多摩ニュータウンにおけるコミュニティデザインはいかに!?

今日はこれに参加してきた!

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ニュータウンの視点から、まちづくりを見ることができ、とても勉強になった。

基本的には、アーバンアーキテクトの観点からプログラムが組まれていたが、あえて自分の取り組んでいるコミュニティの視点から、ニュータウンについて考えてみた。

 

やはり、多摩ニュータウンの特徴としては、コーポラティブハウスであるということである。コーポラティブハウスとは「居住者が組合を結成し、事業計画、土地の取得、建物の設計、工事発注等を共同して行い、管理していく住宅」である。

つまり、100戸密集した団地のそこらへんを、建築家やまちづくりの担い手たちが日常的にうろうろしているという感じである。エンドユーザーが建築家だと良いものができるし、コミュニティの交流も有意義に進められそうだ。

組合方式の住宅コミュニティはどの様に機能しているのか?

そのことについて、このブログで紐解いていきたい。

 

 このプログラムでは、まずまちあるきツアーから始まった。

多摩地域は、ベットタウンであるということから、逆算で都市が計画されている。

町中に散りばめられた曲線的なガウディ風のアートはまず目を引く。

駅からニュータウンへの導線となっており、ところどころに遊び心がある。 

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斜め前方に伸びるガラスの空間はエスカレーターではなく、エレベーターである。

なんだか近未来都市にきた様な感覚だ。

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ヴェルデ秋葉台。

高度経済成長期にできた新興住宅でありながら、和風建築の様な雰囲気を醸し出している。屋根が瓦であるところが特徴的で面白い。

基本は売買だそうで、賃貸はあまりやっていないらしい。賃貸にすると、ペイするには月々の家賃がバカ高くなるらしく、売買で買って住んでもらう方式の様だ。そして、空室率も低く、好調の様である。

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組合のメンバーの方を含めてお話を伺う。

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せせらぎ緑道。私有地と公有地が混在。

ここら辺まで来ると、水辺が人々の導線となって、団地が構築されている様に見える。

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この看板は、とても印象的だった。

「水は消毒してありません中に入らないでください。」

本来であれば、消毒しないほうがむしろ自然に近くて良いはずだ。

なのに本当に消毒しなければ入れない様な水であるならば、人と人とを媒介する水辺としての機能は薄れるのではないか?

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こちらの水辺もどことなく人工的である。

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しかし、突如この様な水辺が現れた!

ある境界を区切りとして、水辺のデザインも分断されていた。

枯葉一枚落ちていても気になる水辺と、枯葉がいくら落ちていても気にならない水辺。

自然のエコシステムが組み込まれた都市か否かは、どことなく西洋と東洋のデザイン感覚の違いを明示しているようで面白かった。

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今回の街歩きでニュータウンをみてまわったところ、コミュニティについて以下の様なことがわかった。ニュータウンのコミュニティづくりを考える上で、肝になるのがずばり「敷地面積が大きいこと」であると感じた。

まず、一体感を生む仕組みである。敷地面積が大きければ大きいほど、コミュニティは細分化され、一体感を生む仕組みは、各コミュニティごとに温度差が生まれる。ある棟では、管理組合+サークル活動を運営している自治会という2つの組織が存在していた。管理組合で正式な決め事を行い、一方で自治会でプライベートを楽しむという感じである。また、ある棟では、管理組合しかなくて村別会議という形で年に2回住民を集めて、議論の場を設けているというところもあった。この様に、コミュ二ティの分断が進むと、課題解決スピードと最適値は高まるが、さきほどの水辺デザインなど様々なデザインに、一体感がなくなっていくという問題を内包している様に感じた。

次に、日常的な交流である。敷地面積が大きければ大きいほど、都市の中の団地という位置付けが大きくなる。そのため、私有地を街に開放して、例えば通勤・通学・買い物など近隣住民の導線として開放しなくてないけない。そのため、セキュリティをどう担保して行くのかみたいな議論にはなるが、外の人とも接触することになるというのはある意味良い環境とも受け取れる。

 

午後のディスカッションではニュータウンの担い手の変遷の様な話になった。まずは、高度経済成長期の住宅公団、住宅供給会社の台頭から始まる。地方出身の中級サラリーマンのために大量の住宅供給を必要とし、大規模な土地開発が行われた。しかし、2000年以後、徐々に民営化され、東京一極集中が是正される流れの中で、2つの流れができてきた。それが、以下の様な図である(司会の饗庭さんのパワポより)。

住みながら、管理運営にはいったのが、建築家やアーティストであった。これらの属性は、良いものを作ってなんぼと考えているので、空間に対するこだわりが強い。

一方で、民間ディベロッパーは顧客に対する理解の幅で勝負して行くので、お互いにどことなく畑違いに感じる部分はなきにしもあらずである。

この流れの中で、両者に共通しているのが、コミュニティ領域に進出しつつあることで、ものを作れば売れる時代ではないということを身近に感じる。埼玉の鳩山ニュータウンでは、自治会加入率が1/3と危機的状況であったが、コミュニティカフェを作るという話をすると、90人くらい担い手が集まるという状況だった様だ。このように、交流が求められ、コミュニティが土地と建物と密接な関係を持っていることがわかる。

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こちらの図は、コミュニティの開き方の一例である(ゲスト・藤村さんのパワポ)。

パブリックな施設は、マルシェなどで開放していき、空き店舗なども利活用が進められている。一方、プライベートな住宅は、兼用住宅や飲食店となり、カフェなどで開放する動きである。ここに、パブリックとプライベートが混合するという流れができている。

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1993年にできたモニュメント。93度を保ち天を向いていることから、場を開放して行く意味に捉えられる。これからは、各プロフェッショナルがコミュニティをどう捉えて行くかに着目していきたい。

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<稲村行真プロフィール>
1994年生まれ、千葉県出身。

空き家冒険家。
大学生時代に、100軒以上の日本の伝統的な古民家を訪れ取材して、卒業論文にまとめた。卒論のテーマは「古民家の価値について」。
東京から石川までの約450kmを2週間かけて徒歩で移動し、道中30軒以上の古民家を取材した「古民家冒険project」で、NHKテレビ「おはよう日本」等のメディアに掲載。2017年4月から、東京都日野市の築150年の古民家「ヒラヤマちべっと」を活用して、コミュニティハウスを運営。子どもを核として地域がつながるシェアハウスとイベントスペースを運営している。この活動により、交流ある暮らしの場をデザインしている。

 

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築150年の古民家「ヒラヤマちべっと」
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