イオンモール土浦で展示された獅子頭の話

2021年9月10~15日の日程で、茨城県土浦市イオンモール土浦にて、祭りの小道具の展示が行われた。この展示はおそらく獅子舞の未来を考える上でとても重要な取り組みになるように思うのでここに書き記しておく。

家電店前に獅子頭?圧巻の獅子たち

イオンモール1階にある花火ひろばに到着するとまず出迎えてくれたのが15頭の獅子頭!まさに圧巻の光景である。茨城県の各地から集められた獅子頭が一堂に会し、獅子頭を中までじっくりと覗くことができるのだ。しかも、獅子頭の背後には家電専門店のノジマがあるという絶妙な組み合わせ!普段はなかなかみることのできない光景である。獅子頭15体にはそれぞれ個性があり、地域ごとに全く異なるデザインをしていて同じものがない。

獅子頭の展示の印象は?

私が今回、獅子頭を拝見して感じた印象としては、まず獅子頭がとても大きく作られているということ。日本全国を見ても、なかなか舞う獅子でこれほど大きな獅子頭を持つところは少ない。ただ、比較的薄く軽い素材で作られているため、大きさと軽さを両立している印象を持った。また、茨城県土浦市立田町の獅子頭は展示品の中では唯一白い獅子頭だが、これは全国的にみて珍しい。あと獅子が舞う時に、町名の書かれた提灯を使用するという特徴もあるようだ。全体を通して感じたのは、祭礼を通して街全体が活気にあふれ、そこを練り歩いたり観客に見せたりすることを前提とした獅子が多いようにも感じられた。

展示背景について

今回は鍾馗会(しょうきかい)の初代頭である富塚さんに電話でお話を伺う事ができた。今回はコロナの影響で展示が2年間中止になったので、しまいっぱなしになっている獅子頭を表に出してあげたいし、自分もお祭り気分を味わいたいということで、今回の展示に至った。邪気払いや豊年満作の祈りが込められており、1年間を無事に過ごせますようにということで、気持ちだけでも邪気を払って、少しでも祭りができるようになればいいなという思いを込めたそうだ。

展示に至った経緯の順序としては、土浦市内には祭り会といういくつかの町内が連合となるグループがいくつかあり、その中でも富塚さんに、イオンの花火ひろばの企画担当の方が声をかけて、今回の企画が実現した。土浦祭り会の代表をやっていた3年前にも、獅子舞をやったりお囃子をやったりするような小規模な祭りイベントをやった付き合いがあり、その時も声をかけてもらった。「今年も何かできませんか?」という流れだった。展示であればコロナ禍での心配も少なく実施できるということになり、少なくても多すぎてもいけないから知り合いづてでちょうど良さそうな数の獅子頭を集めて今回の展示に至ったようだ。

42年前まではそのような祭り会というグループがなくて各町内祭りを行なっていた。半纏を着て行う祭りもなく、肉襦袢に前掛けというスタイルが一般的だったが、転換点は浅草の三社祭を見た事だった。それを見てかっこいいから地元に取り入れようという事で、祭りが一新していった。何時代から獅子舞の祭りが行われているということはわからない。そこからどんどん新しい取り組みも始まり現在に至るということだろう。

獅子頭の展示内容について

土浦八坂祭礼(土浦祇園まつり?)が現在、土浦の中心的な祭りとなっており、川口、大和、城北、東崎の4町が集まって祭礼を行う。またこの4町内の中に16町内という風に、そこからまた細分化されている。この中で、自分たちが声のかけやすい町内にお願いして協力してもらい、今回15体の獅子頭の展示に繋がった。土浦全体となると、数が多すぎて把握しきれていないようだ。また、町内にも3~4体あるところもあり、中でも大きいものを展示してくれとか、2つ出して欲しいというところとか、古いものは許可がでないから難しいという場合とか、各町内事情は様々だった。立田町では白獅子と黒獅子という対になった手作り獅子があり、それを両方飾った。また、祭りに参加するというよりは好きに獅子頭を作って販売しているという方もいる。そういう方の作品含めて展示しているとのこと。

ショッピングがてら獅子舞を知るという文化

なかなかイオンでお祭りの展示をしているというのは見たことも聞いたこともない。多くの場合は博物館や公民館などでの展示が多いからだ。しかし、このようにショッピングセンターを活用して展示を行うということは、祭りにあまり興味を持たない人含めて日用品などを買い求めに来る不特定多数のお客さんに獅子頭をはじめとしたお祭りの魅力について知ってもらえる機会になる。そういう意味で、個人的には素晴らしい展示だと感じる。これが実現した背景についても富塚さんに伺ってみると、町内に公民館は持っているが展示するスペースがある施設がないようだ。一方で、イオンは地域とのつながりを考えて場所をお貸ししますよという風に提供しているという。ただ、これも祭り会の方からイオンに掛け合ったわけではなく、イオンから祭り会に掛け合ったということがとても重要だと考えていて、つまり祭りの文化を繋ぐことを担い手という主体ではなくその外側の人々が必要だと感じているということでもあるのだ。

 

ps. 土浦の白獅子がとても珍しいと思ったが、その由来はわからなかった。また、獅子の口封じとして紅白の紐で縛っているのも珍しいと思ったが、その由来は不明である。この2点は今後の検討課題としたい。