを話しているような雰囲気だったが、言語が全く独自のものを使うため、理解ができない。このような祭りを約4~5日間続けるそうだ。夜は近くの家に泊まらせてもらった。

 

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次の日の朝、夜が少しずつ明けてくる5時ごろにラッパの音で目覚めた。耳をつんざくほどに大きな音だったので、何事かと思って、昨日の広場に行って見たところ、ラッパと太鼓の男数名、手に松の煙を炊いた皿を持った女数名が立っており、なにやら儀式のようなものをやっていた。1人の男が火を根元に炊いている木の幹に松の葉のような形の葉を数枚乗せ、その後女が供え物を備えるように松を火に投じて、各々の家に帰って行った。どのような意味が込められているのか解読不可能だが、厳粛な空気が流れており、自分が横で見学しているというのが場違いな感じであった。

 

●花の民という存在の可能性

僕がこの祭りを取材していて思ったのは、この祭りの民俗行動を記述しているものは世界的にも少ないだろうということだ。日本の国立国会図書館にも、「花の民」について記述している文献は1つもなかったし、僕がこの祭りの行動の一つ一つを文章として残すことには大きな意味があるだろう。民族の固有の文化が廃れて消えてしまったり、忘れ去られたりしてしまう中で、例え時間的にも、お金的にもかなり厳しいハードルを乗り越えてでも、このような祭りを取材しておくことは意味がある。その土地で暮らして、豊かさを千年単位で探ってきた生物、生命、民族の営みがそこにはあって、遠い果ての人々の行動からも人間の原点のようなものを学びとることができるであろうと考えている。あまりにも尊すぎて、写真も出し惜しみしてしまい、このブログで全てを語ることはできないが、それでもその一端を垣間見ていただけたらと思う。

 

ニューデリーに戻り「田舎の尊さ」感じる後半の旅

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ダーの街を10月5日に後にした、僕とドライバーはレーの街へと帰路に着いた。帰りは、軍隊にあれこれ言われることなく、すんなりとドライブを楽しむことができた。途中、車をおりて休憩している時、ドライバーのハックさんと一緒に写真を撮った。ハックさんは、ドライバーを雇った僕がお金を出すからとガンガンお茶飲んだり、たくさん食べ物をお代わりしてきたが、機械音痴だったり、たまに愛嬌込めて声が大きくなったり、さすがプロと呼べるくらいに運転がうまいがスピードめっちゃ出したりという、なるなかに憎めないおじさんだった。

 

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レーから、ニューデリーは飛行機に乗るのは味気ないと思ってローカルな人々に混じって、3日間かけてジープとバスで移動した。途中、5200mの峠を越え、氷点下の気温で雪にはまり、チェーンをつけながら、デリーに向けて頑張って走って行った。途中、車がぶっ壊れて、寒さに凍えながら、ドラーバー達が車を直している姿をみて感動した。車をぶっ壊れているのを見守りながらも、空を見ると満点の星空が広がっていた。今までに見たことのないほどに美しく精彩な星空だった。星ってこんなにたくさんの数があったんだって初めて知った。詰め込まれた車の中で、インド人達と身を寄せ合って寒さを凌いだのは良い思い出だ。

 

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ニューデリーにさあいよいよつくという最後のバスに乗った時、都会の狂気を知ることとなる。やっぱり、どこも人口爆発が進んでいるところの人間は大きな権力の元に歪められてしまうものだと思う。バスの隣に座った通路側のインド人の男性は、窓側の僕の席の方向に唾を履き続けた。窓の外から吐くことができたときは良いのだが、たまに僕の太ももに唾を吐いてくる。11時間もバスに乗っていたものだから、あまりにも辛すぎると思って、途中で席交代しますか?と持ちかけてみた。うん、とうなづいて席を交代してくれて唾を吐くことはなくなった。唾は少し黒ずんでいることもあったので、僕はてっきり、薬物中毒かタバコの吸いすぎで黒いタンが喉に詰まっているのかと思っていたが、唾を吐かなくても良いという状況があり得るということは、これは日本人が1人だからといじめてきたに違いない。席を交代してからも、席を占領してくるなどの行為は続いた。基本的に、公共交通機関の乗り降りなど、列というものを作らず、追い越し追い抜かすというのが当たり前の世界だ。

 

また、こんなこともあった。自動販売機で飲み物を買おうとしたら、横に人が立っていて、自販機の表示は20ルピーと書いてあるのに、30ルピーを要求してきた。なんで30なんだ!と怒ってみるが、30だから30なんだと言い張る。呆れるばかりだ。日本人だというと鼻で笑われたり、提出した税関書類が少し見にくいからというだけで追い返されたり、もう疲れ呆れ果てるほどにいろんなことがあった。

 

やはり、人口が多くて貧富の差が激しすぎるニューデリーという場所において、人は他人を顧みる余裕はなく、物乞いが溢れ、人が栄養失調でバタバタ倒れ、自分が自分を守るのに必死であるように思えた。悲しかった。

 

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唯一、市場で出会った軍隊の男が「我らのインドは誇りだ!」と僕に自信満々に、でも紳士的に語りかけてくれて、心に響いた。インドはどこまでも荒々しく、粗雑に、でも壮大なエネルギーのタンクを積んで未来へと一歩一歩進んでいるように思えた。

 

素晴らしい出会いをありがとう。その後、タイとベトナムに滞在して、10月10日には日本に帰国した。今後も、大きな権力に捨てられた世界の小さな村々の独自の民俗風習文化に焦点を当てて記録していくとともに、人間が本来どのような生き物でどうしたら幸せになれるかを考えながら、写真作品を残していけたらと考えている。今回の「花の民」に関しても、近々写真集を作ってお披露目する。最後まで長々と読んでいただきありがとうございました。

 

 


 

 

 

 

 

 

 



 

【2019年7~9月】石川県加賀市獅子舞取材 湖城町・橋立町・合河町川尻・塩浜町・塩屋町・三木町・柴山町

2019年7~9月の獅子舞を取材した際に聞いたこと、見たこと、感じたことをここにまとめておく。ブログ記事というよりかは一次資料に近い形で、情報を羅列しておきたいと感じ、ここに記す。

 

2019年7月28日

湖城町の獅子舞

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 湖城の獅子舞は、新興住宅街らしく斬新さを感じる部分が多かった。区長さんがスターウォーズの格好をして現れたり、出店がキーマカレー等のおしゃれなお店が立ち並んだり、伝統というよりもはっちゃけ感を前面に押し出した獅子舞という印象が強い。獅子舞の集団について行くと、途中でプールが用意されていてそれに飛び込むなど、とても楽しい光景が見られた。

 祭りの流れとしては、神社がないので地区会館で朝8:00に御神酒飲みをするところから始まる。その後、地域の家、企業、公共施設などを回り、2日間の獅子舞の最後に18:00ごろに地区会館前の広場に帰ってきてそこで舞いが披露されて終了という形式をとる。祭りの締めは、合図とともにビールをかけ合うというのが恒例となっている。獅子舞のあとは、広場前のステージで芸が披露されたり、出店を楽しんだりする。青年団は宴会が行われる。

 棒振りは小学生が大部分を務め、たまに知り合いの家の時だけOBOGの中学生が行うこともある。基本的に中学生は笛を担当することが多く、女性が多い。大人は基本的に太鼓か、カヤの中に入る。

 中学生は赤いTシャツ、大人の青年団は黒いTシャツ、サポーターは黄色いTシャツ、棒振りの小学生は華やかな衣装を身にまとっている。

 中学生の女の子に青年団に入ったきっかけをインタビューしてみると、「最初は男ばっかりで怖い印象もあったけど、友達が入っていたので自分も青年団に入った。実際に話してみると面白い人たちばかりで溶け込めた」とのこと。また、高校生の男の子にやりがいを聞いてみると、「大人の人に色々教えてもらえて自分が成長できている感覚が嬉しい」と言っていた。

 

 

2019年9月15日

橋立町の獅子舞

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 橋立の獅子舞はかなり迫力がある。午前11:00~13:00ごろまでの短い滞在期間だったが、地域の方にも様々なお話を伺うことができた。

 昔は祭りといえば喧嘩するのが常で、車を押し倒すほどに荒れていたようだが、現在は比較的落ち着いてきた。それでも、海側の獅子は荒れるのが普通で、今でも舞いの激しさは健在である。

 獅子舞の棒振り(舞い手)は子供が担う。白い髪の衣装が最も格が高いとされており、他の人の衣装の髪は黒い。とても華やかな衣装を身にまとい、獅子と正面から向かい合って踊る。

 棒振りがいないときは、獅子の目の前には4人の舞い手が立ち、先端に花がついた棒を揺らすのが橋立の獅子のユニークなところ。雌の獅子はこれらの花の香りに誘われてゆらゆらと近寄ってくるという意味であろう。

 衣装にはとてもこだわりを持っているようで、獅子舞Tシャツを着たり、獅子頭のネックレスを身につけている人もいた。また、獅子のカヤの生地の作りがとても繊細だし、獅子頭は日本最大級の大きさを誇るため、かなりお金もかかっている印象だ。

 基本的には地区内の家々を回っており、橋立3町(田尻・小塩・橋立)がほぼ同時に開催されてそれぞれ対抗意識を持ちながら舞うというのが恒例である。12:00になると、棒振りの子供たちを肩車した青年団が橋立漁港に集結して、大漁旗ひらめく大船団に囲まれながら、舞いを披露する。100円で大漁鍋なる魚介の汁も振舞われ、100人以上の地域の人々が集まり、祭りの賑わいは勢いを増す。

 

 

合河町の獅子舞

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今回、お祭りに参加できなかったため、獅子頭だけ撮影させていただいた。特に由来や祭りの様子は話が聞けなかったため、また来年にでも取材させていただきたい。獅子頭撮影は、神社の境内で行なった。獅子頭などの祭り道具の保管は神社内で行っている。

 

2021年3月3日追記

改めてみると、獅子頭は全体に広がっている白髪が特徴である。

地域にお住まいの橋本弘之さんより。川尻は「かわしり」と読む。蔵宮白山神社は動橋由来の神社。お隣の毛合よりは獅子舞の動きが激しい。玄関の土間まで入って踊る。

 

塩浜町の獅子舞

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塩浜町のラスト獅子舞は神社の境内で行われる。焼き鳥やビールが無料で飲めるなど、出店もかなり充実している。この地区の獅子舞は子供や大人、OBOG混じって、交代で舞う。最も特徴的なのは毎回曲目の最後に、獅子頭を持っているカヤの先頭の人間が約50mくらい引きずられるということである。これは今までで初めてで、おそらく獅子を棒振りが退治したか追い返したという意味で行なっているのだろう。かなり迫力があり、見物している地域の人々が最も盛り上がる瞬間である。引きずられている青年団員は痛そうだが、意外と靴裏しか地面を擦っていないので怪我をするなどの問題はなさそうだ。

 

塩屋町の獅子舞

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塩屋町の獅子舞は最後の奉納獅子舞のみ見学させてもらった。まず、18:00頃に大きな雄獅子と雌獅子の神輿を担いで、町内を練り歩く。雄獅子は男性が担ぎ、雌獅子は女性が担ぐという決まりになっており、重さは男性の神輿の方が重い。警察動員のもとで通行止めを行い、少しずつ休憩を挟みながら進んで行く。神社出発、神社到着で神輿が行われ、最後に20時ごろに神社に神輿が到着した時点で町内の人々は神社に集まり、ラストの獅子舞が始まる。カヤの中に入るのは3人で、太鼓が2人、棒振りが存在しないというのが舞いの特徴である。ラストの曲目では猛スピードで獅子舞が踊り狂い、大歓声のもとで迫力ある獅子舞が展開される。

 

2019年9月16日

三木町の獅子舞

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 三木町は15時からの神社への奉納獅子舞を見に行った。神聖な神社の前で自然に囲まれた場所で荘厳な雰囲気の中、静かに見守るというスタイルの獅子舞だった。衣装は柔らかく華やかな雰囲気だ。奉納獅子舞は15〜30分程度と短く、一瞬を見逃しまいと写真を撮影した。踊りの内容で最も面白かったのは、最後に天狗が登場したことだ。棒振りの人が最後の曲目のみ天狗の仮面をつけて踊るとさらに荘厳な雰囲気がさらに際立つような感覚だった。若い人に華を持たせるためか、基本的に踊り手は子供がやり、大人は見守るという役回りだった。

 

2019年9月21日~23日

柴山町の獅子舞

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 柴山町はかなり青年団と近い目線で取材させてもらえた。獅子舞のカヤの中に入れさせてもらって、一緒に舞うなどして、獅子舞を踊る感覚を掴んだ。獅子舞の最後尾の尻尾を振る役割を担い、リズムに合わせて上下にカヤを動かすというとても簡単な動作を経験させていただいた。

 この町の獅子舞には、しゃんしゃんとコンコンという2種類の踊りがある。それぞれ、リズムや内容が異なる。基本はお金を渡さなかった場合小学生が舞う子供獅子で、

お酒やお金などを渡すと青年団OBが舞うという形態をとる。基本地区内のすべての家を回るので、合計150軒くらいまわることになる。また、この町では獅子舞の踊りに女性が参加しておらず、男性らしい躍動感あふれる舞が見られた。

 この町特有の獅子舞の内容としては、リアカーを引いているという特徴がある。リヤカーの前には「祭り」、後ろには「柴山」という文字が書かれ、太鼓や飲み物を保管している。車や軽トラを利用する地区が多いが、柴山では祭り前々日、前日、祭りの日の2日と計4日間お酒を飲む上に、祭りの日は朝から晩までお酒を飲むのが恒例となっており、飲酒運転を避ける工夫となっている。

 あとは、他の町に比べると「獅子の鼻が高い」という特徴がある。外国人や天狗を連想させるような鼻を持つ獅子頭を使用しており、平成4年に石川県小松市上本折町の彫刻家・北昭造氏に製作を依頼したとのことである。

 また、祭りの際には親戚たちがみな集まって飲んでいるのがとても印象的だった。すき焼き鍋を中心に、唐揚げ、スパゲッティなど美味しそうな食べ物がたくさん並んだ。

 太鼓のバチは他の地区に比べてかなり太くて、桐の木を使っているため丈夫な印象を受けた。

 祭りの当日は、1日目は朝の準備があり4時半集合とかなり早い。次の日は7時ごろと少しゆるいが、15時からカラオケ大会があり、20時ごろから盆踊りも始まり、夜は倒れるまで飲み明かして楽しい夜を過ごす。

 周辺の新保町などの青年団の方々とも繋がれたので、ぜひ来年取材したい。

 

 

2019年9月22日

加賀市中央図書館での調査

 加賀市149町のうちで119地区で獅子舞が行われてきた(現在の山中は資料が作られた当時江沼郡だったので含まない)。獅子舞が行われていない30町は主に旧大聖寺町の小集落である。現在は96地区で行われている。神社のある集落を中心に実施されているという特徴がある。

 加賀市の獅子舞を大別すると、加賀藩伝統の棒振りを伴う獅子(45%)、カヤの中の3~5人が2人立ちの太鼓に合わせて舞うカンカラ獅子(43%)とに大別される。分類しにくい12%もどちらかというとカンカラ獅子に近い。棒振り獅子の分類は曲の多少で分類でき、とりわけ山代温泉町は多数のハヤシを入れる特徴がある。

 獅子舞の季節について。大聖寺21町内(13町が休止)の祭りと、瀬越町の3年に1度の大祭のみ春に行い、他は秋に行うのが主流である。

 獅子頭について。加賀市獅子頭は70%が雌獅子で、雄獅子は17%(そのうち87%が朱色)となっている。制作年代と作者が明らかなものが全体の52%の62個で、そのうち31個が富山県井波のもの、12個が金沢のもの、8個が大聖寺のもの、4個が松任の浅野太鼓のものとなっている。このほか、例外的に東京、京都、三国、鶴来のものが1個ずつある。

 獅子の頭持ちについて。頭持ちは基本的にカヤの中にいるが、外にいるのが山代温泉町と二子塚町だけである。また、獅子の胴体について。カヤの中に入る人数は頭持ちを含めて2~3人というのが全体の49%、4~5人が39%となっている。一番多くても10人までで、胴竹を張り、ハヤシ方が中に入るのが田尻町山代温泉町のみとなっている。

 ハヤシについて。カンカラ系統で2人打ちが全体の60%を占める。棒振りが伴う場合は、1人打ちで笛が伴うのが36%、残りの4%がシメ太鼓で多数の太鼓と笛と鉦(カネ)が入る。

 獅子舞の流れについて。獅子の組み立ては保管されている神社や公民館で行い、次に神社で奉納舞をする。次に区長・区三役の家から舞い始め、町内を一巡し、最後に神社で舞い納める。

 

<以下、獅子舞が実施された119地区>

 

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 <獅子舞の演目一覧>

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(参考文献:石川県教育委員会「石川県の獅子舞 獅子舞緊急調査報告書」/昭和61年3月)

 

【宿泊体験記】手軽で便利な宿!石川県加賀市山代「パブリックサロン三喜」に行ってきた。

こんにちは、散歩が好きなイナムラです。今日は、9月15日の夜に泊まらせてもらった「パブリックサロン三喜」という宿について紹介します。この宿、山代温泉の中心街に近く、旅行者にはとても手軽に泊まれるという宿です。どのくらい手軽なのかを中心に見ていきます。

 

●この宿を訪れた経緯

まずは物件紹介の前に、この記事を書くことになって経緯について触れておきます。

稲村東京から石川徒歩の旅で宿探しております...!どなたか泊めてくれる方いませんか..(テント生活に苦しみ)(咳ゲホゲホ)」

オーナー岡田さん「うち泊まりませんか?(ピカーン)」

稲村「え!いいんですか!宿の泊まった感想の記事書きますよ。」

 

というわけで、泊まらせてもらえることになりました。結局、他の宿との兼ね合いで、徒歩の旅の期間(8/31~9/14)の終了後、9/15に泊まらせてもらったのですが、徒歩の旅の続編的な感じで、この記事を書かせてもらいます。

 

山代温泉の中心部近くにある宿

 

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この宿は、石川県加賀市の山代というエリアにあります。山代といえば、古総湯や総湯に代表されるとても古風で、温泉が有名なエリアです。1000年以上の歴史があり栄えた温泉場で、風呂に入るとやけど寸前のものすごく熱いお湯に浸かれるのが個人的には名物かなと思っています。風呂の我慢大会でも今度友達とやりたいです。でも、5分くらい入って熱さに慣れると耐えた分、めちゃくちゃ気持ちよいお風呂なんですよ。風呂から出たあとのアイスが最高においしいです。

 

ところで肝心の宿ですが、その古総湯や総湯のエリアから徒歩でなんと2分で手軽にいけちゃうのが、「パブリックサロン三喜」という宿です。まだまだ温泉旅館に比べると知る人ぞ知るという宿なので、どんな所なんだろうとワクワクしながら、歩いて行ってみました。

 

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グーグルマップ通りに来ると、山代温泉というバス亭の目の前に「パブリックサロン三喜」はあります。そう、このバス停から加賀温泉駅にも一本でいけちゃうので、公共交通機関でのアクセスも良いです。

 

ところで、初めての方は、あれ?ゲストハウスではなくうどん屋?と目を疑います。このうどん屋の上の階?と思いきや、左に道があるのを発見しました。

 

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この道をおりて、どこに宿があるのかを探します。そう、この宿のポイントは、この隠れ家感が良いのかもしれません。まだまだ、多くの観光客に知られていない場所を探す冒険心が掻き立てられます。

 

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こんなところに入口が2つ。これはなんだろう?トイレかな?などと想像を膨らませますが、これは全く宿とは関係ありません。この2つの扉の右奥にその宿の入口を発見しました。

 

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パブリックサロン三喜、ありました!なるほどなるほど。ここから入るわけです。改めて入口を見つけるのはやや大変ではありますが、うどん屋と見せかけて奥にあるというプライベート感が面白いです。

 

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ここから、階段を登って、宿の入口は2階にあります。

 

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この扉を開けると、いよいよ宿に入れます。看板などがないので、ゲストハウスというよりは誰かのお家に入っていくという感覚で入れるのです。

 

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宿に入ると、玄関の下駄箱の上に、インドで売ってそうななかなか民族感溢れるゾウの置物がありました。なかなかに小洒落ていて可愛いですね。

 

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ここでスリッパを履くみたいです。いよいよ誰かのお家に来た!って実感が強くなって来ました。受付のフロントはなく、基本的に自分で部屋の暗証番号を事前に教えてもらってその番号を入力して部屋を開けるという流れでチェックインをします。最近無人レジが増えていますが、どんどんこういう人がいなくても成り立つ現場って増えていくんだろうなということを日々感じますね。

 

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キッチンがありますが、基本的にゲスト同士の交流はなく、ここで人がたまったり料理している光景は見られませんでした。この宿の使い方としては、寝る場所として手軽にいつでも出入り自由みたいな気楽な感じで利用するのが良いのかもしれません。その分、お風呂は総湯、ご飯は近くのお店という風に、ちゃんと町を歩くという観光ができるのが魅力とも言えます。

 

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キッチン周りのこういう最低限のものは揃っているので、夜食や朝食で買って来たものを軽く食べたい時とかに利用できそうです。

 

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パソコンが使い放題で置いてあるというのは、かなり便利です。今日どこで飲もうかとか、明日どこ行こうかとか、ふと思った時にすぐ調べられます。あとは、携帯の充電をあまり使いたくないとか、充電中だから触りたくないとか持っていけないとか、そういう時にも手軽に調べられるのです。

 

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肝心のお部屋は、奥にあります。暗証番号を入力してロックを解除して、中に入ります。これはドミトリーのお部屋。機能美が追求されたようなシンプルなお部屋になっていて、3人まで泊まれます。

 

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横にはこういう感じで2段ベッドもついています。

 

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洗濯物がたくさん干せそうでいいですね。キッチンスペースには、無料で使える洗濯機が置いてあり、洗剤も使えるので、コインランドリーでお金を払って洗濯をする必要もありません。

 

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充電はたくさんさせるようになっているので、代わりばんこに充電してたら大変そう...という心配はいらないです。個人的には、プラグのさし位置の方向をぐるぐる動かせるやつが好きなのですが、差込口の量でそれはカバーしていると言えるでしょう。携帯、充電器、PC、カメラのバッテリー、などなど全部一気に充電できちゃいます。

 

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お風呂セットが用意されているのは、とても便利です。なぜなら、山代温泉のお風呂は基本的にシャンプーや石鹸、タオルなどが有料なので、地域の人はみな自分のお風呂道具をカゴで持参するのですが、それを知らなかった!(汗)という観光客にとって、これは嬉しいです。

 

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ちなみに、この宿にはお風呂もついているので、利用できます。朝シャンとか手軽にシャワーを浴びたい時に便利ですね。

 

●手軽で便利なのが「パブリックサロン三喜」

さて、ここまで宿の紹介をして来ましたが、改めて思うのがこの宿は機能性を徹底的に追求して、余分なものがなくシンプルという印象を受けました。東京とかにはよくありそうですが、山代温泉の旅館街にこういう宿は珍しく、そこがポイントでもあると感じました。宿に高いお金払ってそこで全部完結しちゃうよりかは、町に出てその良さを味わい尽くして、宿は安く済ませたいという人にはおすすめの宿です。

 

あとは、ひとり旅で交流を求めてゲストハウスに来る感覚よりかは、友達との旅や、夜めっちゃ遅くなっちゃうけど宿なんとかしないと!という弾丸旅や、旅行中だけど仕事などの作業をしたい時とかに利用してみたいと思う宿でした。僕みたいに夜ブログ書きたい人には、WIFIや充電環境が最高に整っていたのが個人的によかったです。

 

ぜひ、皆さんも山代温泉周辺に来る際には、この「パブリックサロン三喜」を利用してくださいね。ちなみに、この宿の読み方、「みき」ではなく「さんき」です!お間違いないように!3つの喜びってなんか良いですね。3つってなんだろうと思いながらも、みんながこの宿を訪れて喜びが増えたらサイコーです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

<今回ご紹介した宿「パブリックサロン三喜」>

住所:〒922-0242 石川県加賀市山代温泉17-甲 パブリックサロン三喜

アクセス:山代温泉から徒歩2分、加賀温泉駅からバスで20分程度

連絡先:instagramや、facebookや、Airbnbからお問い合わせが可能。

 

www.airbnb.jp

 

 

執筆:稲村行真(ぼく・イナムラ)

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写真家・ライター。2016年、大学生が加賀のまちづくりに関わるワークショップ「PLUS KAGA」に1期生として参加。それ以来、卒業後も個人プロジェクトの実施で石川県加賀市に関わり続けている。今までの実施企画は、東京から石川まで2週間で歩いて古民家を取材する「古民家冒険project」(2017年)や、同じく東京から石川まで2週間で歩いて加賀出身者に会いまくる「加賀人探し旅」(2019年)、加賀市各地区の獅子舞を取材して写真のアート作品を残す「KAGA SHISHIMAI project」(2019年実施中)などがある。

 

 

【東京-石川500km徒歩】15日目 石川県加賀市桑原町~石川県加賀市大聖寺(7km)

9月14日はいよいよ徒歩の旅の最終日。7kmと短い距離を約2時間で歩いていくことになった。徒歩の旅チームの仲間たちや、地域の方をはじめ、様々な方の応援があり、無事にゴールをすることができ、報告会も開くことができた。支えていただいた皆さん、本当にありがとう。今回が東京-石川500km徒歩「加賀人探し旅」を締めくくる記事とする。

 

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高橋家のパーティルームを出発したのは、9:00ごろ。ここから、徒歩の旅最終日の道中が始まった。ライブ配信が手間取ったり、風船が宇宙へ飛び立ったり、ゴールが遅れてしまったりとハプニングがあったものの、最終日のワクワク感は何にも代え難いものがあった。

 

道中振り返ってみると、普段遊びに来ている加賀市への地理的な繋がりを感じながら、こんなに遠いところまでいつも一晩の夜行バスでヒョイっと遊びに来ているというのは不思議な感覚だ。

 

自分は本当に歩いて来たんだという実感は全くなく、ただただゴールに向かうワクワク感で満たされていた。

 

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途中、徒歩の旅メンバーで動画を撮ってくれているけだしろくんと合流して、前日からの松田さんと3人でゴールに向かう。途中から高橋家の子供達も合流して、賑やかな感じのゴールとなった。

 

ゴールには、20人ほどの方々が駆けつけてくださり、飲み物を手渡してくれたゴール地点「FUZON 3 KAGA Cafe and Studio」の山根さんをはじめ地域の方々、ゴールテープを持って来てくださったPLUS KAGAのコーディネーター・三島さんと株式会社フォルクの皆さん、メディアの方など様々な方にお越しいただいた。

 

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フィニッシュ後、軽く挨拶をして「FUZON 3 KAGA Cafe and Studio」の前で記念撮影。本当にたくさんの方に来ていただいて嬉しかった。そんなに大々的に告知するほど道中で余裕がない中で、今回の企画に興味を持ってくださり、人づてでこれだけ人が集まってくれるというのはやはり加賀人ならではだと感じた。

 

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報告会は、ゴールにも来てくださった飯貝さんの「タビト學舎」で開催した。約20名の地域の方が来てくださり、北陸中日新聞や加賀ケーブルテレビの取材も入った。内容としては、参加者との対話形式を大事にして、旅の概要や道中の様子、今後の計画などを発表した。

 

加賀人と会って様々な話を聞いてみてわかったことは、歴史に裏打ちされたものをベースに加賀の魅力を考えていくとスムーズに理解できるし、地域特性とやりたいことを掛け合わせて活動を作って行くべきと改めて実感した。

 

あと、自分に求められているのは、他人の声や調べた情報をそのまま伝えることではなく、自分が考えたことや感じたことをそのまま伝えることなのだということがわかってよかった。

 

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まだまだ、溢れ出す感情を表に出して話をするのは得意ではないけど、みなきちんと聞いてくれて、質問もたくさんしてくれたのが嬉しかった。最後に、残って話をしていたメンバーで記念撮影をした。

 

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その後は、樹林という喫茶店で泡がたくさんのメロンクリームソーダを飲んだ。徒歩の旅が終わって、喫茶店で一息をつくというのはとても贅沢だ。今回、甘党の中谷さんのご紹介で一緒に初めて訪問させていただいたが、レトロな雰囲気が居心地良いお店だと感じた。

 

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 その後は、中谷さんの接骨院で、マッサージをしていただいた。あまりに気持ちがよくて、喋っている途中にうとうと寝てしまったが、やはりこうやってプロに見てもらえるというのはありがたい。前回の徒歩の旅に引き続き、今回もお世話になりました。

 

<徒歩の旅を終えて>

今回の徒歩の旅はグッズチームと歩くチーム合わせて約30人の仲間達と作り上げ、道中加賀市出身者を探して会いにいくという、「人が繋がる」旅になった。加賀を好きになって、関わる人を増やすという目的は概ね達成できた。前回はその後をどう作るかに悩んだが、今回は心配がなさそうだ。マニアフェスタをはじめグッズの販売や、台湾での徒歩の旅も決定したので、近々また告知していくことにする。さらにより良い企画ができるようにこれからも頑張ろう!と実感した旅だった。

 

<メディア掲載のご紹介>

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9月13日北國新聞朝刊

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9月15日北國新聞朝刊

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9月15日北陸中日新聞朝刊

 

加賀ケーブルテレビ、その他。


旅の総移動距離

8月31日(土)  1日目   41km  59802歩  東京都文京区~埼玉県川越市

9月1日(日)    2日目   39km  61872歩  埼玉県川越市~埼玉県寄居町

9月2日(月)    3日目   38km  53335歩  埼玉県寄居町~群馬県富岡市

9月3日(火)    4日目   40km  63163歩  群馬県富岡市~長野県軽井沢町

9月4日(水)    5日目   44km  65363歩  長野県軽井沢町~長野県上田市

9月5日(木)    6日目   33km  55929歩  長野県上田市~長野県長野市

9月6日(金)    7日目   26km  30634歩  長野県長野市~長野県中野市

9月7日(土)    8日目   42km  64191歩  長野県中野市~新潟県上越市板倉区

9月8日(日)    9日目   34km  50226歩  新潟県上越市板倉区~新潟県上越市名立区

9月9日(月)    10日目 32km  49968歩  新潟県上越市名立区~新潟県糸魚川市

9月10日(火)  11日目 48km  68122歩 新潟県糸魚川市~富山県魚津市

9月11日(水)  12日目 52km  81597歩 富山県魚津市~富山県砺波市

9月12日(木)  13日目 39km  62212歩 富山県砺波市~石川県金沢市袋板屋町

9月13日(金)  14日目 45km  70617歩 石川県金沢市袋板屋町~石川県加賀市桑原町

9月14日(土)  15日目 7km    18193歩 石川県加賀市桑原町~石川県加賀市大聖寺

合計 560km   855,224歩

 


【本日のルート】

東京ー石川 徒歩の旅

15日目

石川県加賀市桑原町~石川県加賀市大聖寺

7km

18193歩

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【お知らせ】

今後の出店情報

石川県加賀市や東京都などで、徒歩の旅グッズを販売します。直近では、「徒歩マニア」という出店者名で、秋葉原アーツ千代田3331でのイベント出店が決定。徒歩の旅や石川県加賀市のことを知ってもらう機会を作ります。オンラインでの販売も開始予定です。

 

<イベント概要>

マニアフェスタvol.3

場所:アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

日時:2019年9月29日(日)

イベントurl:https://maniafesta.jp/vol-3-summary/

 

【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】

2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら

今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。

また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。

【東京-石川500km徒歩】14日目 石川県金沢市袋板屋町~石川県加賀市桑原町(45km)

9月13日は、最終日前日。石川県金沢市からいよいよ加賀市へと、クライマックスの高揚感とともに快調に歩くことができた。知り合いにばったり会ったり、人の温かさに触れることができたり、旅をしてよかったと思える一日だった。

 

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今日は長い距離を歩く。石川県袋板屋町の集会所を出たのは4:45ごろ。人と会う予定があるときは、基本的にものすごく早起きをして余裕を持って歩かねばならない。ただし、早起きがもはや普通になっているので、とりわけ辛いという感情はない。

 

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徐々に明るくなり始め、町が姿をあらわす。朝の澄み切った空気の中で、町を眺めるのは気持ち良い。

 

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道端の花壇が階段状になっていて、美しかった。やはり、町に緑は欠かせない。

 

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途中、四十万という駅で、徒歩の旅のサポートメンバーの松田さんと合流した。足取りが軽快でびっくりした。自分がこの徒歩の旅でどれだけ疲労感が溜まっているかがよくわかる。松田さんには道中、犬村くんのぬいどりや僕の写真を撮るなどしてくれるので、とても助かっている。

 

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歩きながら、袋板屋町の皆さんにいただいたおにぎりを食べる。やっぱり、おにぎりはこういう田園風景を眺めながら食べるのがとても美味しい。

 

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そろそろ稲刈りの時期だろうか。遠く遠く続く空と、田んぼと、畑と。砂利道を進んでいく。車道ばかり歩いていると、息苦しくなってしまう。だから、こういう道を歩くと、気分が晴れてくる。

 

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ここら辺の塀に使われている石は、黄色く染まっている。これは、他地域では見られない。どんな石を使っているのだろうと疑問が湧いてくる。一瞬、調べたくなるんだけど、でもそれを調べたところで何になるのだろうと思えてきて、スマホをしまう。最近は、知識や情報をとることにあまり大きな関心がない。

 

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途中、道路側が直線的に切りそろえられた植木を発見して笑った。子犬がリーゼントの髪型をさせられたような妙な妄想をしてみたが、やはりこの木は得体の知れない魅力がある。きっと歩行者が「この植木じゃまだな」とか言って、「すいませーん」ということで土地の所有者が切ったんだろう。

 

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途中、イチジク畑を手入れしている手が大きめのおっちゃんと目が合ったので、話をしてみることにした。おっちゃんは元気満々で「徒歩の旅でもしてるんか?」と聞いてきた。

 

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「ほらこれ!今日の朝刊に載っているんですよ!」って話をして、朝にコンビニで手に入れた北國新聞を見せると、「おお、そうか〜!」と東京から歩いてきたことにびっくりしていた。

 

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「そんなら、ここら辺のイチジク持ってきな!」と気前よく食べごろのイチジクを10個くらいくれた。ありがとう、おっちゃん!イチジクは大好物なのだ。

 

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1個は松田さんにあげて、それから、「うまいうまい!」と10個ぐらいのイチジクを歩きながら、全部食べた。

 

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 おっちゃんの息子さんの絵が飾られているらしく、能美市寺井地区公民館に立ち寄った。大きな休憩スペースに、とっても美しい金箔が貼られた絵が飾られていた。こういう公の場で、堂々と絵が発表できるっていいなと思った。

 

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途中、まだ能見市なのに、加賀でいつもお世話になっている久保出さんが近くにいるからと駆けつけてくれた。白えびビーバーと、飲み物4本も差し入れしてくれて、本当にありがたい。

 

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それから、道路の小道をどんどん進んでいく。通学路注意がなぜかヤギの絵になっていて謎だったので、とりあえず犬村くんとコラボしておいた。犬村くんに注意!と書き換えてみたくなった。

 

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途中、赤瓦を修理する職人を見かけた。僕は古民家鑑定士という資格を取ったぐらい古民家好きなので、赤瓦ってこんな風に取り付けるんかと興味津々だった。

 

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犬のジョニーがいた。

 

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接骨院がイルカに囲まれていて、ナゾだった。

 

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屋根が地面にくっついている家があった。この角度と長さはなかなかに興味をそそられる。家が地面にのめり込んだかのような錯覚を覚える。

 

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入れとく必要なくない..............?

 

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この2つのお店は兄弟みたいなものだな。

 

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それから、西圓寺に立ち寄る。障害者でもいきいき働ける福祉施設で、温泉に入ったり、ご飯が食べられたり、イベントに参加できたりする。おしゃれで最先端で面白いお寺なので、ぜひ行ってみてほしい。

 

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西圓寺の庭に生えている木は年輪刻んでる感じで、根っこがうねうねしていて、ぞわぞわして良い。

 

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こんな使い方あったのね。

 

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小松ンティーホール。下ネタにも聞こえなくはない。「シ」の点がとれて「ン」になっただけだろうが、さっさと改名しちゃったらいいと思う。

 

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神業披露してくれるらしい。


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 途中のコンビニで、料理人の大神さんとばったり出くわした。応援してくれて嬉しい。さあーいよいよ加賀だ。知り合いにもたくさん会うようになってきた。

 

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そして、ついに今日の目的地に到着!地域の盛り上げ役・高橋さんのパーティールーム。今日の宿を提供いただく高橋さんが、家族の皆さんと横断幕を掲げて待ってくれていた。思わぬサプライズにびっくり!提灯までつけてくれて歓迎ムードで迎えてくださった。準備にたくさん時間がかかっただろうに、本当にありがたい...。

 

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夜は、金沢カレーの8種類食べ比べ大会をした。いろんな店のカレーを調達してくださり、少しずつ食べ比べをして、美味しかった順に順位をつけるというものだ。結果はやはり、ゴーゴーカレーとかが人気だったが、こってりしたものからさっぱりしたもの、辛いものから甘いものまで多様なカレーライスがあることにびっくりした。

 

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高橋家以外にも、北出さんやお笑い集団のテツヤシステムのメンバーなど、地域の方々も遊びに来てくださり、前夜祭はどんどん盛り上がっていく。子供たちも遊びに来て、賑やかになって来た。

 

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記者会見が開かれた。記者になりきったテツヤシステムからたくさん質問が飛んでくる。ウインナーをマイクがわりにして、僕が回答をする。

 

テツヤシステム「道中、印象的だった出来事を教えてください。」

僕「大聖寺ってお寺にバッタリ出くわしたんですよ。」

テツヤシステム「へぇ〜!」

 

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賑やかになったところで、テツヤによるポテチバーがオープンした。僕がお客さんになってポテチを勧められ、ただただそれを食べるというバーで、火に炙ったり、マヨネーズにつけたりして食べる。漫才風でツッコミどころ満載で面白かった。参加型のお笑いは新鮮だったし、こんなに笑って楽しめたのは久しぶりだった。

 

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ラストのポテチを火で炙ったら、なんと文字が浮かんで来た!これには、超びっくりで、とっても嬉しいサプライズだった。

 

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最後の締めはカラオケだった。サザンオールスターズTSUNAMIなど3曲歌い、パーティの最後が締めくくられた。ここまで、用意して楽しませてくれる高橋家とテツヤシステムの皆さんに本当に感謝!

 

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僕とテツヤシステムズで記念写真。

 

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パーティのあとは、明日の報告会に向けての資料作り。まだ終わっていないことに焦りつつ、でも楽しい夜だったのでよかった。さあ、明日はいよいよゴール。実感は皆無だが、最後までこの徒歩の旅を味わい尽くしたい。

 

【本日のルート】

東京ー石川 徒歩の旅

14日目

富山県砺波市~石川県金沢市袋板屋町

45km

70617歩

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【お知らせ】

今後の出店情報

石川県加賀市や東京都などで、徒歩の旅グッズを販売します。直近では、「徒歩マニア」という出店者名で、秋葉原アーツ千代田3331でのイベント出店が決定。徒歩の旅や石川県加賀市のことを知ってもらう機会を作ります。オンラインでの販売も開始予定です。

 

<イベント概要>

マニアフェスタvol.3

場所:アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

日時:2019年9月29日(日)

イベントurl:https://maniafesta.jp/vol-3-summary/

 

【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】

2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら

今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。

また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。

【東京-石川500km徒歩】13日目 富山県砺波市~石川県金沢市袋板屋町(39km)

9月12日は出会いに恵まれた一日だった。富山県砺波市をスタートして、石川県金沢市袋板屋町ゴールという道のりを歩いた。ついに石川県に入り、知り合いにも会いながら、充実した一日を過ごせたし、加賀市出身者にお話を伺うこともできた。

 

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砺波市のチューリップ公園を出ると、曇り空ながら晴れ間がのぞいていた。昨日の大雨は嘘のようで、夢でも見ていたのだろうか。

 

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周辺の田んぼは土作りが行われている。これは、肥料の類だろうか。田んぼがふかふかで暖かい布団を身にまとっているようだ。

 

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石のブロックを持ち上げるための鉄の取手がくくりつけられていた。この方が運びやすいということだろう。

 

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ここら辺はクマが出るらしい。この看板はいくつも見かけた。さて、いよいよ山登りが始まるのだ。

 

 

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そういえば、自販機もコンビニも商店もなくて、朝からずっと何も食べてないし、何も飲んでいないことに気がついた。

 

僕はいま飲み物がほしい。

 

食べ物がほしい。

 

でも、飲むものも食べるものも存在すると思うからほしくなるだけなのだ。

 

もとからそんなものなんてないと思えば、期待をすることもないし、いまより気楽に歩ける気がする。

 

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そもそも歩くことなんて、ただ右足と左足を前に出すだけなのであって、そんな単純な機械のようなことをただ1日10時間繰り返すだけなんだ。

 

それはそれは簡単なことだろう。

 

世の中、難しいことをしている人なんて、たくさんいるのだ。

 

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機械みたいに動かなきゃダメなのだ。

500kmを2週間で旅して歩くということは自由のようで、自由ではない。

 

ポンピドゥーセンターと叫びたくなった。

実際に叫んでみたら、やまびこが聞こえて来た。

濁音とか破裂音を発音することで目が覚める。

 

そうしてから、猫じゃらしを持っていると癒されるのだ。

 

マメの中にマメができる。

合計5個以上はできた。

左も右も。

 

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 そうこうしていると、お昼ごろにちょうど直売所の看板を見つけた。これはありがたいと思って、早足で矢印の方向に向かって進んだ。

 

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「との様直売所」という名前の直売所があった。直売所の前の道が昔、加賀藩主の通った道だったことに由来するらしい。殿様のキャラクターと犬村くんのコラボで写真を撮っておいた。

 

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りんごがたくさん売られていた。大きく丸々として輝いていて、美味そうなりんごだった。

 

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直売所のおばちゃんと話をしてみることにした。

 

僕「ここら辺の名産品って何ですかね?」

おばちゃん「おかきとかかね」

僕「おかきはどこでもあるよ...。このシソが付いた煎餅はどう?」

おばちゃん「それこそどこでもあるでしょうに。」

僕「初めて見ましたよ!」

おばちゃん「それは知らなかった。びっくりだよ...。」

 

当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかった。地域の魅力というのは、地域住民とよそ者とで、全く異なる。そういうところにチャンスが眠ってるんだと思った。徒歩の旅のことについて話をしたら、びっくりして熱心に質問してくれた。

 

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直売所で買った巨大なパイナップルのパンが、今まで食べたパンの中でベスト3に入るくらい美味かった。柔らかくて、ふわふわで、ジャムのこんがり焼けたところが少しカリッとしていて、そのままのパイナップルとジャムの部分がうまく分けられていて、パンと一体化している感じが空腹の自分には最高の食料だった。

 

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道中、最近は毎日蛇をみる。小さいやつが多いけれども、手も足もなくて動いているなんて不思議だなといつも感じる。生き物に対する好奇心や探究心はいつも絶やさない。

 

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山は登り切って、あとは下るだけだ。気持ち良い空の下で、足取りも軽い。とりあえず、食料を手に入れて、水を手に入れれば生きてはいける。いつの間にか、石川県に入っていたようだが、気がつかなかった。旅もいよいよクライマックスが近づいている。

 

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14:00ごろ。福祉施設のシェア金沢にあるデザインや企画をされている会社「グルーヴィ」に伺う。以前、世界一周する!などと言って、その時の企画書を見てもらうなど様々なところでお世話になっている。徒歩の旅に関して、企画コンセプト面でのアドバイスを伺った。

 

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加賀の味噌汁や煎餅など、様々なお土産までいただき、本当にありがとうございました!

 

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17:00ごろ、金沢学院大学に伺う。門のところで、不審者と思われたのか止められた。しかし、徒歩の旅のことを話すると、「こりゃたまげた!」とばかりにびっくりしていた。名簿に名前を書いたら、通してくれた。

 

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金沢学院大学では、馬場先さんという都市計画をご専門にされている教授にお会いした。石川県加賀市大聖寺のご出身ということで、今回、4人目の加賀出身者にお会いすることができたのだ。

 

加賀の魅力として、コンパクトシティにならないことを挙げておられた。大聖寺、山代、片山津というような地域力豊かで個性的な街並みが点在しており、加賀市は1つに括ることができないのが魅力とのこと。確かに僕も獅子舞のプロジェクトなどで、いろんなところに訪れれば訪れるほど様々な出会いと発見があり確かにそうだなと感じる。

 

他にも、大聖寺を治めていた山口玄蛮という武将を手厚く祀っているという話だったり、古くて低めの町家が昔のまま残っているという話だったり、様々な内容で盛り上がった。教授をされているので、とても細かくて専門的なところまで、溢れるほどの知識をお持ちで、もっともっと話を聞いてみたい!と感じたが、それはまた次の機会にとっておくことにしよう。

 

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それから、石川県金沢市袋板屋町に移動。地域の方と一緒に飲んで、地域の未来を語り合った。袋板屋町は大学生の時から、袋板屋プロジェクトでお世話になっている場所で、田畑が多く蛍が見られたり、温泉が近かったりと、とても贅沢な田舎体験ができる場所である。金沢にも、こんな場所があるのだ。

 

この町では、少子高齢化で若者が少ないという課題を抱えている。音楽フェスや食事イベントなど様々な企画を立ち上げてきたが、今後について考え中である。市街化調整区域の関係で土地利用が制限されているなどハードルをどう乗り越えるかという話などをされていた。

 

僕は、前回の徒歩の旅でもお世話になったし、地域の方と話をしているととても楽しいので、この地域にどう関わっていくかをこれからも模索していく。

 

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袋板屋町の集会所をお借りして、今晩の寝床にした。本当にありがたい。布団で寝られるのが5日ぶりだったので、布団で寝るということの心地よさをいつも以上にかみしめることができた。今日は、本当に人との出会いに感謝の1日だった。


【本日のルート】

東京ー石川 徒歩の旅

13日目

富山県砺波市~石川県金沢市袋板屋町

39km

62212歩

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【お知らせ】

今後の出店情報

石川県加賀市や東京都などで、徒歩の旅グッズを販売します。直近では、「徒歩マニア」という出店者名で、秋葉原アーツ千代田3331でのイベント出店が決定。徒歩の旅や石川県加賀市のことを知ってもらう機会を作ります。オンラインでの販売も開始予定です。

 

<イベント概要>

マニアフェスタvol.3

場所:アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

日時:2019年9月29日(日)

イベントurl:https://maniafesta.jp/vol-3-summary/

 

【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】

2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら

今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。

また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。

【東京-石川500km徒歩】12日目 富山県魚津市~富山県砺波市(52km)

楽あれば苦あり。9月11日は徒歩の旅中でもっとも辛い日だった。朝の4:30から歩き始め、歩き終わったのは深夜の24:30。前日が最長距離と考えていたものの、この日が実は最長距離になってしまった。僕が今まで生きて来た中で、一番長い距離を歩いた日でもあった。加賀出身者に話を聞くことができたのは唯一の救いであったが、それ以外は苦しさしかなかった。

 

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朝は早い。安全な場所にテントを張っているのだが、テントを張っていることを誰かにちょくちょく見られているという妄想が頭から離れないくて、なかなか落ち着かない。車のライトが迫ってくると、怒鳴られるんじゃないかと思って、テントを畳もうとするも、間に合わなくて結局何も起こらないというのが続いた。朝4:30には完全に目覚めてしまったので、歩き始めることにした。

 

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雲は厚く山を覆い、どんよりした空気の中を進んでいく。あの山の向こうには、もっと高い山がある。深く深く広がる山は自分の想像力や好奇心を掻き立ててくれる。

 

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突如、天から何かが舞い降りてくるかのような日差しが降り注いだ。光は斜めに直線的に数分間地上を照らし、自然の気まぐれと神秘を垣間見たような気がした。自然現象は人間にとって、制御できるものでは決してなく、かと行って過度に畏怖するほどに科学が未発達なわけでもない僕らの社会において、突如あらわれる予想しなかった自然の美しい瞬間的な煌めきをせめて大事に生きていきたいと思った。

 

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富山駅に近づくにつれて、賑やかな街並みが広がっていった。まだまだ開発され尽くしていない街並みに喜びを覚えたし、大衆感ある食堂や飲み屋もなかなかに多かった。

 

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温泉に入って、コインランドリーに行って、銀行に行って、久しぶりに街に出たのでテンションが上がり、あちこち寄り道した。やっぱり、富山駅周辺は僕が今回旅して来た道中では、久々に大きな街に来たという感じがした。

 

 

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富山駅についた。とても綺麗な街並みだ。ここで、富山大学でPLUS KAGAの3期生の桃ちゃんと会うことになっている。桃ちゃんは石川県加賀市大聖寺の出身で、徒歩の旅の道中3人目の加賀市出身者と会えることになる。どんな話が聞けるのか、とても楽しみだ。

 

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集合して、開口一番、「日焼けしましたね〜!」と言われて、ああいつの間にか僕も日焼けしていたんだと気がついた。ご当地グルメのお店を紹介してくれて、あまり並ばなくて済むブラックラーメンのお店に決めた。黒く焼けた僕がブラックラーメンを食べるというなかなかシュールな光景が生み出された。

 

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桃ちゃんに、加賀の好きな風景について聞いてみたところ、江沼神社が静かで落ち着くと言っていた。ゴール地点の大聖寺は昔沼だったらしい...知らなかった。

 

他に、自分になかった視点としては、友達関係が長く続くということだった。都会に比べると大聖寺のような地域は保育園から大学まで一緒の人がいるという場合もある。ずっと会いたい人と会える環境があるのは素晴らしい。

 

あとは、やはり、若い視点で見たときに、まだまだ活動している若い世代のことが地域の人に伝わっていないのが勿体無いとのことだった。PLUS KAGAのような大学生のプロジェクトやのほか、活躍している高校生のことを地域の人が認知していけたらもっとよくなるし連携が進んでいく。これからもPLUS KAGAの延長で、地域に関わり続けていきたいという話もしていた。

 

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桃ちゃんとの食事を終え少し歩くと、再び田舎道に戻った。景色はよいのだが、徐々に天気が崩れて小雨が降ってきた。

 

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空が暗くなってきた。雨は小雨から大雨に変わり、ザアザア降りになってきたので、カッパを着て、リュックにカバー取り付けて、重い足取りを歩いていく。普段であれば、すぐに止むことが多い雨も、この日はなかなか止まなかった。 

 

防水の靴も水溜まりに浸かって、びしょびしょになり、カッパの中まで水が入り込んでくる。昨日は全くなかった足の痛みがよみがえってきて、新しくマメができたような指が張った感覚がある。終いには水を頭から被ったように全身がびしょびしょになり、カバンの中の物がすべて濡れてしまった。

 

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休んで歩いてを繰り返していると、日が暮れてしまった。一人で過ごす寂しい雨の夜。回りには街灯がなくて、やがて山を越える道に差し掛かった。たまに通る車のライトだけが命綱だ。

 

突然月明かりに照らされた草木が大きな馬の形をして現れた。トロイの木馬のように見えて、いまにも襲いかかって来そうで、身震いがした。横の森から熊でも現れたらまずいなと思って、足取りを早めた。


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夜21:00頃、奇跡的に山の中にLAWSONを発見した。建物の明かりに心が躍り、食パン6枚切りのものと、サラダとチーズを買って、サンドイッチみたいにして食べ尽くした。空腹は疲れに影響するので、それは防ぎたかった。店員は不思議そうに自分を見つめていた。

 

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それから、足がふらふらになりながらも、歩き続けた。ここでテントを張ったら熊が出るという妄想が頭から離れない。途中、Googleマップ通りに道がなく、通行止めなどあり焦った。

 

 眠気と共にめまいが出てきて体が左右にゆれはじめ、田んぼの溝に落ちるから眠気を催さないように走って歩いて、休むという激しい動作を繰り返す。 こんなに辛い旅などこの世にあるものか。 座ればすぐに眠ってしまうので、顔を叩きながら休むしかない。

 

果たして、砺波のチューリップ公園についたのが、24:30頃。朝を出発したのが4:30だったので、歩いていた時間を考えると呆然とする。さっさと休んで寝ようと思ったが、テントの隙間から雨が入ってくるのでなかなか寝れず、それを眺めながら防ぐすべを色々考えた後、カッパを被せて寝た。テントの隙間の部分を眺めながらいつの間にか寝ていた。

 

 

【本日のルート】

東京ー石川 徒歩の旅

12日目

富山県魚津市~富山県砺波市

52km

81597歩

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【お知らせ】

今後の出店情報

石川県加賀市や東京都などで、徒歩の旅グッズを販売します。直近では、「徒歩マニア」という出店者名で、秋葉原アーツ千代田3331でのイベント出店が決定。徒歩の旅や石川県加賀市のことを知ってもらう機会を作ります。オンラインでの販売も開始予定です。

 

<イベント概要>

マニアフェスタvol.3

場所:アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

日時:2019年9月29日(日)

イベントurl:https://maniafesta.jp/vol-3-summary/

 

【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】

2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら

今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。

また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。