【2022年1月】石川県加賀市 獅子舞取材 別所町(追加)

2022年1月27日

11:00~ 別所町

「獅子舞を習い創作して、町を1つに」

別所町の獅子舞は新しい。漆器の町を1つにするために祭りを立ち上げ、その中で獅子舞も始まった。産業の結びつきの強い山中から獅子舞を習い、そのまま自分のものにするのでは無く、太鼓のリズムも舞いもオリジナルの形で創作した。自分の町らしさについて考えさせられる素晴らしい取材だった。

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獅子舞の始まり

平成15年9月に初めて獅子舞が行われた。それに先立って同年春の総会で獅子頭、笛、幕の購入が決定、7月19日に白山神社の奉納祭で獅子頭の奉納が行われた。本番は9月18日の第3回「別所いきいき祭り」とその前日である。「いきいき祭り」のネーミングの由来は、別所町が住み良い活気ある町になるようにと祈願するもので、平成12年に始まった秋祭りだ。実施背景は、別所町が漆器の町であるものの、近年は衰退しており、町が1つになり盛り上げていこうという考えのもと始められた。また、別所町には自衛消防隊はあったが青年団という組織が無くてそれを立ち上げたいという考えもあり、まずは若者を集めようといきいき祭りを立ち上げる前に「よさこい」を始めたことがあった。すると男子よりも女子が多く集まったが、その中の数少ない男子を集めたいということになった。よさこいの中の数少ない男子の有志を集めて、区長に獅子舞をしたいと相談をしたところ、快く受け入れてもらい予算がついた。つまり、いきいき祭りが始まる前から獅子舞を実施したいという想いはあり、平成15年には念願の獅子舞が実現したという流れだった。平成15年秋に向けて、祭り道具の新調は知田工房の知田重吉さんと中野神祭堂に頼んだ。別所いきいき祭りはその後も毎年文化祭も兼ねて敬老の日に行われている。この敬老の日の前日含めて2日間獅子舞を行う。

 

獅子舞を習い創作した

獅子舞を習ったのは、山中の青年団からだ。別所町の漆器は山中由来であり、現在この地域に住んでいる人は昭和30年代以降の漆器問屋の進出と漆器団地の形成を背景として、山中方面から引っ越してきた人が約3分の2とも言われる。そのような繋がりの中で、獅子舞が伝えられた。獅子舞の指導者は当時、獅子舞の担い手経験があった元山中町民で蒔絵師の小林正雄さん(63)である。5月中旬から週3日程度、町民会館に集まり、練習を実施した。また、山中の獅子舞をそっくりそのまま習ったのではなく、山中町青年団の獅子舞を見学してそれを参考にしながらも自分たちのオリジナルの獅子舞を作るという意識もあった。太鼓は昔からあったのでそれを使い、太鼓のリズムは自分たちで新しく作った。

 

担い手

青年団は当初、20~30歳までと決めていた。のちに、青年団を卒業した人が町への関わりを継続してもらうために壮年団を作った。壮年団は獅子舞に関わらず、町の様々なことに関わった。これは、年齢が上がってから区長を務める時に、町のことがわからない人が出てくるのを避けるための工夫であった。壮年団の最年長は現在52歳で、特に青年団の卒業の時期というのは定めて来なかったが、55歳くらいまでにしようかという話し合いはしている。獅子舞には子供が関わっており、そのモチベーションは友達とワイワイするのが楽しいという感覚がある。

 

<参考文献>

北國新聞 2003年(平成15年)7月20日(日)「別所に獅子舞誕生」

・平成15年度 別所町 事業計画(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)

 

<取材先>

平成15年 別所町3区区長・田畑勝治さん

平成15年 青年部代表・梅田佳孝さん

(同行:山口美幸さん)