新宿の坊主バーで、場づくり・コミュニティについての深い学びがあった。

今日は、将来お坊さんになる友人と坊主バーに行って来た!

坊主バーは日本全国にある「お坊さんが経営するバー」である。

とても宗教観がなく気軽に入れる。

家具や、レシピブック、飾りなど一つ一つに意味が込められている感じで、とてもリラックスできる、とても丁寧に作り上げられた空間であった。

場づくり・コミュニティ作りに対する深い学びがあったので、共有する。

坊主バーのサイトはこちら。

vowz-bar.com

 

さて、まず外観はこんな感じ。

丸ノ内線の四谷三丁目から徒歩3分くらいのとてもアクセスが良い立地。

しかも、大通りに面しておらず、路地を入るためいい意味で人が少なく、隠れ家的な雰囲気を連想させる。

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2階に登る階段は、ハスの花をイメージしているデザインだ。

階段からデザインにこだわっているのは、とても面白い。

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この扉の先が、目的のバーである。

さて、どんな空間が待ち受けているのか。

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お、お坊さんがバーに立っている!?!?!?

お坊さんって一人いるだけでとても存在感がある。

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きちんとお経をあげる席まで用意されている。

おもしろい。

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まず、席に着くとお通しとして、線香ならぬベビースターラーメンのようなものが出て来る。ぽりぽりと食べる。特に濃い味でも薄い味でもなく、無味乾燥としている。

まるで、お坊さんの価値観を表しているようだった。自分から主張せず、相手に寄り添い広い心で受け止めるという色のなさを象徴しているかのごとく、このお通しはお客を歓迎しているようであった。

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お酒のメニューに注目してほしい。

あまりにもメニュー構成が面白すぎて、写メった。

みなさんにもこのメニュー表をじっくりとご覧いただきたい。

やはり極端なものを味わいたい。

極楽浄土」と「無間地獄」をふたりで頼んだ。

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こちらが、極楽浄土。

ヒプノティック、マンゴー、クランベリーの組み合わせで3色。

飲んでみると味はとてもさらっとしていて甘くて飲みやすかった。

かき混ぜる棒にも若干こだわりを感じた。

辛いものを食べながらうまそうだなと思った。

最近よく思うのが、極端なものを組み合わせて味わうとうまく感じるということ。

あんこと味噌とか個人的にはよく組み合わせる。

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こちらが、無間地獄。

色がもうすげー雰囲気醸し出している。

ウォッカとか色んなのごちゃ混ぜにした模様。

けど飲んだら以外と思ったよりは飲みやすい。

もういっそのこと一口飲んだだけでやばい、みたいなものにしちゃってもいいのではないかと個人的には感じた。

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お腹がすいて来た。

ここで何かご飯もの、おかゆでも頼むことにした。

そして、目に止まったのがウラメニューのこれ。

コンポタージュ粥って、ありそうでなかなかなくて、単純にうまそうだなと思ったので、これにした。

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出て来たのがこれ!

ふつーにうまそう。

赤い漆器のお茶碗で、お寺の雰囲気、精進料理の雰囲気を存分に感じることができた。

そこに、コンポタージュ粥が入っており、真ん中の茶色のものは梅!?のような味がして、甘さの中に酸味が引き立っていた。

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あと頼んだのが、これ!

雷こんにゃく。

何が雷かというと、味付けが唐辛子、めんつゆ、ごま油などで炒められ、辛めで美味しい仕上がりになっている。炒め方にコツがある様だが、秘密らしい。

こういう食べ物って単純に冷めてもうまいからお得だなと感じた。

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そして、このバーでは写経体験もできる。

お経を写し取るということである。

習字得意だし、やったこともないので、挑戦してみるか!とおもった。

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下に文字が透けて見えるので、それをなぞる形。

慣れて来たら、なぞるのではなく、手本を見て自分で書ける様になりたいものだ。

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さて、この他にも坊主バーには様々な仕掛けがある。

美坊主図鑑が置いてあったり、お経を読み上げる体験であったり、様々である。

こういうところって一歩間違うと宗教色が出てしまい、お客さんもも偏りがちになってしまいがちである。しかし、坊主バーの世界観は宗教なんだけど、閉鎖的ではなく、とてもPOPで寛容なところが魅力だ。

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一緒に写真を撮らせてもらう。

合唱。

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さて、仏教には座禅を組むという習慣がある。

「座禅はなんのために組むのですか?」

と尋ねたところ、

「まず、目的や欲をなくすことです。」

とおっしゃっていた。

これは、今回持ち帰った最大の奥深さであった。

目的や欲がない「無」をどう捉えるかということである。

人間の3大欲求である、食欲、性欲、睡眠欲も欲なわけで、人間誰しも生まれた時から欲を持っているのではないか。

座禅を組むのもこうなりたいという自分があるから座禅を組むと捉えてしまう。

 

仏教を広めた名高い僧、空海最澄行基などなど、飢饉の多い時代の生まれだ。

とにかく、この時代の民衆たちは、無の状態を望んでいたというのもわかる。

これは、今の時代にも形を変えて続いているということであろうか。

 

かくいう現代に生きる自分も、初詣に行く。

そして、手を合わせるという習慣がある。

初詣の捉え方は人それぞれであるが、僕の初詣は、決意のためである。

一年こういうことに向き合います、お見守りください。

というスタンスで、お願い事はしない。

結局、自分自身がやるかやらないかで、ただそこに人間が解読できていない力、一人では絶対達成できない何かがあるからこそ、「お見守りください」と手を合わせるのである。

みな日本人であれば、手を合わせる。

それが無であるか無でないかは人それぞれであろうが、少なくとも道徳的にはみ出した欲を持つことはせず、凛とした気持ちでいたいものだ。

 

美坊主図鑑」に載っていたことで、1つこぼれ話がある。

お坊さんの好きな女性のタイプは「凛とした人」というのが圧倒的に多かった。

お坊さんの世界観は、はっきりと自分のスタンスを持った人を包み込む様な方が多い様に感じるのは僕だけだろうか。

一人一人に向き合い、そして手を差し伸べるという我欲を全面に出さない無と寛容さがこのバーには現れている様で、とても居心地が良かった。

 

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<稲村行真プロフィール>

古民家冒険家。

中央大学法学部卒。学生起業経験あり。大学生時代に、100軒以上の日本の伝統的な古民家を訪れ取材して、卒業論文にまとめた。卒論のテーマは「古民家の価値について」。

東京から石川までの約450kmを2週間かけて徒歩で移動し、道中30軒以上の古民家を取材した「古民家冒険project」で、NHKテレビ「おはよう日本」等のメディアに掲載。
2017年4月から、東京都日野市の築150年の古民家を活用して、コミュニティハウスを運営。子どもを核として地域がつながるシェアハウスとイベントスペースを運営している。この活動により、交流ある暮らしの場をデザインしている。