日本有数の獅子舞密度のまち・石川県加賀市大聖寺「大聖寺桜まつり」取材

2025年4月11日〜12日、石川県加賀市大聖寺を訪れた。毎年4月第2土日(獅子舞は前日の金曜日から実施するところもあり)は桜まつりが行われている。神輿の渡御と共に、獅子舞が登場するのだが、獅子舞の数と密度が半端ない。大聖寺地区には40町で獅子舞が伝承しており、その中で10町ほどが桜まつりで舞う。休止または断絶も多い。個人商店が力を持っていた時代は、この地域はさらに賑わっていたに違いない。その賑わいを象徴するように、どの町も獅子舞を持っている。例えば、大聖寺魚町に関しては、たった20軒で獅子舞を実施していたというのだから、魚市場の繁栄は相当だったに違いない。さて今回の取材で新しく気づいたことについて書いておきたい。

特に印象的なエピソードについて、大聖寺錦町にて。この町の獅子舞には活気がある。とにかく左右に蚊帳を振るような所作が激しくて、カメラで追うのが大変なくらい変化球のような舞いをする。太鼓のリズムは大聖寺関栄と同じである。足捌きもお座敷獅子の系譜を持っているのか美しい。ただし、これが後世にアレンジされて息の良い激しい獅子舞になっていった印象がある。今回初めて拝見したのが、股をひらく所作である。獅子舞がゴロンと後ろに倒れ込んだかと思うと、足をVの字に開いて高い叫び声を上げる。それに続いて、獅子の赤い尻尾が獅子頭を3回ほど叩く。なんだかエロい方面を連想させるが、これはおそらく慣れた家の前でやるとっておきの秘技のようなものかもしれない。

それから公民館の前で、タバコを吹かせながら、下校途中の小学生に大声で「こんちわ!!!」などと声をかけていた。「これくらいできんと男だかからな」と入りたての中学生の担い手に伝えていた。この威勢の良さ、覇気の強さを先輩から習うのだ。「お金もらってるからプロなんだ」「歩きスマホしないで歩くんだぞ」などと、移動中のマナーも教わっていて、礼儀正しい。20代前半くらいの先輩から中学生の後輩は学ぶのだ。中学生たちは太鼓のコバチからはじめて、オオバチもやる。それから、町廻りの時に獅子の中に入って、慣れていく。他の町に呼ばれていったり、イベントに出たりする場合は、先輩たちがやる。その姿を子どもは見て学ぶという循環になっている。それと首からかける木の飾り物には、加賀神明社のハンコが入っており、金の鈴がついておりかっこいい。僕もひとついただいた。300個以上作ったらしい。木の箱にどっさりと入っているのをみて驚いた。これは錦町のみでもらえるものである。

その他の町についても振り返りをしていこう。

大聖寺関栄は屋内(正式なゴザ上での外の舞を含む)と屋外での舞い方が異なるのも面白いところである。これは大聖寺の獅子舞が伝播の過程として屋内から屋外へと移行していったことを示しているのだろう。

大聖寺弓町は年配の方々が比較的多く、丁寧に町の一軒一軒に挨拶をして回っていたのが印象的だった。とても真面目に継承されており、その舞はゆったりとしているが、写真に撮るとどこかかっこいい。立ち姿がスッとしている獅子舞である。

大聖寺越前三ツ屋町は山車とともに獅子舞が移動していくのが面白い。山車曳きの担い手たちがそのまま大人の獅子舞をするから、獅子舞はサブ的な役割を担っている。子どもの踊りの後、獅子舞の流れである。

大聖寺中町は獅子舞を2班に分けて回っていた。町周りではなく、出張していろいろなところで舞っているようだった。主要な方は獅子頭が少し大きいとのこと。ここでは担い手にバイト代も出しているようで、このやり方でしっかり各々が獅子舞に貢献するという意識の醸成に役立っているように思えた。

それから大聖寺下屋敷町と大聖寺南町(写真順)はたまたま通りがかりで拝見できた。少ししか見ることはできなかったが、どちらも舞いのスペシャリストという感じで、舞いに慣れている感じがした。

やはり、総じて思ったのは大聖寺の獅子舞は足捌きとコバチ、オオバチのセッションが行われる太鼓の音などが特徴的だと思った。足捌きはもともと、大聖寺が城下町で屋敷の上で履き物を脱いで獅子舞をすることがかつては多かったので、足捌きが美しくなるように変化していったものと思われ、現在では昭和天皇の御大典記念(昭和3年以降)桜まつりという祭りで、神輿の渡御と共に獅子舞が行われることから、外での演舞が増えたものの、かつての舞い方の名残を今に伝えていると考えられる。

また、大聖寺の獅子舞は数が多いと言っても一様ではなく、多様性に溢れていると再確認した。今回は映像制作がメインなので、ブログの方はそこまで詳しく書かないが、やはり何度も訪れている土地に関しては、鮮烈な印象を文章に込めるというよりも、こういう映像制作とか目的ベースで、それに特化して滞在することになるとわかった。少しずつ仕事として形にしていきたい。

<2025年4月11日の取材スケジュール>

到着 8:30ごろ

聖光保育園(大聖寺錦町)10:00

大同ゼネラル(大聖寺錦町)10:30

町周り(大聖寺関栄)11:00〜12:00

(昼食)

町廻り(大聖寺錦町)13:00〜14:00

錦城保育園(大聖寺関栄)15:30

加賀市立中央図書館 文献調査 16:00〜19:00 

 

<2025年4月12日の取材スケジュール>

加賀神明宮〜町廻り(大聖寺関栄)9:00

町廻り(大聖寺弓町)10:30

山車と獅子舞の巡行(大聖寺越前三ツ屋町) 13:00

大聖寺の各所を巡る(大聖寺中町)15:00ごろ

大聖寺の各所を巡る(大聖寺南町, 大聖寺下屋敷町に遭遇)17:00ごろ

その後、桜まつりの桜や屋台などの撮影数分間
出発 19:30ごろ