稲村行真 Yukimasa Inamura ブログ「旅してみんか」

「伝統文化の魅力」を広めています。日本の伝統的な木造建築の古民家とその街並み、山奥の少数民族の村、過疎地どこでもフットワーク軽く旅をしております。

【東京-石川500km徒歩】4日目 群馬県富岡市〜長野県軽井沢町(40km)

本日は徒歩の旅4日目。群馬県富岡市から長野県軽井沢町までのコースである。山は権化のような荒々しい姿を見せ、魔性の霧が幻想的な世界を作り出した。現実世界とは到底思えない1日であり、最高のファンタジーを僕に見せてくれた。

 

嵐の前の、のどかな田園風景

この徒歩の旅のコースは、道中の高低差がもっとも大きいルートだ。952メートル、山登りのような道になりそうなので、気を引き締めねば。

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スタート地点は、群馬県富岡製糸場。この近くにテントを張り、少し歩いて一目見ておこうと門だけ見にきた。午前6:00、誰もいない富岡製糸場

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犬村くんと一緒に写真を撮っておいた。

 

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遠目から見るとこんな感じ。


 

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この辺の風景は、どこを撮っても絵になる。小さな線路に、古びた民家。緑あふれる美しい風景だ。

 

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景観を保全しているのか、きちんとコンビニの色も茶色に染められている。

 

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少し歩くと、延々と続く緑が心地よい。ただひたすらに田んぼや畑を縫って、自然の中を進んで行く。

 

途中、信号待ちの車のドアが開いて、突然声をかけられた。

妙義山って山ヒルいましたか?」

僕は登山者に見えたらしい。

「石川まで歩いて行くんですー!」

唖然とされてしまったが、こうやって声をかけてくれるのは嬉しい。

 

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途中、腹が減ったのでスーパーマーケットに立ち寄った。地域の人が食べるものを直接買いたい!と思ったので、野菜入り焼き餅なるものを買ってみた。

 

外のベンチで食べていると、猫が寄ってきて、欲しそうにじっと見つめてきた。横のベンチで座っていたおじさんが斜め横から「ほれ!」とイカを投げたので、猫は喜んでいた。「もっと食べろもっと食べろ!」とどんどんあげていた。しまいには、容器ごと「ほい!」と投げて、舐めさせていた。

 

僕は、猫に食べ物をあげる余裕がないと思ってしまったのが恥ずかしかった。もっと気前よくあげたらよかったのに。猫に餌を気安くあげるっていうのは、猫の戦闘能力を奪うことになるのでは?などとも考え始めたが、あほらしくなってやめた。

 

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山に向かって、進んで行く。長野まで97kmか!まだまだ長い道のりは続くのだ。

 

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徐々に空は曇り始め、同時に妙義山をはじめとした山々が荒々しい姿を見せ始めた。険しいその姿は、息を呑むほどに神々しく、人々の信仰の対象としてどっしりと佇んでいた。

 

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横川の駅周辺に着いた。鉄道駅はここまでで、ここからは道路しかない道となる。「おぎのや」という有名なお店に立ち寄った。ここで、なんとしてでも食べたいものがあった。

 

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それは、この峠の釜飯だ。栗に卵に、しいたけに。肉に、生姜に、グリンピースと、彩り豊かに盛られており、自分の好きなものをギュッと集めたような贅沢感があった。1080円でこれが食べられるのは嬉しい。

 

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山菜もギュッと詰まっていて、塩加減が濃いめで絶妙な旨さがあった。汗水流して働いた農夫が食べてそうな味だったし、峠越えに備える旅人がエネルギーを蓄えるためにほおばってそうな味でもあった。

 

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腹ごしらえをした後は、再び道中を進む。道路は2つに別れる。一人で旅をしていると、どんどんスケールが大きい妄想をするようになる。この選択肢が人生の岐路でもあるように、じっくりと見据えた。右が碓氷バイパスで、左が旧碓氷峠、どちらでも軽井沢には行ける。今回は、急いでいたので30分短い旧道を選択した。

 

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どちらかというと旧道の方が、寂れている。道端には草木が生い茂り、まるでここが世の果てに忘れ去られたかのように人は誰も歩いていない。途中大きな獣の死骸があった。おそらく、イノシシだろう。はじめは何かわからなかったが、牙が肉塊から飛び出していた。さあ、世の果てにでも歩いて行くことにしよう。

 

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徐々に高度は高くなり、坂道も急勾配となっていく。少し雨が降ったり止んだりで雲行きが激しくなってくる。音楽を聴いて気を紛らせた。

 

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標高が700mを超えた頃、霧と雨は激しさを徐々に増していった。辺りがどんどん見えなくなっていく。レインコートを着用して、霧の世界に包み込まれて行く。後ろからきたトラックが接近してくるのが断然恐ろしくなってくる。夕方の17時頃。次第に世は更けて行く。

 

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標高1000m地点で長い長い上りはなくなった。オレンジの光が周囲を煌々と照らし、誰もいない世界でたった一人生きる僕に、意味のない微かなスポットライトが当たっているような気がした。空からは大粒の雨が降り続き、全体的な疲労感から足取りは非常に重い。最高地点まで登ってそれから、ひたすら下った。

 

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途中、死亡事故発生地点の看板が現れた。急カーブをしている道路の脇に立てられていた。恐ろしくなり、足取りを早めた。微かな光を頼りに、世が更けた道を進んで行く。

道路から逸れて森の中を進んで行くと、オレンジ色の光が墓場を微かに照らしているのが見えた。どこまでも続く静寂があたりを包みこんでいた。どうやら僕はノルウェイの森のような深い世界に迷いこんでしまったようだ。

 

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ガソリンスタンドでトイレに行ってから少し歩くと、突然あたり一面に軽井沢の街が広がった。そこは、霧の街だった。1メートル先は白い霧の中。視界がぼやけてはっきりと現実を捉えることができない。疲労感で頭もぼうっとしている。

 

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ショッピングモールの脇を通ってから、やっと現実に引き戻された。美術館のミュージアムショップのバイトでご一緒した水谷さんのご紹介で、バーをやっている小澤さんという方の連絡先をいただいていた。そこを訪ねることにした。

 

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バーに立ち寄ったところ、白髪の紳士的なおじさまが出てきた。声が優しく堂々としていて、服もピシッと決まっていた。「まず外でご飯食べてきな!」と言われ、近所の方に美味しいご飯屋さん「Zuku」に連れてきてもらった。僕の東京から加賀への徒歩の旅の話をすると、店の人みんなが喜んで聞いてくれたし、フライヤーをもらってくれた。

 

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ご飯に魚に味噌汁。染み渡る美味しさで、雑味がなく気品にあふれた空間と人々に囲まれ、汗臭い僕はありがたみを感じずにはいられなかった。とにかく、アジがものすごく美味しかった。

 

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それから、バー小澤で飲んだ。みんな周りにいるのは経営者ばかりで、洋物に詳しく、非常に質が高い空気感に包まれていた。Tシャツと短パン1枚の僕を暖かく迎え入れてくれて嬉しかった。

 

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軽井沢の人はきちんとプライドを持っていた。媚びることなく、拒むこともないような凛々しい方が多かった。バーを経営している人と話をすると、今度寄っていきな!と言ってお店の名前を教えてくれた。東京で働くのと違って、ここはもっと生産者と近い関係ができていて、コミュニティが豊かなんだと教えてくれた。

 

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「疲れた体を癒すお酒をください」と注文したところ、このお酒が出てきた。ミントの爽やかな香りと、グレープフルーツの酸味が体に染み渡り、名前もわからないお酒をぐびっと飲み干した。その後、近くの公園にテントを張って寝た。

 

軽井沢の出会いに感謝、水谷さんご紹介いただき本当にありがとうございました。明日は、長野県上田市に向かいます。

 

【本日のルート】

東京ー石川 徒歩の旅

4日目

群馬県富岡市から長野県軽井沢町

40km

63154

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【お知らせ】

石川県加賀市へのゴールについて

9月14日(土) 11:00

場所:FUZON KAGA Cafe and Studio(石川県加賀市大聖寺魚町21)

内容:ゴールテープを貼っていただき、地域の方や運営メンバーなどが見守る中でゴールして、徒歩の旅を完了。稲村が感謝の言葉を述べる。

 

石川県加賀市での徒歩の旅報告会について

9月14日(土) 12:00~13:00

場所:タビト學舎(石川県加賀市大聖寺荒町43番地)

人数:30名程度を想定

内容:ゴール後にタビト學舎の教室に移動して会場準備。稲村が道中での出来事や出会いを報告し、旅の振り返りを行う。時間は1時間で、この模様はライブ配信も行う。

 

【東京ー石川500km徒歩の旅(第2弾)について】

2017年6月に行なった東京から石川までの徒歩の旅、第2弾を行います。今回はコースを変えて、北陸新幹線沿いのルート約500kmを、8月31日〜9月14日までの2週間で歩きます。前回の旅はこちら

今回のテーマは、加賀人探し旅。東京23区(東大赤門加賀藩邸跡)から石川県加賀市までの道中、石川県加賀市出身者の人を探して話を聞き、その出会いと気づきを到着先の加賀市で報告するという企画です。この旅を通して、地域の魅力を再発見しようと考えています。

また、この旅には石川県加賀市には全く関係のない約30名のクリエイターがデザイン制作に関わったり、一緒に歩いてくれたりする予定です。旅がより面白くなりそうで、ワクワクしています。