こんにちは、呼吸をするくらい当たり前に淡々と歩いているイナムラです。8日目の今日は、奇跡的な出会いと、3年ぶりの再会という2つの出会いに恵まれました。
自然の中を歩く
ゲストハウスかのかのオーナーに手を振り、中野市を後にしたのが早朝6:00ごろ。近くの祠に手を合わせて徒歩の旅は今日もスタートした。
空は少しずつ明るくなり始めた。あたり一面に広がるのは、果樹園。その先に黒姫山などの山々が大地を見守る。
清々しい朝の風景。
自然と人間の共生。
毎日眺めながらのんびりと生きていたい。
家族を大事にして、広い心で満たしたい。
都会の暮らしは攻撃的で忙しないけど、此処にくれば人間の本当にかけがいのない大事のものを教えてくれるんだ。
少し寒いくらいがちょうどいい。
多少孤独を感じられる方が回りの人を大事にできる。
大きな古民家を買ってリノベーションして、おしゃれな拠点をつくってたまには気心の知れた友人を招待してお酒を飲んで語らいたい。
長野県中野市で出会った方々を思い起こしながら、広い自然を目の前にして紡がれた大事な言葉たち。
ブドウ畑を横目に、いただいたブドウやビスコを頬張りながら歩いた。なんて、自分は欲深いのだ。でも、欲深さがなければやり遂げられないこともある。常にハングリーだからこそ、体にエネルギーが湧いて来る。
突如現れたトーテムを思わせる顔面が僕を睨む。さては、見透かされたのか?
あたり一面に点在するカカシ。どこを向いているのだろう、何を目指すのだろう、君たちは。
少し歩いたところに突如現れたお寺、その名も「大聖寺」。この名前を一目見た時、僕は声を上げたくなるほどに驚いた。「大聖寺」って、今回の徒歩の旅のゴール地点の地名じゃん。1週間到着が早いよ...。
この大聖寺の隣がおやき屋さんだった。入って見ると、それはそれは優しそうな店主のおじいさんとお客さんのおばちゃんと話をしていた。
おばちゃん「法事だから、多く買っていくね!」
おじいさん「何個いる?」
おばちゃん「じゃあ、30個くらいかな」
おじいさん「いつもありがとうね。安くしとくから。」
おやきは、野沢菜とあんことナスの3種類があった。おじいちゃんは、丁寧にシールをパッケージに貼っていた。少し間が空いたので、2人に話しかけてみた。そしたらなんと、このお客さんのおばちゃんが、この「大聖寺」のオーナーさんだった。
おばちゃん「え!(ものすごく驚いて)これも何かのご縁ですね。」
僕「せっかくだから、大聖寺の前で記念写真を撮りましょう。」
空は、真っ青の晴天。太陽は高く高く昇り、日差しは強すぎるくらいに強い。この大聖寺のおばちゃんがとあるエピソードを教えてくれた。
話は戦国時代に遡る。織田信長の家臣・佐久間盛政は初代の金沢城主となり、弟の安政がこの大聖寺がある地を治める初代飯山藩主となったという。それから、北陸地方とこの長野県飯山市一帯は縁が生まれ、一向宗の僧侶が行き来するなどの交流が生まれたそうだ。
もっと個人的に調べてみると、様々なことが明らかになった。僕が徒歩の旅で近くを通った長野県の長沼城、これから近くを通る富山城や増山城は全て、佐久間の血筋が統治していたようである。なんとも不思議な縁で胸がいっぱいになった。
それから、徒歩の旅は徐々にのどかな田園地帯を進んで行く。赤い屋根が多いというのも、石川県加賀市との共通点としてとらえて良い気がする。
道はどんどん山奥へと進んで行く。あたりは深い森に覆われ、自分の妄想はどんどん膨らんで行く。これから僕はどこへと進んで行くのだろう、この徒歩の旅の真の意味は何なのだろう。
昔この辺りを浄土真宗の開祖・親鸞が歩いて布教していたようである。やはり、一向一揆が盛んだった北陸地方との縁は、この浄土真宗によって生まれていたと言うこともできるだろう。
道中、山奥過ぎたので、なかなか食事処がなかった。かろうじて、蕎麦屋が3軒あったので、一番雰囲気が良さそうなこのお店に入ってみた。
昨日食べたお蕎麦と全く同じで、値段は高めで量は少なかった。でも、自分の欲の深さにうんざりとしてきていると感じていた今日この頃だったので、これも美味しく食べられた。人、食べ物、自然、毎日の全ての出会いに感謝だ。
蕎麦屋を後にして、歩いていると突然100円コーナーの無人直売所が現れた。閑散としており、野菜がほんの少しごろんと置いてあった。
画鋲に刺さった張り紙が横にあった。
あなたは、金も払わずに持って行きますね
食べる時、何も感じませんか?
心病くないですか?
これが逆だったらどうですか
お金を払わないで持って行く人、よく考えてください。
お金を払わないのはいけないことだが、この張り紙があることは正しいことなのだろうか?僕はこの張り紙を見て、少し心が痛んだ。
ひたすらに、夕暮れの道を歩いた、歩いた、歩き続けた。何もないと感じるのは心の問題だろう。何かあるのだが、それをとらえられていないという弱さは否めない。しかし、その何もないところがまた心を穏やかに豊かにしてくれるのである。ああ、寒くて何もなく澄み切った世界の端っこで、自然を眺めていたい。ふとそう思った。
いい水、いい緑、いい空気。思いっきり書かれると、なんかホッとして笑えてくる。ああ、ここは山に囲まれた田んぼばっかりの田舎なんだ。素敵な田舎なんだよ。
夕暮れ時、もう日が暮れる。
今日はとある古民家にお邪魔する。
北折さんという方のお宅である。
古民家中の古民家!という古き良きお家を新潟県上越市内でたくさん所有しておられる。僕は3年前に卒業論文作成の時に「日本全国古民家巡り旅」というものを行なったのだが、その時に初めてお会いした方だ。今回は3年ぶりで会うのは2回目である。
相変わらず、お元気であった。民家という雑誌に自分の古民家とその活動が掲載されたのを見せてくれた。グリーンパル高原荘や、ランプの里たなかといった宿泊施設などを持っているそうだ。
ピザと、とろっとろのカレーライスをいただいた。山奥の静かな豊かな古民家のコミュニティで食べる食事は格別に美味しかった。ビールも本当に格別だった。これからは、ブルーベリー農園やカフェなどを作る計画もあるんだとか。今日は古民家ジャズ喫茶になる予定の家に泊まらせてもらった。
旅しているうちに、自分にとって本当の幸せについて気が付いてきた。それは、僕の周りにいる人が楽しく生き、自分も楽しく生き、欲張らずに、長い目で関係を作っていけることが大事で、そこには、自然も必要で.......。さて僕はどこに向かうのだろうか。この度の中で引き続きしっかりと価値観を整理しようと改めて感じた。
【本日のルート】
東京ー石川 徒歩の旅
8日目
(古民家喫茶だだん)
42km
64191歩
【お知らせ】
石川県加賀市へのゴールについて
9月14日(土) 11:00
場所:FUZON KAGA Cafe and Studio(石川県加賀市大聖寺魚町21)
内容:ゴールテープを貼っていただき、地域の方や運営メンバーなどが見守る中でゴールして、徒歩の旅を完了。稲村が感謝の言葉を述べる。
石川県加賀市での徒歩の旅報告会について
9月14日(土) 12:00~13:00
人数:30名程度を想定
内容:ゴール後にタビト學舎の教室に移動して会場準備。稲村が道中での出来事や出会いを報告し、旅の振り返りを行う。時間は1時間で、この模様はライブ配信も行う。
【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】
2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら。
今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。
また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。