【2020年10~11月】石川県加賀市 獅子舞取材3日目 中田町 長谷田町

今日は山中温泉近くの獅子舞を取材した。案内人は、写真屋・カメラマンをされている村田和人さん。以前、山中温泉でこいこい祭りに出る獅子舞を取材させていただいたが、今回はその周辺の中田町・長谷田町という2地域を回った。

①中田町

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地域の獅子舞に詳しいという方に公民館で獅子舞を見せていただき、主にその歴史を伺った。公民館の二階の倉庫に獅子は保管されており、箱がないので椅子の上にスッポリはまるように置かれている。獅子頭の形は加賀市内では珍しい、横がシュッとした痩せ型である。目の玉が小さく、耳の大きさも小さい。これは伝来経路が気になる。

 

非常に興味深いのは、中田町の獅子は長野や新潟の方から伝来したという事実である。石川県加賀市は南の伊勢系の獅子と、北の金沢、能登半島、富山系の獅子しか今まで聞いたことがなかった。なぜ長野や新潟からこの地に獅子舞が伝来したのだろうか。最も大きな要因は、昭和の中頃に殖産興業が推進される中で近くに繊維工場(「帝国繊維」という企業の「二天工場」という工場)ができたことのようだ。ここに勤める女工(男含む)が山を越えてはるばる長野や新潟の方から来たということだ。どこもそうだが、獅子舞の始まりは産業とセットでやってくる。だから、最初は地域単位で舞うのではなく、繊維工場の労働者の間で舞われたということだろう。それが徐々に地域で舞われるようになった。

※ここでいう新潟、長野の獅子は、遡れば東北に至るかもしれないとのこと。(11月8日, カメラマン(ムラタフォトス)の村田和人さんより)

 

獅子頭の修理は自分達でやるらしい。昨日の宮地町でのヒアリングで、山中温泉の方はもしかしたら自分たちで獅子頭を作っていたかもしれないという話が出ていた。ただ、ここでは作るのは白山市の鶴来に頼んで、修理は山中漆器の漆を塗れる職人などがいることから自分たちでやるようである。

 

地域の世帯数は20件少しと少ない。高校生も入って6~7人で青年団と壮年団合わせて獅子舞を運営している。9月15日に最も近い日曜日がお祭りの日で、祭りは3~40年の歴史がある。少しずつ当初と動きが変わって、アレンジされている。舞い方は初期は6つくらいあったが、今では2つくらいしか舞われていない。舞いは棒振りがいなくて、獅子だけで舞う。まずは神社に行って奉納してそれから舞いを始めるようだ。太鼓だけ台に乗せて運ぶそうである。地域の神社の神主は大聖寺の人が勤めているらしい。

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二天は中田町の隣の地域のことである。現在、二天の繊維工場は旅館が太陽光パネルの敷地として使われていて、手前の広場は空き地になっている。昔はたくさん縫製工場があったが、今では中国など海外で生産することが多くなり衰退したようだ。

②長谷田町

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町内会長さんにお話を伺った。この地域は、2~3年前に獅子舞が途絶えてしまったという。獅子頭などの小道具だけが残っている。なぜ、途絶えてしまったのだろうか。やはり、人員が少なくなってしまったことが大きな要因だという。今では獅子舞を懐かしがる一方で、「自分らはするか!(しない)」という感じの時もある。また、練習自体がうまくいかなかったこともネックだったそう。「太鼓自体が違う」という先輩方がいる一方で、教えるという文化が育たなかった。やはり、年配の方と若者との温度差は顕著になりつつあることがうかがえる。また、獅子頭が大きいこともあり、ご年配の方が舞いにくいというのも、少し関係しているかもしれない。

 

獅子頭は3体あり、初代の獅子が何処かに行ってしまい2代目が1つ、3代目が2つ残っている。3代目は雄と雌に分かれている。地域の人の寄付で、鶴来の知田工房に頼んで昭和の頃に作ってもらったようだ。2代目の獅子頭には縦の切れ込みがたくさん入っており、ガムテープで補修を行っていた。

 

舞いは、伝来は先ほど訪れた中田町から伝わった。舞いは棒振りがおらず、獅子だけで舞う「寝獅子」だったそうだ。ゆっくりゆらゆらと舞うタイプである。村田さん曰く、「加賀ケーブルテレビなどで昔のテープが残っていれば、見れるかもしれない」とのこと。雄獅子と雌獅子とで2つのグループに分かれて舞っていた。神社で舞う獅子舞と町で見せる獅子舞は違ったそうだ。また、結婚式の時に舞う獅子もあったようだ。また、練習は獅子頭を使わずに一升瓶を持って練習していたという。獅子頭の持ち手は縦棒なので、一升瓶は練習の時に良い道具となる。獅子頭以外の小道具は太鼓とバチだけ今でも保管されている。太鼓には渋柿の渋が塗られており、皮が保護されている。そのため、バチを当てる部分は渋柿の渋で黒く染まっている状態だ。

 

PS.大獅子を山中温泉の中心街(駐車場)に飾るプロジェクト

今回は見ることができなかったが、今回案内をしてくださった村田さんはこいこい祭りに使われる大獅子神輿の大獅子を一年中温泉街に飾ろうという企画を進めている。観光客が年中訪れる駐車場で獅子を飾れば、こいこい祭りにも興味を持ってくれるかもしれない。やはり、どの地域もそうだが、獅子頭が日の目を見るのは祭りの時だけなので、他の日に倉庫でしまわれているのが勿体無い。大獅子ならなおさらである。もっと観光客にみてもらって、街中にドーンとあればSNSにアップしてくれるかもしれないし、話題は広がっていくだろう。しかも、これは橋から獅子(女性)を見るという山中節の一節を再現しようという意図もある。地域の合意を得るのは大変なことだろうが、獅子舞文化を広めていくためにも、ぜひ実現してほしい。ちなみに昔の大獅子は「モスラの幼虫」ような感じで車輪がついていてコロコロ転がしていたらしい。今からしたらかなりシュールだが、その後に大獅子神輿になって祭りが活性化の一助を担ったという。商品券を出してまでも踊り手を確保していたのが、今ではそれをしなくても踊り手が集まるようになった。歴史ある大事な大獅子が山中温泉の中心で見られるようになったら是非見に行きたい。(以下、村田さんのブログ)

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