【2024年9月】石川県加賀市 獅子舞取材 最も獅子舞が多い繁忙期、獅子舞多様性を堪能

2024年9月13〜15日、22日〜23日の日程で石川県加賀市の獅子舞を取材した。いつもながらに訪れている石川県加賀市。今回は動画の撮影をメインとして訪れたが、各町の演舞形態や組織など少しずつ変化が見られた。例年に増して数多くの獅子舞を取材することができたので、その様子を振り返る。

2024年9月13日
田尻町

町の家々を巡る獅子舞はお昼に、ある一軒の家を訪ねる。そして「カンサマ」と呼ばれる1時間にも及ぶ獅子舞を披露する。それからその家の家主が、200本分のビールや大量の食事でもてなし、炎天下の中で舞い続ける田尻町の獅子舞の担い手の、しばしの休息の場となる。お昼を1時間ほど食べると、外に出て8種類の舞いを披露する。日本全国を見ても、これほど家の中でひたすら気合いを入れて舞い続ける獅子舞というのは、なかなか見たことがない。これが田尻町で続く「宿」の風習である。今回、知り合いの宿主にお願いして、初めて取材をすることができた。

新保町

棒振りと獅子が格闘する非常にリズミカルな獅子舞で、ものすごい躍動感があった。どこか能登半島の獅子舞を思わせるようなテンポ感だ。周辺の柴山町、伊切町もここと近い舞い方を継承していますが、これだけ速い獅子舞はなかなか見ないです。リズミカルな分大きな躍動感もあり、写真を撮っていてこれほど迫力のある雰囲気に撮影できる獅子舞はなかなかありません。 終わりごろになると、獅子の蚊帳(胴体)の部分に次々と担い手が入っていきます!それでパンパンに膨れ上がって、そこからはみ出す担い手たちもいました。とにかく勇ましくて盛り上がる獅子舞に感動しっぱなしでした。新保町の獅子舞にずっとついて歩いていると、伝統的な獅子舞を受け継ぐだけではなく、自分たちでも新しい舞い方を創作して披露する姿も見られました。近年は信仰住宅ができてその担い手たちも新しく加入したそうです。楽しさを追求した先に、素晴らしい獅子舞が出来上がるのだと感じました。

2024年9月14日
千崎町

朝6時の獅子舞に訪問。神社での奉納から演舞が神社での奉納から演舞が開始された。子どもの棒振りの獅子舞で、勇ましいシャガを被った担い手が、色彩豊かな豊かな獅子と格闘する。神社での舞いが終わると、町に出て一軒一軒巡るほか、高速道路の尼御前サービスエリアなどで舞うようだ。

別所町

子どもの棒振りの獅子舞で、獅子4頭、棒振り4人が舞う、非常に迫力ある舞いとなった。小学生の獅子舞は今年から初めての挑戦とのこと。小学生だけでも獅子の舞い、棒振り、笛、太鼓ができるらしく、これだけ子どもを主体とした人数の多い獅子舞ができる地域はとても珍しい。獅子舞の歴史が短い分、舞い方に対する縛りも強くなく、自分たちの受け継ぎやすい形で獅子舞を実施していることが、素晴らしい結果につながっているようにも思えた。

大聖寺下屋敷

大聖寺十万石まつりで僕が所属する加賀市獅子舞を応援する会で出展した獅子舞ブースの前で、お昼に演舞してくださった。大聖寺下屋敷町の獅子舞は低い姿勢で静かなところから始まり、徐々に激しくなっていって、最後は飛び跳ねるようなダイナミックな動作が見られてとても迫力があった。太鼓と獅子が向き合うシンプルな形態の獅子舞だが、このような緩急があるところが見どころだ。

2024年9月15日

日谷町

神社での早朝の舞いで、3つの演目のうち最終演目を飾ったのは京振り(キョウブリ)という演目だった。大きなダイナミックな所作が特徴的で他の演目より長く感じられた。近年は演舞が高速化&簡略化の方向性に進んでいるが、日谷町ではどんどんゆっくりになってきているという話が興味深かったし、この傾向は珍しいと思った。港町の獅子舞よりも山側の獅子舞の方がゆっくりになることは多いので、そのような傾向のひとつと思われた。

直下町

こちらも神社での早朝の演舞を拝見。拝殿には獅子頭薙刀を咥えた状態で置かれていた。衣装を着て準備して、その獅子頭をもち、太鼓と獅子の口にお酒を吹きかけて、それから2つの演目が行われた。加賀獅子の特徴を持つ、獅子殺しの舞い方だ。子どもの数が多く、女の子の棒振りもいた。直下町の薙刀は長いので、演舞中にどこかに当たってしまって少し曲がっていたが、ハラハラしながらそれを真っ直ぐに戻す姿も見られた。

大聖寺瀬越町

瀬越町の獅子舞は後半にダッシュする動きや小刻みに震える動作が特徴的だ。太鼓と向かい合い近づいたり離れたりを繰り返す。太鼓に操られているようだ。瀬越といえば、もともと北前船の交易で財を成した人々が住む土地だったので家が大きく、庭が広く立派な家が多かった。そこに獅子舞が門付けで巡っていった。途中、犬がよく鳴くお家もあって、獅子舞と犬との吠え合い?が面白かった。

三木町

能登獅子の形態。獅子舞と対峙するヒーロー槍つきは2名だ。それぞれ3つの演目を交代しながら順々に舞い歩いていた。衣装が鮮やかで動きがダイナミックな様子が印象的だった。またトラックに乗りながら太鼓を叩いている姿も見られた。

箱宮町

この日は実は、午前12時半から獅子舞の門付けを始めたそうだ。朝早すぎるというか、もはや徹夜状態なのに、みなさんキレッキレの獅子舞を披露されていて素晴らしいなと思った。金色の太鼓、短い棒を操り、身軽で激しい獅子舞を披露されていた。最後にはご祝儀が高い家でしか披露しない最上級の舞い「京振り(キョウブリ)」も披露してくださった。

橋立町

橋立漁港での獅子舞を取材。毎年秋祭りの最終日に行われる橋立漁港での3町の舞い。橋立町、田尻町、小塩町の順番で舞いが繰り広げられた。以前、2019年に訪れた際には、大漁旗が立つ船に囲まれながら、漁港の先端部分で舞いが繰り広げられていたが、今回は漁港のセリが行われる巨大な建物の中で行われた。近年は熱中症予防などの意味があるようだ。棒振りを肩車した状態での大行進から、勇壮な演舞まで、とても迫力のある舞いだった。

塩浜町

この日はちょうど大雨で、舞い始めたと同時に雨が降ってきて、水たまりですべりながらも、約1時間、5つの演目が順々に披露された。うねうねと動き回る獅子が鳥居の方まで約15mほど引きづられるということもあった。これは全国でも唯一の舞い方を継承していると言えるだろう。

小塩町

実施前に「必ず雨は止む」と伝わる神事「神様がえり」、通称カンサマ。石川県加賀市橋立3町に伝わる秋祭りの最も重要な場面である。今回は小塩町のカンサマを初めて拝見した。 神社境内を前にして獅子舞は一升瓶に入ったお酒やお水をひたすら浴び続ける。これらは参道にも撒かれている。三役の副支部長、会計が獅子を舞わしている時は日本酒5升、それ以外は水少し。支部長が舞わしているときは、日本酒10升で水は1、2升分ほどとのこと。 お酒はもちろん水も手水舎の水なので、祓い清めの意であろうが、想像するに町廻りをして厄祓いを続け、反面、厄を一身に受け通った毒を背負う獅子舞が、清められるという意味かもしれない。 また、このカンサマでは雌獅子らしく最終的には花棒の匂いに誘われて神社拝殿に導かれる。そしてそこで棒振りと押し合いを行い、最終的にはその棒振りの子どもが、拝殿外に連れ去られて、獅子頭は拝殿の箱の上に納まるのである。最終的には恐ろしくおどろおどろしい獅子の勝利という流れだろう。 苦しみ叫びもがき、その先にある境地はどこにあるのか。日常的には静かな神社が、恐ろしい獅子の神事により異世界へと反転するその世界観には、橋立という地域を超えた日本全国の祭りの根底をありありと映し出しているように思えた。

2024年9月22日

柴山町

この地域の獅子舞は、棒振りと太鼓、笛、獅子という構成です。太鼓は手作りの荷車に乗せられ、棒振りは化粧をして華やかな衣装を見にまとう。獅子と棒振りの掛け合いは非常に軽やかで見応えがある。コロナ前は子ども獅子もいたそうだが、現在は大人獅子飲みとなった。でも以前として若々しさが感じられる獅子舞だ。

黒崎町

黒崎町の獅子舞は、演舞中に、ロッコロッコイという勇壮な掛け声が特徴的で、これは近隣の橋立3町と同じ掛け声である。演舞中にはホースで水をかけあったり、お酒を掛け合ったりする姿や、威勢の良い囃子言葉をかける姿が見られた。また、舞い方は橋立のものに似ているのかと思いきや、棒振りがいない。太鼓2人と獅子の関係性は、大聖寺の獅子舞によく似ている。このように橋立地区と大聖寺地区のどちらもの特徴が見られる、非常に珍しい獅子舞である。また、獅子頭は南方系のようなおおらかさが見られ、蚊帳は非常に色とりどりである。途中、休憩時間には餃子を囲みながらも、黒崎の民謡・どねり節や橋立中学校の校歌を歌う姿が見られた。非常に荒々しくそしてヤンチャな気質は、港町らしさが見られ、同時に獅子舞をとことん楽しんでいるように見えた。

保賀町

保賀町の町民会館では一日中、お祭りの出し物がいろいろと行われており、駐車場では屋台が続々と出店されていた。町民会館の中には家族連れの町民が続々と集まり、非常に若い人や子どもたちで溢れかえっていた。その中で15時から開催された獅子舞の演舞では、約10分ほどの演目だった。最初は寝ているような動作が多かったものの、途中から獅子が荒れ狂うように突然動き出すような仕草が印象的だった。

山中温泉御神輿

こいこい祭りのお神輿たちを撮影した。一番大きな大獅子神輿は2024年3月より「ししがしらんど」に展示されており、そこから出発して、山中温泉一帯を巡行した。今年は6年ぶりに胴体をつけて歩いた。もっと昔は車輪付きでコロコロ転がしていたらしいが、今年は100人以上の担い手を集めて迫力ある巡行を実現した。また「湯女みこし」は2019年を最後に参加していなかったが、「恋来いみこし」に名称が変更されて、今回女性たち約30名によって担がれた。山中温泉出身で東京に住んでいる担い手がふるさと納税10万円を山中温泉に寄付してそのお金を神輿に充てたほか、会社のメンバーを巻き込み復活させたという素晴らしいお話も伺うことができた。そのほか、男性たちが担ぐ真っ赤な「若衆みこし」や山中塗りをモチーフにした「お椀(わん)みこし」、そして白山神社の御神輿など総勢5基による大行列が催された。

 

山中温泉絡み獅子

5頭の獅子舞による「絡み獅子」を15時半から撮影した。あいにく、直前まで保賀町の取材に行っていたため、この獅子舞を近くから撮影することは難しかったが、山中温泉の山中座をバックに非常に盛り上がりを見せるこの演舞を記録することができた。アンコールを受けるほどに盛り上がり、また、会場の観客の頭を噛むような姿も多く見られた。会場には山中温泉の地元の方々だけではなく、観光客はもちろん、直下町や柴山町といった地区外の獅子舞の担い手が駆けつけ、そしてこのこいこい祭りを堪能している姿が見られた。山はり若くて勢いのあり山中青年団の勢いは素晴らしい。

2024年9月23日

片山津町

3つの演目が披露され、子どもたちが大活躍であった。大人が獅子舞を舞うのに対して、子どもが棒振りを実施。演目はシーシャ、フン、ケンという3つだった。もともと長年途絶えてきた獅子舞を近年、子どもが棒振りを担う形で復活した。型をなぞるようなその演舞は、その場の雰囲気やノリで変化する獅子舞とは異なり、比較的精密さが感じられそれが魅力にも思えた。また、お昼に同席させていただいた時に、昔は獅子頭を回すときは手首で行っていたが、現在は腕全体で回している感じがするというお話を聞いた。今後、以前の獅子舞の様子を写したビデオなどが発見されたら良いなと思っている。 片山津町の獅子舞は午前9時45分に片山津公民館、11時に片山津神社、20時半に再び片山津神社という3つの時間帯で演舞を実施。それぞれ3つの演目を演舞したようだが、最後の時間帯は2頭舞いが行われたようである。僕は今回、午前中の2つの演舞を映像で撮影することができた。柿の葉寿司、おにぎり、いなり、パインダイナーのオードブル、ドーナツ、屋台...食事作りや準備を見て、運営の様子を知りながらの取材となり貴重な経験だった。