石川県加賀市で、獅子頭制作ワークショップを開催!獅子舞の原点は、豊かな想像力とDIY精神か?

10月23日

石川県加賀市竹の浦館で獅子頭制作ワークショップを実施した。竹の浦館にはいつも、獅子舞の写真集やクリアファイルの委託販売でお世話になっている。今回は、獅子舞についてより体験的に知ってもらおうということで、獅子頭の制作ワークショップを企画させていただいた。昨今は新型コロナウイルスの流行を背景として、なかなか獅子舞を見る機会も少ない。子供に獅子舞のことを知ってもらう機会も少ないので、自分で獅子頭を作って踊ってみるのも良いのではないかと思っていた。結局、獅子舞を実施しているという事実を文章や写真で伝えることはできるが、それは「知ってもらう」ということにすぎない。「ああ、そういうことなのか」という一歩踏み込んだ理解をしてもらうためには、自分で獅子舞を創作してもらうしかないのだと思う。

獅子舞を創作するというのは想像力の必要な作業で、各町内で行われている獅子舞をそのまま丸ごと真似して作るということはまずあり得ない。今回ワークショップを実施してみて、獅子舞の耳に人間の顔を描いたり、角の部分から髪の毛を生やしたり、目の玉を黄色くしたりするような子供もいた。獅子舞というイメージに対して知識をこねて作るのではなく、偶然性などから生まれてくる、その人がその時間にその場でしか作り得なかったものを作るといえば良いだろうか。獅子舞は改めて固定化された伝統的なものではなく、動いて変わっていくような流動的な生き物であることを実感した。

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ワークショップの時間は、11時からと14時からで2回設定したが、その時間など関係なしに、飛び入りの親子がたくさん来てくれた。事前予約は4組だけだったのに、結果的には14組も来てくれたのはびっくりしたし、とてもありがたかった。同時に、運営側も最低3人以上は必要な内容だとわかった。かなりわちゃわちゃするので、1人だとなかなか対応ができずに作り始めるまでに時間がかかってしまう。どうしても待たせてしまう子供には、牛乳パックの裏にお絵かきをしてもらうなどして、間を持たせることが必要だ。基本的に子供が興味があるのは、獅子頭のデザインの部分で、色を付けるとか絵を描くとかそういうところに関心がある。描いた眉やら鼻やら耳やら角やらを取り付けるのは、手先の器用さも必要だし慣れが必要なので、運営の方でサポートしていかねばならない。親がサポートに入ってくれたり、逆に親がとてもクオリティの高いものを作ってくれる場合もあった。これはこれで運営側としては助かった。

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そして、子供達は最後に自分で作った獅子頭を使って、踊っていた。これも、こういう風に踊ると教えるよりは、子供達が動画を見て勝手に踊るという方が正しい。凝り始める子は、蚊帳や尻尾、笛まで作り始めるという具合である。蚊帳については、もちろんそのような材料など用意していないので、大きな画用紙やら風呂敷やらを周りの人にもらって作っていた。また、椅子とマジックをそれぞれ太鼓とバチにして、獅子のリズムをとる子もいた。雄獅子と雌獅子の違いまで知っている子供もいて、獅子舞を再現するにはこのような観察力も必要である。なんでも、自分の身の回りのものから作れてしまうのだ。昔の農民が農作業に使った蓑や寝るところに置く蚊帳などを使って、獅子舞を作ったという事例も多数ある。今でこそ、石川県加賀市というのは工芸品としても価値ある獅子頭とそれに準ずる祭り道具を揃えている地域が多いが、昔の獅子舞の原点は、このようなDIY精神から生まれたのだと思う。

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今回、獅子舞の運営側としては片山津の山口美幸さんとライターの北嶋夏奈さんに準備から本番まで1週間、関わっていただいた。やはり、3人は必要なワークショップだ。仕込みも牛乳パックを繋げてガムテープで止めて、赤い紙を貼って、耳・角・目の穴を開けねばならない。結構下準備がいる作業である。そして、今回、展示として獅子頭を飾らせていただいていたが、貸し出してくださった大聖寺相生町の方々に感謝したい。

会場に来てくれた、家族の皆様、子供達、本当にありがとうございました。ぜひまた獅子頭のワークショップを開催したい地域がありましたら、ぜひお声がけいただけたら嬉しいです。